お知らせ

若林西「うたっこ会」_5月

2018.5.23

仙台市若林区の復興公営住宅で2015年9月から「うたっこ会」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、
若林西市営住宅町内会せせらぎ会と協働してこの会を運営しています。


季節に一度開催する「うたっこ会」、音楽リーダーのメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんは昨日に続く連続登板です。どうもありがとうございます!
常連さんがアカツメクサとシロツメクサを編んで作った首飾りを後藤さんにプレゼント。みなさんから「すてき~!」と声が上がりました。この時季限定の嬉しい贈り物ですね。

会場の窓からは芝生に青々としたクローバーの群生が見えて、なかなかの景色です。今日の課題曲に唱歌の『茶摘』があり、後藤さんは「あのクローバーを茶畑と思って歌ってみましょう」と誘いました。室内にいながら窓の外へ視線が遠く保てるためか、声が伸びてとても気持ちが良く、自然と呼吸が深くなっている様子でした。その歌声を聞いて(?)小鳥が飛んできたり、通り掛かる人が手を振ってくれたりして、なおのこと心楽しくなりました。

続いて昭和の元祖アイドル天地真理の『ひとりじゃないの』を歌いました。歌詞の中に「草原も輝く」というフレーズがあり、後藤さんが窓の外を指して「今度は草原ですよ!」と言うと客席は大笑い、せせらぎ会の会長さんは「草原ってものじゃないよ~」と苦笑していました。
「物は言いよう」ですがしかし、これはすなわち歌うときに発動される自由自在のイマジネーションが人をどこかに連れて行ってくれるということでもあります。部屋にいながらにして歌の風景に入り込み、ひとときその主人公になって生きるわけです。こう考えると「歌」とはすごい装置ですね、「どこでもドア」みたいです。久しぶりに参加した方が「大きな声で歌ったらおなかすいた…」とつぶやいていました。歌の効果てきめんですね。
恒例のミニコンサートでは『百万本のバラ』が演奏されました。気づけば、今日の飾りつけはバラ尽くしでしたね。可愛らしい『野ばら』もあれば、報われぬ恋心をこめた薔薇もあり、古今東西の人びとがこの花にどんなにか思いを寄せたことがわかります。映画の場面を思わせるこの歌にみなさんじっと聴き入っていました。

中島みゆき『麦の唄』では窓の外に一面の麦畑を想像してもらいながら聴いていただきました。「伝えておくれ故郷に ここで生きていくと」という歌詞は、ここにいるみなさんの人生をまさに反映しているものでした。それぞれの土地を離れ、生活を転々とし、この住宅に暮らすようになって4年。もしかするとようやく根っこが落ち着いてきた頃でしょうか。もう戻れない故郷に伝えたい言葉はみなさんそれぞれの胸中にあることでしょう。
実は、常連だったOさんが近いうちに他県へ越してしまうそうで、仲間から「歌で送りたいと思います!」との提案があり、最後に『今日の日はさようなら』をみんなで歌いました。そのサプライズにOさんは泣き笑いの表情を浮かべつつ、一緒に歌っていました。「本当は引っ越したくないんだけど…」と語るOさんに「また歌いに来てくださいよ!」とピアノの田村さんは明るく言いました。「そうね、うたっこ会では本当に元気をもらいました」と、Oさんは笑顔を見せてくださいました。どうぞお元気で、また会いましょう!