お知らせ

メモリアルコンサート_1月

2018.1.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度、
奇数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市)

東日本大震災から6年10か月となりました。本日のメモリアルコンサートにはヴァイオリン佐藤実治(なおはる)さんとピアノ及川久美子さんのお二人にご登場いただきました。寒波の影響で日が差したり雪が舞ったりと落ち着かない天候でしたが、会場にはおよそ80名の来場者がありました。席に着いたお客さんは自主的に椅子を前方へ詰めてくださって、「いざ聴かむ!」という意志が感じられるような雰囲気がありました。

オープニングのグノー『アヴェ・マリア』に続いて、クラシック、ジャズ、映画音楽など古今東西の親しまれた曲がヴァラエティ豊かに披露されました。 例えば、新春と言えば尺八と筝の名曲『春の海』がおなじみですね。意外な選曲ですが、ヴァイオリンとピアノでの演奏もしみじみとした和の味わいがありました。そして「いつも海が穏やかでありますように」という演奏家の祈りのようにも思われました。
この曲は瀬戸内の凪いだ海のさまをイメージして作られたそうで、あるお客さんが「私は瀬戸にいたことがありますが、演奏を聴きながら瀬戸内海の風景が目の前に浮かんできましたよ」と終演後に言いに来てくださいました。

ところで、佐藤さんは震災当日、仕事で北海道にいたそうで、遠くで何もできない自分を不甲斐なく感じ、その後も長く自責の念に苛まれていたそうです。しかし、ある時「自分にやれることは音楽だ」と気持ちを決めて以来、以前にも増して演奏に心をこめ、音楽を通じた人との出会いやつながりを大切に感じているそうです。
一方、及川さんは震災当日ある偶然で奇跡的に津波を免れた経験を語り、「あの日の夜は停電で真っ暗で、星とお月さまがとても綺麗だったことを覚えています」と言いました。きっと会場のほとんどの人が同じようにあの空を見上げていたことでしょう。その言葉に続いて演奏された『ムーンリバー』の調べは、温かく、やさしく観客を包み込みました。

その後もお客さんはある時はやんやの盛り上がりをみせ、ある時はほろりとしたり、ほのぼのしたトークに笑ったりしてコンサートを楽しみました。 最後は会場のみなさんで『上を向いて歩こう』を歌っていただきました。弾んだメロディに気分が明るくなります。そして「上を向いて歩こう」という意志が今年の抱負のようにも聞こえます。

終演後、一人のご婦人が「素晴らしかったです!」とスタッフに声を掛けてくださいました。市の広報紙でこのコンサートのことを初めて知ったそうで、3.11メモリアル交流館へも「初めて来ました」と言いました。そして、問わず語りに「私の親戚も津波でね…一人は女川で、まだ見つかってないの」と悲しそうに微笑みました。まもなく7年。年数だけが増えていき、その脇で取り残されているものがたくさんあります。音楽には祈ることしかできないのかもしれませんが、そっとそばにいられたらと思います。今年一年が穏やかでありますように。