お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_新春

2018.1.19

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として
この住宅とその周辺にお住まいの方々の交流の場「うたカフェ」を
2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、
音楽リーダーとなる音楽家をコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

今年最初の「うたカフェ」は季節外れの温かい穏やかな天候に恵まれました。今年一年こんなふうに過ごせたらいいですね。みなさんいつもより集まる時間が早かったのは、この会を楽しみにしていてくれていたからでしょうか。「今年もよろしくお願いします」の挨拶があちこちで交わされていました。会場には町内会の手芸クラブが作ったつるし飾りがたくさん下がっていて、色とりどりの細工物が白い壁に映えて見事な景色となっていました。

 

今年も音楽リーダーの仙台オペラ協会ソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノ伴奏富樫範子さんが毎回工夫を凝らしたプログラムを届けてくださいます。松本さんは「雪だるまをイメージしてみました」と全身真っ白のコーディネートで登場しました。さらに、戌年にちなんで折り紙の可愛らしいイヌをたくさん連れて来ました。

 

「みなさんに差し上げようと思って…」と、なんと息子さんが師匠になって一緒に折ったそうです。どの犬も凛々しく自立していますよ。素晴らしい腕前ですね!
今日は冬や雪にちなんだ歌を4曲うたいます。『北風小僧の寒太郎』では「かんたろーう!」と大きな声で掛け声を入れ、「ひゅるるーん」と風の音に合わせて指をつむじ風のように回しながら、また、『トロイカ』ではコサックダンスをイメージして腕を組んだり足を蹴り出しながら歌いました。歌と身体を連動させるといい運動にもなるし、歌のイメージが広がって面白いものですね。あれもこれも同時に行なうので脳トレにもなります。最後は立ち上がってフィナーレ!までやりました。

 

『雪が降る』の語るようなシャンソンの雰囲気は大きく二拍子をつかまえるとよいとのアドバイスで、右に左に大きく揺れながら歌いました。あいだにセリフが入るのですが、「もっと感情をこめて!」「もっとせつなく!」と松本さんの要求がどんどんエスカレートし、その熱血指導ぶりがみなさんの大爆笑を誘っていました。

 

さてお待ちかねのコーヒータイムはいつものように「喫茶ひこ」のマスター西垣さんが美味しいコーヒーを淹れます。大いに笑ったせいか今日はおかわりを求める人が多いように思われました。

締めのミニコンサートはちょっとしたお芝居仕立て。まずはおなじみの童謡『雪』を軽やかな二重唱で披露しました。歌い終わるや松本さんが「さ、寒くてもう歩けません…」とその場にうずくまり、それを岩瀬さんが「しっかりなさい!ほら見てごらん、太陽が昇って来たよ…」と励ますと、ピアノの調べが力強いリズムとともに始まります。松本さんがやおら立ち上がり、歌い出したのはカンツォーネの名曲『オーソレミオ』でした。文字通り寒さを吹き飛ばすパワフルな歌声で太陽を召喚します。みなさん圧倒されての大喝采、聴いているだけで体温が上がってくるのが不思議でした。

岩瀬さんは「みなさんには今年も元気で、何かに恋してほしいんです」と語り、『ゴンドラの唄』を歌いました。柔らかな三拍子に「命短し、恋せよ乙女」の言葉がせつなく、聴く人の心を揺らします。ちょっと涙ぐんでいる人もいました。会場にはうっとりとした時間が流れ、歌が終わるのを惜しむような大きな拍手が沸きました。

ある常連さんが出口で「初回からさっそく良い時間を過ごせたわ」と笑顔を見せました。折り紙の仔犬たちは「あら可愛いこと~」「息子さんにありがとうって言ってね」と可愛がられつつ、次々にもらわれて行きました。「皆様の今年が〈ワン〉ダフルな一年でありますように」と松本さんが言いました。