お知らせ

メモリアルコンサートvol.19

2018.9.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度も
奇数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市/共催=せんだい3.11メモリアル交流館)

どんよりとした曇り空の下、風はひんやりしているのに、じわりと汗ばむ湿気もあり、秋と夏の境目のような天気です。「今日で、東日本大震災から90か月です」と、メモリアル交流館の八巻館長が言いました。7年6か月、2742日目。すっかり過去になった人、いまだ直面している人、あの日との距離感は人それぞれで、その違いは今後もっと広がっていくのかもしれません。
また、今日9月11日はニューヨークの同時多発テロのことも思い出されます。さらに、最近は西日本豪雨や台風、北海道地震など立て続けに災害が起こり、気の休まらない日が続きます。今日のメモリアルコンサートではその各地にも祈りを捧げたいと思います。
今日の出演は、トリオ・クルール(ファゴット髙橋あけみさん、フルート大泉水季さん、ピアノ大野木はるかさん)です。みなさん山形在住の演奏家ですが復興コンサートに何度かご参加いただいています。これまでに仙台市内の復興公営住宅や、岩手県の釜石や遠野などの遠方でも演奏していただいています。
髙橋さんは「震災の後は無力感にとらわれました。自分が命を懸けてやってきたことが何の役にも立たないなんて…」と当時の思いを語りました。そのお話に大泉さんも大野木さんも深く頷いていました。しかし、その後岩手の復興支援団体や当センターとのつながりができ、仕事の合間を縫って被災地での演奏活動を現在も続けています。

髙橋さんと大泉さんは、各地の復興コンサートでも喜ばれている愉快な楽器紹介を披露しました。ことにファゴットはなかなか間近で見る機会の少ない楽器です。髙橋さんは分解して見せ、「薪の束」という名のいわれを解説しました。お客さんは「へえ~」「何の木でできているの?」と興味深そうに聞いていました。
おなじみのクラシック曲や日本の歌謡曲などが演奏される中で、特に『メリー・ウィドウ・ワルツ』はとてもロマンティックでした。フルートとファゴットが女声と男声のように響き合い、一組のカップルが踊る様子が目に浮かぶようでした。お客さんも調べに身を委ね、ゆったりと体を揺らして聴き入っていました。
プログラム後半で会場のみなさんには『赤とんぼ』『紅葉』をご一緒に歌っていただきました。すると、演奏家が「わあ、すごい声ですね~!」と目を丸くして感激するほど、厚い歌声が湧いてきました。男性客も臆することなく歌っていて、心なごむ光景がありました。


演奏家の皆さんは今日のためにアンコール曲を2つも用意していました。「時間過ぎちゃいましたが、演奏していいですか?」と訊くと、お客さんたちは「いいよ~」と笑顔と大きな拍手で答えました。アンコールは『虹の彼方に』。ふと気づけばいつしか雲は晴れて柔らかな陽光が差していました。
トリオ・クルールのみなさん、心のこもった演奏をありがとうございました。