お知らせ

気仙沼③旭が丘学園「そよかぜコンサート」

2018.7.28

音楽の力による復興センター・東北は、
平成30年度東日本大震災こども未来基金の助成を受け
被災地の子ども達へ、音楽を届ける活動を4公演開催します。

気仙沼2日目午前中は、東日本大震災こども未来基金の助成を受けて、児童養護施設 旭が丘学園に伺いました。出演は引き続き、メゾソプラノの後藤優子さん、ピアノ・シンセサイザーの菅野静香さんです。この時は、楽器やスピーカーを搬入し終わった途端、さーっと強い霧雨が。昨日今日と25℃前後とはいえ湿度が高く、いつ雨が降るかわからない曇り空が続いていますが、間一髪で降られずに来ている今回です。

リハーサルを始めると、知っている曲がたくさん流れることもあって、なんとなく聴こえてくる音が気になる子どもたちがあちらこちらから集まってきました。リハーサル中は、ホールに入ってはいけないよと先生方がお話しくださっていたと見えて、舞台の上にあたる吹き抜けの2階から覗き込む子や、ホールの入口の階段に座って、ついつい後藤さんの声に合わせて一緒に歌いだしてしまう声が、あちらこちらから聴こえて、子ども達がコンサートを楽しみにしてくれていることが伝わってきました。

リハーサルが終わり「入っていいよ~」と声をかけると、「やったー!」我先に!とホールに飛びこんでくる子どもたち。最前列から埋まりはじめ、次第にもみくちゃになる男の子達、一列に並びながら、ぺちゃくちゃとおしゃべりを始める女の子たち…なんとも賑やかです。開演時間が近づくと、もっと年齢の大きい子どもたちや、そっと、端っこに座る子も。本当は走り回って遊んでいたそうな、やんちゃ盛りの男の子たちも、随分たくさん集まってくれました。幼児から高校生まで、ここに暮らす子どもたちと職員さん、そしてご近所の方、併せて50名ほどでのコンサート。「そよかぜコンサート」の名前は、先生と子ども達で考えてくれました。

小学生が多いだろうとお聞きしていたこともあり、後藤さん、菅野さんはアニメソングやキッズ映画のテーマソングをたくさん揃えて臨んでくださいました。素敵な水色のドレスで登場した後藤さんに、女の子たちから「わぁ~っ!」と歓声が上がりました。携帯電話会社のCMソングとして有名になった「海の声」からコンサートが始まります。その後も、海のメドレーとして「海」「我は海の子」「浜辺の歌」を。子ども達は、前の日まで1泊で気仙沼・大島に海水浴に行ってきたのだそうです。つづく「涙そうそう」では、「今、みんなが一番会いたい人のことを思い浮かべながら、聴いてみてくださいね」と後藤さん。一言ひとこと、思いを込めながら歌う後藤さんの歌声に、子ども達も大人たちも、じっくりと聴き入っているのがわかりました。続いては「夢を叶えてドラえもん」。歌の中に登場する「タケコプター!」や「どこでもドアー!」のドラえもんの掛け声は、打合せをしなくても、子ども達が絶妙なタイミングで入れてくれました。SEKAI NO OWARI「RAIN」は映画「メアリと魔法の花」のテーマソング。これもサビの部分になると大合唱!後藤さんも菅野さんも、子ども達の元気な歌声に笑顔がこぼれます。

今回のシンセサイザー・ソロは映画の曲を2曲。菅野さんが主人公の名前を、子ども達に当ててもらおうとすると…「アリエル!」当たり!それからもう1曲…「ベル!」うーん、ベルは今日は用意してなかったなぁ…海の…かっこいい…「ジャック・スパロウ!」正解!とのやりとりの後に映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」から「彼こそが海賊」と、映画「リトル・マーメイド」より「アンダー・ザー・シー」の2曲が演奏されました。「彼こそは海賊」では、その壮大なオーケストレーションに、男の子たちも喰い付いてくれていたようでした。その後、「星に願いを」の演奏が始まると、黄色いドレスに着替えた後藤さんが再び登場。「Let It Go」「君をのせて」「さんぽ」と、子ども達にとってはおなじみの映画ソングに、あっという間の1時間となりました。アンコールは、黄色いドレスがぴったりの秦基博「ひまわりの約束」。ドラえもんの映画のテーマソングだったこの曲は、男の子たちも恥ずかしそうにしながらも、歌ってくれた子が多かったようです。そして最後に、ご近所から聴きに来てくれたおばあちゃんたちにも一緒に歌ってもらえるようにと「ふるさと」を。子供も大人も一緒になって、大きな声で歌ってくれました。

記念撮影の後には、シンセサイザーに興味津々な子ども達と、自分でも弾いてみたいので楽譜が欲しい!という子ども達、そしてもっと歌ってほしい曲があった子ども達が、後藤さん、菅野さんの周りにたくさん集まってきて大賑わい。少し、興味がなさそうに見えていた、小学校高学年の男の子達も、一台の楽器から繰り出されていた様々な音色やリズムが気になったようで、吸い寄せられるようにシンセサイザーを覗き込んでいました。控室に戻ると飛んできた施設長先生が、驚いたように一言「いつもは、こういうイベントには参加しない高学年の男の子たちも、今日は随分参加していて、びっくりしました!」「職員も、何度も演奏を聴きながらうるうると来てしまったみたいで、部屋を出たり入ったりしてましたよ」「私も、ついウルッときてしまったりして…本当にありがとうございました!」男の子達、そうだったのですね、思いがけない先生の一言に、私たちも改めて驚き、とても嬉しく思いました。

その後、お昼ごはんの時間となり食堂に行った子ども達。機材の片付けが終わり、車に積み込む頃になって、ちょうど食堂を出てきました。いよいよ帰ろうとすると、「また来てね!」「明日来てね!」「きっとだよ!」とみんなから嬉しい言葉。皆からは少し離れて、じっと聴いていてくれた男の子も、一緒に手を振ってくれていました。名残惜しく車を出発させると、園庭の向こうの自分の部屋から、顔を出した中学生くらいの男の子。こちらから手を振ると、少し恥ずかしそうにしながらも、手を振り返してくれました。園庭から正面玄関に車で廻ると、こちらにも、施設長先生と一緒に何人もの子ども達が待っていてくれました。「またね!」「いつか来てね!」子ども達の夏休みの一日、一緒に楽しい時間を過ごせたことは、私たちにも忘れられない思い出となりました。

後日、担当していただいたY先生からのメールでは、その日の午後、早速ピアノの練習をする子、コンサートで聴いた歌を友達と一緒にまた歌う子…と、学園のあちこちが、音楽に溢れた一日となったようでした。旭が丘学園のみなさん、また、きっとお会いしましょう!