お知らせ

荒井東「うたごえサロン」_7月

2018.7.10

仙台市若林区にある復興公営住宅の町内会からの依頼で
2018年4月から「うたごえサロン」を荒井東市営住宅にお届けしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)

今日の仙台は真夏日。地面からの照り返しもきつく感じ、出かけるのを躊躇した人も多かったのではないでしょうか。本日の「うたごえサロン」の参加者も出足がだいぶゆっくりでした。先に到着した人が「あれ、○○さんまだ来てないの?呼びに行かなきゃ!」とまた住居棟に戻ったり電話を掛けたり。「だってこれ楽しみにしてるんだから!」と、あちこちお声掛けをしてくださいました。集会所と駐車場を管理している方も「荷物運ぶんでしょ?ガラス戸、開けといたから」とお気遣いくださって、みなさんのご協力でこのサロンが成り立っていることをひしひしと感じます。どうもありがとうございます。

今日も音楽リーダーはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんです。毎回空間演出に凝ってくださっていて、参加したご婦人方から「まあ~今日もすてき!」「見てほら!」と感嘆の声が上がりました。月に一度のこの会がいろいろな意味で気晴らしになる時間になればいいなと思います。
まずはウォーミングアップ。「腕を動かしながら発声すると、けっこう声が出るようになるんですよ」とのアドバイスで、みなさんは両腕を前に伸ばして「あ~」とやってみました。声もからだも伸びて一石二鳥のエクササイズですね。

今日の課題曲は以前にリクエストをいただいた『浜辺の歌』から始まりました。歌詞も曲も美しい歌ですよね。この歌は震災からしばらくは演奏するのがためらわれたものです。いまこうして参加者からのリクエストでみんな一緒に歌えるようになった様子に、時間が経ったことを感じます。この市営住宅には津波で甚大な被害があった仙台市荒浜地区から移転してきた人が多いと聞きました。歌っているみなさんの脳裏に浮かぶ思い出の海はどんな風景だったのでしょうね。

後半のミニコンサートで『マイ・ウェイ』が演奏されると「目をつぶって聴いてたら、宝塚の大階段を降りてくるところが浮かんできたよ!」とやや興奮気味に話す方がいました。或る方は背筋をピンと伸ばして聴いていましたが、何かを思い出したのか、やがてハンカチを取り出して目頭をおさえていました。
アンコールは『青葉城恋唄』でした。仙台の夏を歌った曲と言えばこれです。歌が進むにつれて会場がしんと静まり、遠くを見るような表情で小さくつぶやくように歌いながら涙を流す方の姿があちこちに見受けられました。このサロンはざっくばらんで冗談好きな感じの方も多いだけに、この反応にはややおどろきました。同時に、それぞれが抱えている悲しみの深さに改めてはっとさせられました。

終演後、町内会長さんが「みんなでスイカを食べましょう!」と大きな西瓜を切り分けて振る舞いました。参加者も演奏家も一緒になって食べながら、「スイカって美容に良いのよ」「皮は漬物にするといい」など、なんてことない世間話をしています。それがなんだかしあわせな光景でした。それではまた次回、よろしくお願いします。