お知らせ

気仙沼鹿折・すがとよ酒店「望年会♪コンサート2017」へ

2017.11.28

今年3月に続いて、二度目の訪問となる気仙沼・鹿折すがとよ酒店。震災で元のお店とご主人、ご主人の両親を亡くされた後、1か月半後には別な場所に仮設店舗で再開。その後、鹿折にお店を再建されて、間もなく12/17でようやく一周年となる地元のみなさんに親しまれてきた酒屋さんです。あと数年で創業100周年を迎える酒屋さんは、再建する際に、人が集い、一緒に音楽をたのしめる場所をつくろう、と2階にミニホールを作りました。そして、ここには、ピアニストで作編曲家の小原孝さんによるチャリティープロジェクトから贈られた、グランドピアノがあります。今回は、そのグランドピアノも活かしたプログラムで、でも、演歌も聴きたいなぁというリクエストを受けて、メゾソプラノ後藤優子さん、ピアノとシンセサイザー菅野静香さん、お二人と伺いました。

「望年会♪コンサート2017」この素敵なタイトルは、女将の文子さんが付けてくれました。あとひと月、今年も精いっぱいがんばって、また希望に満ちた良い年を迎えましょう!の気持ちを込めて。そして、会場の壁いっぱいのパステルカラーのリボンは、このコンサート自体がすてきな贈りもののようでした。文子さん、いつも素敵なおもてなしで迎えてくださいます。

コンサートには、ちょうど満席になるほどのお客さま。シンセサイザーによる壮大なオーケストラサウンドの「Time to say goodbye」から始まりました。声量豊かな後藤さんの歌声に、お客様も一気にコンサートの雰囲気に引き込まれた様子です。菅野静香さんのピアノソロは、ここが酒屋さんであることにちなんで、映画「スターウォーズ」の中で、とある惑星の飲み屋の、宇宙人たちによる生バンドが演奏するラグタイム「Cantina Band」を。みなさんにもノリノリな手拍子で参加していただき、菅野さんは足で床を踏み鳴らす場面もあったりと、なんともウキウキと楽しい曲です、そして、ラグタイムというのもなんともピアノらしさが感じられるものですね!一気に会場の空気も解れました。

つづく後藤さんは、ガラリと雰囲気を変えて、オペラ『カルメン』から「ハバネラ」を。赤いドレスはこの曲にやはりぴったりです。色気も迫力も感じられる素敵な歌声に、みなさん魅入られていました。その後は、リクエストいただいた“元気の出るような歌謡曲”を。「カモメが翔んだ」「港町十三番地」とノリのよい曲が続いた後は、こちらも女将さんからのリクエスト「涙そうそう」は、演奏の前に「一番会いたい人を思い浮かべながら聴いてください」と後藤さん。そしてピアノを贈られた小原孝さん作詞作曲のすがとよ酒店テーマソングとも言える「逢えてよかったね」を。一曲一曲の歌詞の意味が、心を伴って聴こえてくるのが後藤さんの歌声です。大学の同級生でもあり、その後も長年デュオを組んで活動している菅野さんとの息の合った演奏で、聴いているみなさんの表情もすっかりほぐれ、楽しんでくださっていることがわかりました。

そしてアンコールは、午後の千厩でも歌われた「あの鐘を鳴らすのはあなた」。再建されて間もなく一年、鹿折に戻りまたここから頑張っていこう、というすがとよさんに、とても強くあたたかいエールを送るような一曲に思えました。気のせいかもしれませんが、会場に集まっていらっしゃる方たちだけが、演奏を聴いているのではなく、この場所や町全体が耳を傾けてくれているような、そんな気もしてきました。

アンコールでは、女将さんと共に店を切り盛りする、次男・英樹さんの双子の息子さんたちが、明日誕生日というので、会場のみなさんも一緒になってハッピーバースデー♪の歌のプレゼント。そして、最後には「おいらの船は300トン」を会場のみなさんとご一緒に。「ご当地ソングと言ったら、ここはなんでしょう?」と打合せの際にお聞きすると、女将も、英樹さんも「あれ!…はダメだよね…」「さすがにちょっとね…」と言いつつこの曲を挙げてくださいました。後藤さん、菅野さんに伝えると「やりましょう!」と応えてくださり…。会場のみなさん、さすがに歌い慣れていらっしゃいます。女将の鳴れた手拍子に合わせ、大きな声で元気に歌っていただいて…あっという間の1時間が終わってしまいました。

終演後、階段の下でみなさんをお見送りしていると「今日は来て良かった!」「とっても元気をもらいました」とたくさん声を掛けてくださいました。中には記念写真をぜひ一緒に!という方も。明日からも頑張ろう、という活力の源になれていたら、こんなに嬉しいことはありません。なにより、幅広い選曲を、それぞれ素晴らしく聴かせていただいた後藤さんの歌声と、菅野さんのピアノやシンセサイザーに、みなさんすっかり感激していらしたご様子でした。

お客様を見送った後には、会場で女将さんがご馳走を用意してくださいました。「せっかく気仙沼に来てくれたのだから」と、美味しいお鮨とお煮しめ。後藤さん、菅野さんも、たくさんの御馳走に驚かれた様子です。季節となったカキフライなどをいただきながら、元は鹿折にお店があった、エビフライが名物のレストランのお話しなど…コンサートを聴きに来てくださった元・ミッキー靴屋の奥さんと共に、女将さんからも震災前の鹿折のお話を伺い、地元の皆さんの心に残る、懐かしい景色に思いを馳せる時間となりました。まだまだ更地の多い現在の鹿折地区、人の集う場所、行き交う場所として貴重な存在であるすがとよ酒店さん、また伺えますことを心より楽しみにしています!