お知らせ
七ヶ浜「お茶っこ会 in 松ケ浜」へ
- 2018.8.22
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お盆が過ぎ、一度は秋の風が涼しく吹いた宮城ですが…湿度・温度ともに高い夏が、また舞い戻ってきたようです。海辺の町、七ヶ浜町は少しは海風が吹いて涼しいのでは…と出掛けましたが、淡い期待も虚しく、暑い!一日となりました。
七ヶ浜町社会福祉協議会は、町内各地区の避難所(集会所)で、月に一度サロンを開催しています。この松ケ浜地区避難所も、戸建ての災害公営住宅と、自立再建された新しい家が並ぶ、防災集団移転団地の一画にあります。震災後、新しく建てられた避難所は、コミュニティーを再編していく際の、それぞれの地区の拠点となる場所でもあります。また、次の震災がやってきた時には、文字通り避難所となります。普段から、その場所に足を運び慣れておくことも、有事の際にはきっと役に立つはずです。
サロンでは、月ごとに、健康体操や講話があったり、ボランティアによる歌声喫茶があったり。今回は「なつかしのメロディーコンサート」と名付けました。プロの音楽家の演奏に触れることは、滅多にないことだそうです。早くいらした皆さんには、リハーサルの音が漏れ聞こえながらも、隣りの部屋で、持ち寄ったゆでとうもろこしや茄子漬でお茶飲みしつつ、お待ちいただきました。
出演は、七ヶ浜町のお隣、多賀城市在住の、マリンバ奏者ホンダヒロヤさんと、マリンバ連弾デュオを組んで活動されている熊谷昇子さんのお二人です。熊谷さんは、水色の夏らしい、素敵なドレスで登場です。
始めはポルカ「雷鳴と稲妻」から。ヨハン・シュトラウス2世の作曲による、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでもおなじみの曲です。木の床・天井・壁の会場と、同じく木で出来たマリンバはとても相性が良く、迫力のある大音量、そしてマリンバらしい柔らかく心地よい響きが耳に届きます。マリンバは、楽器としての歴史は非常に新しい楽器ですが、1台を2名の奏者で演奏する連弾は、一度に演奏できる音域が広くなるため、ピアノ曲やオーケストラ曲も、編曲して演奏することができます。桜二重奏では、メンバーである熊谷昇子さんが編曲もされるので、楽譜のない曲でも、リクエストを受けて準備していただくこともあります。今回も、クラシックから、懐かしい歌謡曲、そして意外なアンコールまでバラエティに富んだプログラム。続いては、がらりと雰囲気を替えて「東京ブギウギ」。子供の頃に聴いた懐かしい曲だったのではないでしょうか?ノリノリの演奏に、ついつい踊り出しそうに身体を揺らしている方が、あちこちにいらっしゃいました。音楽は、知らないうちに、身体も心もほぐしてくれるものですね。
「日本のうたメドレー」は、「やしの実」「お猿の籠屋」「めだかの学校」「ふるさと」など、懐かしの童謡がたくさん登場。「めだかの学校」では、写真のような、お魚の描かれたアクリル板を、ホンダさんが取り出して、ペコポコと音を立てると…魚たちが水の中で、ポコポコと音を立てて呼吸をしている様子が目に浮かぶようでした。と、いつの間にか、アクリル板は区長さんに渡されて…急遽のゲスト参加、ありがとうございました!
「ここからは、桜二重奏の歌声喫茶コーナーです!みなさん、そろそろ歌いたくなってきたのではないでしょうか…発声練習、しますか?いいですか?」と、ホンダさんに促されるまま、始まったのは「リンゴの唄」。突然でしたが、いいお声です。「…今まで、いろんなところで歌っていただいているんですが…みなさん、一番いいですね…。なんて言うと、どこでもそう言っているんだろうと、思われるかもしれませんが…」という誉田さんに、会場のみなさんから、どっと笑いが溢れます。「いえ、本当にですよ!」はい、本当にいい声でしたよ!つづく「青い山脈」「恋のバカンス」と曲が進むにつれて、より皆さんの声が聞こえてくるようになり、最後は「学生時代」を。プロの演奏に合わせて歌う、なんて、みなさんなかなかない経験だったのでは?お楽しみいただけましたでしょうか?
ここから後半は、じっくりお聴きいただくコーナー。中島みゆき「時代」と、美空ひばり「愛燦々」と続きます。あちこちで、演奏に合わせて口ずさむ声が聞こえます。どちらの歌詞も、七ヶ浜のみなさん、沿岸部のみなさんの、これまでの7年5か月を思うと、ここでこうして聴かせていただいているだけで、涙が溢れてくる思いでした。
楽器の紹介もしてくださいました。鍵盤を叩く棒のようなものは、「マレット」や「撥」と呼ばれます。毛糸だったり、もっと固い材質の物だったり、演奏者自身が糸を巻いてつくることもあるそうです。高音・低音、それぞれの音の特性に合ったマレットを選んで使います。会場によっても、音の届き方は繊細に変化するので、マリンバ奏者はたくさんのマレットを持ち歩かなくてはなりません。会場から「この楽器を運んでくる時は、バラバラになるの?」との質問。トラックがあるわけでもなく、どうやって運んできたのだろう、と不思議に思われたそうです。今回は熊谷さんの楽器。鍵盤・パイプ・それを支えるスタンドと、全てばらして運びます。みなさん、「へぇ~!」とびっくりされていたようです。
つづく「チャルダッシュ」は、熊谷昇子さんの素晴らしくかっこよいソロが目立ちます。曲の中で、何度もテンポや雰囲気が変わり、ジプシー(ロマ)たちの酒場での楽しく踊り・飲みあう様子が、浮かんでくるようでした。コンサートの最後には「マリンバや木琴と言ったら、この曲でしょうか…」とハチャトゥリアンの「剣の舞」そして「ガイーヌ」をメドレーで。盛大の拍手に、アンコールも演奏されました。
最後にはもうお一人の区長さんからご挨拶いただきました。「なんとも素晴らしい演奏、そして、木の柔らかい、あたたかい音色も、とっても良かった。また、機会がありましたらぜひここで聴かせてください。」大きな大きな拍手に見送られて、コンサートはお開きとなりました。
その後、楽器を片付けている時にも、何人もの方が、直接演奏家のお二人に声を掛けてくださいました。「とっても良かったよ~」「また、きっと来てね~」直接に感想を届けてくださるのは、演奏者にも、スタッフにも励みになり、とても嬉しいことでした。
また、今回は七ヶ浜町社会福祉協議会の3人のスタッフさんにも、楽器の搬入・搬出をたくさんお手伝いいただき、予定していたよりも随分と早く進ませることができました。ありがとうございました。今年、この後3回続く、桜二重奏七ヶ浜ツアー。それぞれの浜で喜んでいただけますように…!