お知らせ

一関市千厩図書館ミニシアター「せんまやサロンコンサート」

2017.11.28

ある日、復興コンサートのチラシを目にした、一関市社会福祉協議会千厩支部長Mさんから、突然にお電話をいただきました。多い時では200世帯の仮設住宅があった一関市千厩町。プレハブ応急仮設住宅だけでなく、閉じるはずだった雇用促進住宅をみなし仮設としたり、親戚を頼っていらっしゃる方がいたり。一関と気仙沼のほぼ中間地点は、陸前高田や大船渡に行くにも通る道でもあります。千厩に住まいを移した多くの方が、震災後、仕事や片付けのために、毎日のように沿岸部へと通われていました。

千厩の役場(支所)も民生委員さんたちも、避難・移住されてきた方たちに、早く千厩の生活にも慣れてほしい、安心して過ごしてほしい、と、色々と努力されてきたそうです。その一環として、年に一度、社協主催で開催してきた、被災者同士、また地元住民との交流会。昨年は餅つきを開催したところ、100人もの方が集まり大盛況だったそうですが、今年は被災者支援ということは、前面には出さずに、けれども千厩に一時期住まわれていた方や、定住を決めた方同士の同窓会にもなるように、こじんまりと、みんなで音楽を楽しみたい、と一関市千厩図書館ミニシアターを会場に「せんまやサロンコンサート」が開催されました。会場には、ずいぶんと早くからお待ちのお客様もいらっしゃり、楽しみにしてくださっていたことが、こちらにも伝わってきました。

いつも幅広いジャンルを歌い、弾きこなすメゾソプラノの後藤さんと、ピアノの菅野さん。華やかな衣装に、登場から歓声が。今回は「アメイジング・グレイス」や、なつかしい「冬景色」、オペラ『カルメン』から「ハバネラ」もあれば、小さいころに歌った「北風小僧の寒太郎」あり、「あの鐘を鳴らすのはあなた」あり…。予想外の幅の広さに、次第に会場の皆さんもノリノリの手拍子で参加です。

「あの鐘を鳴らすのはあなた」は、なかなか復興コンサートで取り上げる方はいらっしゃらない曲ですが、今回、この会場で耳にして、この曲がこんなにも人を励ましてくれる、元気付けてくれる歌だったのかと驚きました。客席の皆さんの手拍子も表情も、この曲の時が一番、明るく、前向きな気分に溢れていたような気がします。終演後には、後藤さん、菅野さんが来場されたみなさんをお見送り。デイサービスからいらっしゃった車椅子のみなさんも、一言ふたこと嬉しそうに、おふたりに直接感想を伝えていらっしゃいました。

終演後には、お茶会が開かれ15名ほどの参加がありました。震災後は千厩に暮らし、つい、3週間前に、やっと高田に戻ったんです、今日は高田からこのコンサートのために来ましたという方。津波だけでなく火災の被害も大きかった気仙沼・鹿折から、千厩にすっかり移住された方。警察官だった息子さんを大槌町で、津波で亡くされたお母さん。気仙沼の仮設住宅で一時期会長をされていた際に「復興コンサート」でお世話になり、一関市東山町に移住された方も、旦那さんと一緒にわざわざ来てくださりました。今日のコンサートのために、みなさん本当にあちこちから…そして口々に教えてくださったのは「千厩の方は、みんなとってもいい人ばかりだよ!」と。この6年半、あたたかな心の交流があったことが、その一言から伝わってきました。

話が少し戻りますが、終演後の舞台で後藤さんへ花束を贈呈してくださったのは、なんと一関市市役所千厩支所長さんでした。社会福祉協議会主催のコンサートに、多忙な支所長が参加してくださることは、今までにはなかったことです。役場と、社会福祉協議会の距離の近さ、復興支援に対するこの町の思いを垣間見たように思いました。気になりながらも、今までなかなかご縁のなかった岩手県内陸部。今回をきっかけに、内陸に移住された方、まだまだ移転先の造成が完成せず、一時的に住まいを移されている方にも、音楽会を届ける機会が増えて行けばと思います。