お知らせ
塩釜市営錦町住宅「春が来た!コンサート」へ
- 2018.4.18
-
塩釜の主婦たちが集まって、震災後、復興支援活動を始めたボランティアサークル“えぜるプロジェクト”の主催での復興コンサートが開かれました。JR仙石線・西塩釜駅のすぐ裏手に見える市営錦町住宅 集会室が会場です。3棟に分かれる錦町住宅、歩いて2,3分ほどのところにある市営錦町東住宅(170世帯)、その他、地域の方や、塩竈市サポートセンターが運営するデイケアサービスに通う方も参加。出演は、仙台フィルハーモニー管弦楽団 オーボエ奏者の木立至さん、そしてお隣り多賀城市在住のピアニスト阿部玲子さんです。阿部さんに、塩竈市内での復興コンサートに出演いただくのは今回が2度目。いつもお世話いただく”えぜるプロジェクト”のスタッフYさん、Mさんとも、久しぶりの再会です。塩竈市内数カ所の災害公営住宅や、防災集団移転団地で支援活動を続けていらっしゃる”えぜるプロジェクト”さん。現在は、清水沢東住宅で週に一度の「清水沢東こどもカフェ」も開催しており、子供たちの「第3の居場所」を作る活動も、地道に続けていらっしゃいます。スタッフも、お会いするのは11月以来。「なんだか随分久しぶりな感じ!」「元気でしたか~?」と顔を合わせることができ、私たちもほっとしました。
コンサートは、開場時間から10分もしないうちに、用意した座席は満席に。急遽、あるだけの椅子を出し、それでも間に合わないと楽屋である和室を、お二人に開放していただいて、座布団を敷いて桟敷席を作りました。社会福祉協議会のスタッフも、えぜるスタッフも、みなさん立ち見となりましたが、どうにか会場も落ち着いて、いよいよ開演です。
青いドレスが素敵な阿部さんと、チェックのシャツをのぞかせた木立さん。「こんなにたくさんのお客さんにお越しいただいて!」と、トークも明るく始まりました。1曲目は、ラヴェル「ハバネラ形式の小品」。元はフルートの曲だそうですが、少しエキゾチックなオーボエの音色にも、とても良く似合う曲です。目の前でオーボエの音色を聴くのは、初めての方ばかり。意外と大きな音がすることにも、みなさん驚かれた様子でした。
つづく楽器紹介では、オーボエの音の出る仕組みについて説明がありました。「草笛のように、植物の葦の茎を削ったリードというものを唇に当てて、この小さなから息を吹き込んで音を出します」。子どもの頃、草笛で遊んだ経験のある年代…と思われる皆さん、「へぇ~!」とあちこちから歓声があがります。「今日は、家中にある楽器を、全部持ってきました!」と笑いを誘う木立さん。オーボエよりも長く、先っぽの形がオーボエとは違って丸く瓢箪のようになっているイングリッシュホルンも、紹介してくださいました。「長さが長くなる、ということは、オーボエよりも少し低い音が出ます」「オーケストラの曲のなかで、たくさん有名なソロを任されている楽器です」。またピアノについても、少し説明がありました。「ピアノ、と今は呼び名が定着していますが、元は、イタリア語で大きい・強いを意味するフォルテ、と、小さく・弱くを意味するピアノの両方が出る楽器、という意味で、ピアノフォルテ、というのが正式なんです」。阿部さんの説明に、こちらも「ほ~!」「へぇ…」。知っているようでよくは知らないこと、たくさんありますね。
続いて演奏された「からたちの花~この道」では、演奏を聴きながら目がしらを押さえる方がいらっしゃいました。また、小さな声で、一緒に歌っていらっしゃる男性も。木立さんの耳にも、その歌声が届いていたようで「一緒に歌っていただくのは、とっても嬉しいんですよ」。「アランフェス協奏曲」からは、有名なイングリッシュ・ホルンのソロを。また阿部さんは、今の季節に合わせて平井康三郎「幻想曲『さくらさくら』」を。誰しもが知る「さくらさくら」が、ピアノの広い音域と美しい音色で、ぐっと大人っぽく華やかになり、すっかり聴き惚れた方も多かったようでした。塩竈神社のシオガマザクラの見ごろは、きっとこれからですね。
「春の歌メドレー」では「春の小川」「朧月夜」「花の街」。「花の街」を作曲した團伊玖磨は、木立さんのご出身地である神奈川県横須賀市にお住まいだったそうで、市民歌も作曲されているとか。そして、阿部さんから「みなさん、お待ちかねの…」と紹介されたのは、演歌メドレー。「知っている曲がありましたら、どうぞ一緒に歌ってくださいね。」演奏されたのは「津軽海峡冬景色」と「愛燦燦」。「せっかく春の歌を歌った後で、また冬に戻ってしまいますけれども…」との木立さんのお話しに、みなさんからどっと笑い声が起こりました。オーボエが前奏の有名な一節を担当する「津軽海峡冬景色」。みなさんも、改めて聞いて、あ~この音色!と思われたのではないでしょうか。長く愛されてきた2曲、やはりあちらこちらから歌声が聞こえてきました。生演奏に合わせての贅沢なひとときに、大きな拍手が送られます。
そして今日のハイライト!木立さんが持参した「家中の楽器」には、実は打楽器各種も含まれていました。トライアングル、ウッドブロック、スライドホイッスル…そしてオーボエを1人4役でアンダーソン「踊る仔猫」。猫が、高いところから低いところへ、身軽に行き来する様子を、スライドホイッスルがリズミカルに表します。両手を使って、左手にウッドブロックの撥を、口にはスライドホイッスルを加えて、右手はその持ち手を。最後には、仔猫を追い払う犬の鳴き声も木立さん自身が担当されて、1人5役!これには、拍手喝采です。タイミング良く、テンポに乗っての早変わりは、相当に練習をされたのでは…。お聞きしたところ、仙台フィルの打楽器奏者佐々木‟こじろう”さんに教えを請い、ビデオに撮って練習し、練習の成果をこじろうさんに見ていただいて「人前で、ご披露して良し。」とお墨付きをいただいたのだそうです。さすが!
最後は、みなさんで一緒に歌いましょう、のコーナー。ギュウギュウ詰めの客席、一度背伸びをして体を伸ばしました。今頃の季節の歌をと「朧月夜」と「茶摘み」を歌いました。今日は男性のお客様も多く、みなさん、いいお声!会場に溢れた歌声は、ここまで木立さんと阿部さんの楽しいお話しと、素敵な演奏とですっかり雰囲気が和んでいたからこそ、だったかと思います。終わったとには「どの曲も、懐かしい曲ばかり!」と客席からお声がかかりました。
アンコールは、映画「ミッション」より、モリコーネ作曲「ガブリエルのオーボエ」。しっとりと聴かせるせつないメロディーに、ここまでの7年のみなさんの御苦労を想像しながら、耳を傾けました。終演後には、夏を先取りしたようなひまわりの素敵な花束が贈られました。阿部さんにお渡しくださったのは、この錦町住宅を含む図南町内会の会長さん。「せっかく『ピアノをとどける会』さんからいただいた、このピアノ、今日は弾いていただけてとっても良かった。またいつでも、弾きにいらしてください」と阿部さんに声を掛けてくださいました。うれしい一言をありがとうございます!
盛大な拍手をいただいて、コンサートは終了しました。帰途に着くみなさんを見送ったあと、えぜるプロジェクト代表のYさんがおっしゃいました。「震災から7年が経って、ここにくるまでにそれぞれ、たくさん御苦労をされてここに住むことになったみなさんと、地域の方とが、みんな、今日のひとときに集まって、同じ空間で、一緒に素晴らしい演奏を楽しむことができて…それが、もう、本当に奇跡のようなことだなと思って…うるうるきちゃった!」と。本当に、そうですね。お一人ずつに寄り添う、ということは、言うは易し、行うは難し。そうした中で、こうしてたった一時でも、ご一緒に楽しめたこと、そのお手伝いができましたこと、本当に演奏されたお二人にも、私たちスタッフにも、心から嬉しいことでした。集まってくださったみなさんにも、また、デイサービスの方や閉じこもりがちな方にお声掛けし、お誘いくださった社協スタッフさん、NPO法人しおたがスタッフさんにも、心より感謝申し上げます。塩釜・錦町のみなさま、またお会いしましょう。それまで、どうぞお元気で!