お知らせ
大槌・三陸花ホテルはまぎく「真夏の夕涼みコンサート」
- 2018.8.7
-
盛岡出身で、マンハイム音大に留学し、現在も家族とドイツに暮らすモンニンガー礼子さん。毎春、チェロ奏者の旦那さんと、東日本大震災の復興を願ってチャリティーコンサートを開催されており、集まった募金を今年、寄附されたのが岩手・大槌学園でした。小中一貫校として、新しく出発した大槌学園。まだ新しい校舎には天井の高い音楽室があり、7月にグランドピアノが寄贈されたばかりです。モンニンガー礼子さんが、夏に盛岡に帰省するとお聞きし、寄附を届けた大槌学園へ、音楽も直接、届けに伺うことになりました。ご一緒いただいたのは、礼子さんが留学前に学んだ山形大学の先輩である、ヴァイオリンの駒込綾さんです。ヴァイオリンとピアノとの二重奏で、大槌と釜石を訪問しました。
昨年度、今年度と採択を受けた、岩手県の「心の復興」事業補助金にも後押しいただき、大槌を拠点に、音楽を通じた交流や復興支援コンサートの受け入れを積極的に引き受けていらっしゃる『槌音プロジェクト』の臺さんに、広報やピアノの使用、何より大槌の皆さんとの繋がりなど、様々な面で今回もお力添えをいただきました。
初日の浪板海岸は、近づく台風になかなか荒れ模様。防潮堤に音を立てて打ち寄せる波の音は、演奏中の一瞬の静寂にも聞こえてくるほどの大きな音です。その音をBGMにドヴォルザークの「ユモレスク」や、パガニーニの「カンタービレ」などのクラシックの名曲や、さだまさし「精霊流し」、葉加瀬太郎「情熱大陸」といった歌謡曲やポップスまで、ヴァイオリンとピアノという、どんなジャンルにも対応できる身軽さで、バラエティに富んだ演奏を聴かせてくださいました。
旦那様がチェロ奏者でもあり、弦楽器と、やはり合わせ慣れているモンニンガー礼子さん。そして、たくさんのピアニストと演奏されているヴァイオリンの駒込さん。お互いの呼吸に合わせていくのが、見ていても本当に早くて驚きました。礼子さんのピアノ・ソロは、ドビュッシー作曲「金色の魚」を。日本では、あまり演奏される機会の少ない曲のように思いますが、本当にきらきらとしたピアノの音が、自由自在に空間を跳ね回り、舞い踊り、静と動の生命感溢れる対比に、いつの間にか引き込まれていました。
波は大荒れ、そして、雨降りのお天気に、お客さんはとても少なかったのですが、わざわざ足を運んでくださった方、こちらのホテルにお泊まりの方、それに従業員さんも仕事の合い間に足を止めて聴き入ってくださいました。また終演後に、震災直後からの大槌町の様子を写真に撮り続け、ご自身で一冊の本にまとめたものを「ぜひ、お二人にプレゼントしたい」とお持ちくださった方がいらっしゃいました。ページをめくると、今の大槌町しか知らない私たちには、想像を絶する景色が拡がっていました。この景色の中、大切なものを失い、また守り抜き、その後も変わり続ける町を目に、ここで暮らし続けるみなさんに、私たちは掛ける言葉がすぐには見つかりませんでした。でも、その方達が、こうして音楽会に足を運んでくださり、一緒に時間を過ごして下さったこと、そして、この写真集を見てほしい、とわざわざ届けてくださったことに、言葉ではないメッセージが詰まっていたように思います。駒込さんも、モンニンガーさんも、またそれぞれの暮らす町・国に戻り、ここで感じたことや、沿岸部の現在を、離れた場所に暮らすみなさんに何かの機会に伝えていきたいと、この旅の途中に何度も口にされていました。雨の中をお出かけいただいた町のみなさん、本当にありがとうございました。