お知らせ

<文化庁派遣事業>仙台いずみの森保育園へ

2018.9.7

音楽の力による復興センター・東北は、
文化庁平成30年度文化芸術による子供の育成事業〈東日本大震災復興支援対応〉を
受託する実行委員会の一員として、音楽プログラムをコーディネートしています。

小雨の降る朝、仙台市と富谷市との境に近い仙台市泉区泉ヶ丘に向かいました。今年の文化庁芸術家派遣事業は、仙台いずみの森保育園からスタートです。出演は、仙台チェンバーアンサンブルのみなさん。ソプラノ勝又久美子さん、ヴァイオリン叶千春さん、チェロ塚野淳一さん、フルート渡邉珠希さん、クラリネット叶光徳さん、パーカッション小林直央さん、ピアノ門脇麻美さんの7名による管弦打楽器なアンサンブルです。

今回は、仙台いずみの森保育園の3,4,5才児さんと、系列園である杜の橋こども園、若樹の森保育園、上桜木果樹園の森保育園(以上、富谷市)から5才児クラスの子ども達が聴きに来てくれました。会場に入ると、譜面台や打楽器が用意されていて、いつもと違う雰囲気のホールに子ども達の目が既にキラキラと輝いていました。碓井理事長のお話につづき、大きな拍手で演奏家を迎えると、素敵なドレス姿のお姉さんたちに、子ども達の目は釘づけです。「サウンド・オブ・ミュージック」から始まったコンサート、マイクを使っていないのにホールいっぱいに響くソプラの勝又さんの歌声に、みんなびっくりした様子です。また、見るのも聴くの初めての子が多いヴァイオリンやチェロと言った楽器た、様々な音色の楽器を使い分けるパーカッションにも、どんな風に弾いているのかな?と視線が集まっていました。

ブラームスの「ハンガリー舞曲」第5番、プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」からアリア『私のお父さん』では、音楽の中で自由自在にテンポの動く楽しさや、オペラアリアの声の美しさにうっとりと耳を傾けていたようでした。

続いて「ラデツキー行進曲」が演奏されると、「それでは、今度はみんなで指揮者を体験してみましょう」と叶さん。指揮者の役割を3つ教わり、まずは入る合図を試してみるのに「じゃんけんぽん!」演奏する人と、指揮を振る人みんなが、音楽がいつから始まるのか合図を出すのは、じゃんけんぽん!と似ています。そして、大きく振ったり、小さく振ったりすると、その指揮を見て音を出すみなさんの演奏も、大きくなったり小さくなったり。どんな演奏になるかは、指揮者次第なんだよ、と教わりました。「やってみたい人!」と尋ねて真っ先に手が挙がったのは、一番後ろにいた女の子。叶さんに教わり、フルートの珠希さんと目を合わせながら、立派に指揮をしてくれました。もう一人は男の子です。こちらも、初挑戦とはいえ堂々とした指揮振りです。「そして、実は今日、もうお一人ゲストをお招きしています」と紹介されたのは、S先生。子ども達がざわめきます。朝の準備から奔走してくださっていた先生にも、挑戦していただきました。普段から、子ども達の合奏の指揮をすることはあるそうで、プロの前でも慣れた指揮振りは安定感があり、素晴らしかったです!演奏が終わると、演奏者の皆さんを立たせて、ご自身もお客様に一礼を。ステージマナーもばっちり決まっていました。子ども達も、いつも知っている先生の、いつもとは違う晴れ姿に大きな拍手を送っていました。

と、盛り上がったところで演奏に戻り…「君をのせて」では叶千春さんのヴァイオリンの音色に焦点を当てて、アンダーソン「シンコペイテッドクロック」では、音楽に合わせてみんなでボディーパーカッションを楽しみました。最後に登場した珍しい楽器、スライド・ホイッスルが、子ども達には大人気。「ひゅーいっ!」と音程が変わる笛の音を、あちらこちらで真似してみる子ども達、大盛り上がりです。「もみじ」「ふるさと」は、勝又さんの歌と一緒に子ども達も歌いました。大人たちにとっても懐かしい歌ですが、5才児さんも4才児さんも大きな声で歌ってくれて、演奏家のみなさんからも笑顔がこぼれました。

そして終盤となり、いよいよ園の先生方との共演で「お祭りマンボ」の演奏です。保育園の夏休みに向けて、楽器のできる先生方で練習されたのだそうです。参加くださったのは、フルート、トランペット、トロンボーン、ユーフォニアム、そして大太鼓(長胴太鼓)、締め太鼓、チャンチキ、カホンという豪華版。また、この先生方の演奏が、上手!リハーサルの前には「緊張してきて、指が震えてる…」とおっしゃっていた先生も「本番になったら楽しめました!」と。また和太鼓やチャンチキが入ると、途端にぐっとどこか懐かしいような、身近な音のように聞こえるから不思議です。終わると、子ども達や先生方から大喝采を受けました。

そしてコンサートの最後は「さんぽ~となりのトトロ」をメドレーで。前奏が始まるや否や、大喜びの子ども達。勝又さんがマイクを口元に持っても、全くその声が聞こえないくらい、子ども達の声が賑やか!演奏されているみなさんも、私たちスタッフも、本当にびっくりするくらいの大きな声でした。後から伺うと、いつも元気に歌う子ども達ではあるけれど、今日は特別に大きな声で歌っていたとのこと。「プロのみなさんの演奏が、やはり子ども達に何か、響いたんだと思います」と園長先生。ニコニコとこぼれそうな笑顔で、お友達と顔を見合わせながら一緒に歌う姿を見ていると、音楽ってやっぱりいいものだなぁ、と思えて仕方ありませんでした。

アンコールの拍手をいただいて演奏したのは「歌えバンバン」です。こちらも、今まで以上に、大きな声で歌ってくれた子ども達。一緒に歌えるお友達がいることも、また、歌を楽しくしてくれる理由のひとつだなと感じました。楽しい時間はあっという間です。まだまだ歌い足りなさそうな子ども達ではありましたが、終わると、代表のお友達が立派なご挨拶をしてくださいました。コンサートを、とても楽しみに待っていてくれたこと。綺麗なドレスが素敵だったこと。自分たちの好きな歌をたくさん演奏してくれて、一緒に歌えて楽しかったことなど、とても素直な感想を聞かせてくださいました。

終演後、理事長先生にお話しを伺うと「お家の方と、子ども達が、コンサートに足を運ぶ機会、というのは、よっぽど音楽好きなご家庭じゃないとないことだと思う。だからこそ、園でこういう機会を持つことは本当に貴重。子ども達には本物を聴かせてあげたいし、この中から、私もやってみたい、と音楽の道を志す子が出てくるかもしれない。子ども達のために私たちがやるべきことは、いろんなものに触れさせてあげることだと思うんです」そんな夢のある話をお伺いしながら、それだけ届ける側にもいつも責任があるのだ、ということを感じました。初心忘るべからずで、今年度も各地の学校・保育園・児童館などお伺いしていきたいと思います。仙台チェンバーアンサンブルのみなさん、今日はありがとうございました!