お知らせ

荒井東「うたごえサロン」始めます!

2018.4.24

仙台市若林区にある荒井東市営住宅はおよそ300世帯を擁する大規模な復興公営住宅です。これまで復興コンサートを何度か開催していますが、伺うたびに周辺の景色が変化しています。大きなマンションや病院をはじめ、保育所やスポーツパークなどが建ち、かつての田園地区はめきめきと「街」になっている様子です。
この復興公営住宅ができて3年が経ちますが、今年になって町内会の役員さんから「住民同士が交流する場を作りたい」との相談がありました。町内会への加入率が思うように伸びず、町内会の活動について温度差があるような雰囲気が感じられるのだそうです。みなさんの生活がやっと落ち着いたように思われる今こそ、あらためてコミュニティづくりに向き合う時期なのかもしれません。
そんな次第で、今月から毎月1回「うたごえサロン」をお届けすることとなりました。気軽に音楽を楽しみつつ心身ともにリラックスした中で参加者同士が顔見知りになり、やがては普段の生活でも協力し合えるような関係を結べるようになるといいですよね。
はじめの一歩となる今日はあいにくの雨模様でしたが、16名の参加者がいらっしゃいました。音楽リーダーはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんです。他の復興公営住宅で好評を博している歌声サロンの経験をここで活かしていただこうとお二人に依頼しました。お二人はさっそく季節にちなんだデコレーションを取り入れて、やって来た人たちは「あら、きれい~」「お、いいねえ!」と、いつもとは違う集会所の華やかさを楽しんでいました。
まずはみんな一緒にゆっくりとウォーミングアップします。首や肩や顔の筋肉をほぐし、発声をして、歌う準備を整えます。初めての体操法に多くの方が「ふむふむ」といった様子で真面目に取り組んでいました。肩凝り軽減や気分転換にもなるので、日常にもぜひ取り入れてくださいね!
今日のうたは『朧月夜』『上を向いて歩こう』『北国の春』の3曲でした。どれもおなじみの歌ですから、みなさん思い思いにリズムに乗って体を揺らしたり手拍子したりしながら歌っていました。「せっかくの美声は床にじゃなく、上を向いて歌いましょ~う」との呼びかけに「あ、」と気づいて背筋を伸ばして歌うみなさんなのでした。これを機に姿勢へ意識が向くといいですね。
『上を向いて歩こう』は、後藤さん自身が人生の応援歌の一つとして大切にしてきた歌だそうです。「つらい時や悲しい時にこの歌がみなさんの支えになるといいなと思って、今日は選びました」と言いました。人生の折々に出逢いなおす歌や言葉がきっとどの方にもあることでしょう。うたごえサロンはこれまで何気なく聞き過ごしていた歌の良さや深さに気がつく機会にもなっているようです。
たっぷり歌ったあとはお茶で一服。ドリップコーヒーの香りに寄ってきた或る方は「この辺りはコーヒー飲めるところがないの。こういうの久しぶりだわ~」ととても嬉しそうでした。新しい建物が次々とできているこの地区ですが、のんびり憩える喫茶店はないそうです。うたごえサロンは月に一度ですが、どうぞコーヒーも楽しんでくださいね。
みなさんはお茶を飲みながら後藤さんと田村さんの演奏を楽しみました。春の唱歌メドレーでは田村さんがハモって、盛んな拍手を贈られていました。締めは『踊りあかそう』で華々しく、やんやの大喝采。参加者の表情がきらきらと活気を帯びて見え、楽しんでいただけたことが感じられました。
出口で見送る演奏家に多くの人が話しかけていました。
「私、歌が好きなのね。だから今日は絶対来なくちゃ!と思って楽しみにして来たの」
「今度、浜辺の歌を聞きたいわ」
「一時間があっという間だった」
「次は友だちを誘って来るね」
皆さんの笑顔に、町内会の役員さんも「うたごえサロン」に手応えを感じた様子です。まずは今年度1年間やってみましょう。どうぞよろしくお願いします!