お知らせ

気仙沼➀「一緒に歌おう、なつかしのメロディーコンサート」

2018.7.27

7月も気がつけば、残りわずか。連日30℃前後という東北らしからぬ気候に、体調を崩しがちなこの頃ですが、特養老人ホームの夏祭りへのお誘いや、「地域に転入されたみなさんと音楽を楽しみたい」というお声掛けをいただき、夏休みに入ったばかりの気仙沼へ伺うことになりました。今回は、3度目の気仙沼訪問となるメゾソプラノの後藤優子さん、ピアノ・シンセサイザーの菅野静香さんとご一緒です。

震災後に出来た、気仙沼・新月にある特別養護老人ホーム 恵心寮。会場となるホールは2階まで吹き抜けの、自然光の入る気持ちのよい空間です。リハーサルを始めてみると、やはり、教会の礼拝堂のように気持ちよく響きます。これは気持ちよく演奏できそう、とお二人もひと安心です。

「一緒に歌おう、なつかしのメロディーコンサート」というタイトルは、スタッフの皆さんが考えてくださいました。比較的、介護度の高い方々が入所されており、それならば尚のことと、懐かしい曲目をたくさん用意していこう、と戦前から歌われていた童謡や昭和歌謡、そして演歌など、幅広い選曲です。

まずコンサートの始まりはピアノ(シンセサイザー)独奏による「乙女の祈り」。この曲は、気仙沼の幼稚園に通っていた菅野さんの思い出の一曲。いつも、お昼寝の時間になると、先生がこの曲を弾いてくださり、そのピアノの音色に憧れたことが、ピアノを習い始めるきっかけになったのだそうです。若い頃に聴いたことがあった方なのか、演奏が始まると音楽に合わせて手拍子される方も。午後のコンサートの始まりに相応しい、可愛らしく懐かしさも感じる素敵な一曲でした。その後は、歌の後藤さんが加わって、戦後間もなくの流行歌である「リンゴの唄」「憧れのハワイ航路」、童謡・唱歌コーナーとして「浜辺の歌」「我は海の子」「夏の思い出」と続きます。いずれも、みなさんにとっては子供の頃から耳に馴染んだ曲たち。一緒に口ずさむ声が聞こえたり、声は出ずとも唄に合わせて唇の動いているのが見えました。また、眠ったように聴いている方も、指先が少し動いていて、拍子を取っているのが分かります。音楽に誘われるように、心はそれぞれみなさんの思い出の中に旅をしているかのようでした。

後半は、またガラッと雰囲気を替えて、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」から。双子デュオのこの曲は、もちろん菅野さんも、シンセサイザーを演奏しながらコーラスも担当。学生時代から共演を重ねていらっしゃるお二人の、呼吸の合ったハーモニーと、ドラムやベースも重なったシンセサイザーでの演奏に、聴いていらっしゃるみなさんの表情も楽し気です。つづく「上を向いて歩こう」では、後藤さんのうつくしい歌声に何かを思い出されたのか、お洋服で目元をぬぐっていらっしゃった方が…「その姿が目に入ったら、ついこちらまで涙が出そうになってしまって…」と後藤さん。長く歌い継がれてきたこの歌、聴く人の数だけ、おひとりおひとりにそれぞれ思い出が詰まっているのかもしれません。「港町十三番地」「川の流れのように」と美空ひばりの名曲で本編を終了すると、アンコールとして「北国の春」と北島三郎「まつり」が。あまり盛り上がることは少ない、と聞いていた施設でしたが、最後まで手拍子や歌声の絶えない1時間となりました。

終演後、部屋に戻る順番を待っていた方たちに、いかがでしたか?と話しかけると「とっても素晴らしかった。全部、目に焼き付けたからね」「いい音楽を聴かせていただきました」とにこにことお話しくださいました。お好きな歌はありましたか?の問いには「音楽はね、全部好き」。ついさっきまで、この場所に溢れていた楽しい音楽を、思い出しながらお話しくださっていることが、とてもよく伝わってきました。また、恵心寮のスタッフSさんから後日いただいたメールには「コンサートでは、入居者も一緒に口ずさむことができとても良かったです。いつにない、良い笑顔がみられました」と書かれており、喜んでいただけたことがわかって、ほっといたしました。みなさん、どうぞお元気で。またいつかお会いしましょう!(最後の写真は、2階からコンサートを楽しんでいらしたみなさんです!)