お知らせ

川の上・百俵館「カワノカミ音楽会vol.10」へ

2018.4.14

石巻・旧河北町にある百俵館は、民設民営のカフェ&図書館&学び舎。北上・雄勝・釜(長面浦)から、津波により住まいを失った方が400世帯、移り住もうとされているのが、川の上の田んぼを宅地造成した二子(ふたご)団地。新旧住民双方が足を運び、交流を深めるきっかけとなる場所をと作られたのが百俵館です。

開設当初、たまたま新聞に取り上げられたのを見て、訪ねたことがきっかけとなり始まった「カワノカミ音楽会」は、今回で10回目。季節ごとに年3,4回お伺いしているうちに、あっという間の10回です。今回の出演は、川の上ふれあい会での「敬老コンサート」に一昨年出演いただいた、アンサンブルまっこいのみなさんに。クラリネット菊池澄枝さん、西峰里美さん、ピアノは鷲尾恵利子さん。みなさんまっこい(真っ黒い)楽器の演奏者です。

3周年を迎えるにあたり、隣にあった通称”別俵館”は、地域のみなさんが参加しながら地域の学び舎”耕人館”として生まれ変わりました。その前の駐車場スペースも”たねもみ広場”として、芝生が敷かれ、周囲は雄勝石がだんだんに積上げられて、薪の収納スペースにもなっていて、こどもたちの恰好の遊び場に。4/15のオープン前夜、東京から関わっている設計・デザイン・造園設計スタッフや、地元のプロジェクトスタッフ(も、面白い活動をされている方ばかり)と、近所のみなさんとで、コンサートを楽しみつつ、懇親会も開きたい、とのことで春のカワノカミ音楽会は4/14の夜に開催されました。

プレオープンの御祝いの気持ちと、クラリネットの魅力の紹介と、後半は”映画音楽”をテーマに、邦画編・洋画編のメドレーを。このために、ずいぶんたくさんの曲を編曲していただいて、まっこいのみなさんに感謝!小さいお子さんの姿が見えたので、急遽「ミッキーマウスマーチ」で始まりました。場の空気が少し、ほっと緩んだところで、1曲、クラリネット2本とピアノために書かれたメンデルスゾーンの「コンチェルトシュトゥック第2番」を。現在、桐朋学園オーケストラアカデミーに在籍し、研鑽を積んでいる西峰さんが、この曲では1stを務めました。音楽の持つ緊張感、そしてその緊張が解けて迸る勢いのある音楽に、一気に引き込まれたような時間でした。

楽器紹介とソロコーナーでは、西峰さんが、バスクラリネット・ソロによるバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」より「プレリュード」を。「伴奏しかできない楽器、ではない、ということを、証明してみたいと思います!」という言葉通り、低音域のあたたかみのある音色でのバッハは、またチェロで聴くのとは違った魅力がありました。つづく、鷲尾さんのピアノソロは、ショパン「ノクターン 嬰ハ短調(遺作)」を。この曲も「風のガーデン」という映画で使われた一曲だったのだそうです。少しずつ日が暮れ始めた時間帯には、しっとりと、心に染み入るような演奏を聴かせてくださいました。最後、菊池さんはクラリネットとピアノで、シュライナー「だんだん小さく」を。楽しく聴いているうちに、楽器がだんだんにバラバラに小さく分けられていく様子は、知らない人にとってはびっくり!の1曲です。

トリオに戻り「クラリネット壊しちゃった変奏曲」と「日本の春メドレー」を。「春の小川」「さくらさくら」「花」を会場のみなさんにも一緒に歌っていただきました。お若い方も多かったので、小さなお声?ではありましたが、なかなか歌を歌う、ということも大人になると少なくなるものです。時々こうした機会にだけでも、日本語の美しさ、長く残ってきた唱歌の美しいメロディーを、思い出していただけたら嬉しく思います。

後半は、川の上プロジェクト事務局長 三浦さんからのリクエストで、映画音楽特集を。邦画編では、「男はつらいよ」「青い山脈」「銀座の恋の物語」etc….懐かしの曲ばかり。譜めくりをしながら、最前列のオシャレなおばさまが、全曲口ずさんでいらしたように思えて、後から声を掛けると「そうなの!もう、私のために選曲してくださったのかと思った!」ととっても喜んでくださいました。こういうことがあると、選曲冥利につきますね!

映画ではないのですが、現在放送中の大河ドラマ「西郷どん」のテーマ曲から、洋画メドレーで締めくくると、アンコールの拍手が。アンコールには、飛び入りゲスト、鍵盤ハーモニカを持って神奈川からいらしたトパさん(橋本知久さん)にも参加いただきました。よくよく聞けば、西峰さんの愛知県芸大在学時のソルフェージュの先生!作曲がご専門で、西峰さんの学年が、初めて教えた学年だったとのこと…。石巻で、驚きの再会となりました。「エルクンバンチェロ」は、ジェットコースター並みのスピードで景気よく!そしてたくさんの拍手をいただいて、無事に10回目の「カワノカミ音楽会」は終了となりました。

終演後、明日の「耕人館&たねもみ広場オープン」に向けての懇親会が開催され、百俵館・耕人館の設計士さん、デザイナーさん、造園設計士さんなど東京から通っていらした方や、地元の川の上プロジェクトに携わる皆さんとお話しさせていただきました。中には、障がいのある子ども達の教育支援と書道塾をされている方、整体師さん、茅葺屋根の茅葺士さんなど…。これまで、なかなか接点のなかったみなさんに、普段の川の上の様子を伺うことが出来てとても有意義な時間でした。(その間、演奏家の皆さんも、様々な質問を受けられていたようです…。)

最後は「3周年ありがとう」黒板の下で、事務局長の三浦秀之さんと。二子団地への移転・転入は、まだ途中。今後ともその時々で、お手伝いできそうなことを考えながら、お付合いを続けていけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします!