お知らせ

メモリアルコンサートvol.18

2018.7.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度も
奇数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市/共催=せんだい3.11メモリアル交流館)

東日本大震災から7年4か月となりました。 今日の仙台は曇り空。会場には早くからお客さんが並び始めていました。ある方が「この催しはずっと続けていくべきだと思うのよ」とスタッフに声を掛けてくださいました。
出演はソプラノ小野綾子さんとバロックハープ渋川美香里さんのお二人です。小野さんは宮城県在住の声楽家で、震災直後のライフラインがまだ復旧していなかった時期から復興コンサートにご参加いただいています。近年、イタリアに留学したときにミラノ在住の渋川さんと知り合ったそうで、今回は仙台での初共演となりました。

プログラムはバロック音楽を中心に、夏にちなんだ日本の唱歌を交えたものです。「バロック音楽はなじみが薄いかもしれませんので…」と小野さんは歌詞の日本語訳を朗読し、解説を加えて歌いました。温かみのある旋律を、素朴ながら色彩豊かなハープの音が奏で、そこに伸びやかな歌声がすっと乗って会場を包みます。なんとやさしい調べでしょうか。何かほっとさせるものがありますね。
また、「バロック音楽の盛んだった時代は日本で言うと伊達政宗の時代です」と小野さんは説明しました。「ローマに派遣された支倉常長が聞いていたかもしれませんね」とのお話しに、「へえ~」とお客さんがバロックを身近に感じられた様子が見えました。
渋川さんはバロックハープの仕組みを説明して、ピッチニーニやマヨーネの曲を独奏しました。大多数の人が初めて耳にする作曲家名と作品だったと思われますが、親しみやすい雰囲気なので、ゆったりと楽しんでいたようです。

コンサートの中盤で、演奏家のお二人は震災当時の経験を語りました。小野さんは移動の途中で地震に遭い、慣れない土地の避難所で一晩を明かしたことや、震災後しばらくは歌えなくなったことを話しました。渋川さんはミラノですぐ行動を起こし、知人の音楽家に呼びかけてチャリティコンサートを催しました。その寄付金を日本赤十字社に送りました。遠い土地だけになおのこと「自分に何ができるのだ」「どうしたらよいのだろう」という焦燥に駆られていたそうです。

 

プログラムの最後はよくご存じのイタリア民謡『サンタ・ルチア』、ハープの音色は明るい海のそよ風を思わせ、歌声は真っ青な海の上をどこまでも伸びてゆくかと思われました。バロック風のアレンジが加わったエンディングに大きな拍手が沸きました。
アンコールは客席のみなさんと一緒に「たなばたさま」を歌いました。男性客が思いのほかたたくさん歌ってくださって、その表情からもほっこりと和んだ様子がうかがえました。

西日本各地では豪雨による大きな被害があり、ここ数日のニュース映像には他人事ならぬ思いが湧き、いたたまれない気持ちになります。自然を前にして人間はなんと非力かとまたしても思い知らされます。遠い東北の地から祈りを捧げたいと思います。