お知らせ

大槌町文化交流センターおしゃっち「真夏の夕涼みコンサート」

2018.8.8

ヴァイオリンの駒込綾さん、ピアノのモンニンガー鎌田礼子さんとの、この日、3公演目。千葉・茨城県の沖合いを北上する台風の影響が、大槌にはこの後、どのくらいあるのだろうかと、皆んなで心配しながら過ごす一日となりました。

距離の離れた仙台から、集客広報活動が難しいことは承知の上での開催でした。それならば、これまでに伺っていた小規模な仮設住宅の談話室での、小さなサロンコンサートさながら、こじんまりとした会場でコンサートをやってみようと、広いホールではなく、レッスン室を敢えて予約。ところが、事前打合せの際に訪れた際、「もし、人が多く来そうだったら、せっかくだから広い多目的ホールに、会場を移したらいいですよ。判断はその日で大丈夫。」と北田所長から、ありがたいお申し出をいただいて、当日の様子を見ることに。その後、多目的ホールには予約が入ったものの、「それなら、吹き抜けのエントランスにピアノを出してもいいですから。そのほうが、人も入ってきやすいだろうし」(!!)と言っていただいて、響きの良い吹き抜けの天井のエントランスで、コンサートができることになりました。本当にありがたいお申し出に、一同、疲れも忘れて、頑張ろう、と気合いが入ります。

2日前に配布された町の広報誌にも、おしゃっちのイベント紹介ページにコンサート情報を掲載いただいたのが良かったのか(これも所長の計らいにより、町の共催としていただけたからこそ…)、打合せの際に、槌音プロジェクトの臺さんにあちこちお付き合いいただいて、公営住宅の掲示板や役場、観光協会、近所の喫茶店にもポスターを貼らせていただいたのが良かったのか、大槌町社会福祉協議会さんからも、サロンなどでお声がけくださった効果があったのか…?兎にも角にも、大槌の多くの皆さんのおかげで、コンサートが始まる頃には用意した椅子が、ほぼ満席となっていたのでした。

取り壊しの決まった旧・町役場庁舎、そこから目と鼻の先に、2mばかり、嵩上げされた土地にオープンした、大槌町文化交流センター。図書館があり、震災伝承資料室があり、ホールがあり、勉強スペースには高校生たちがひとり二人と遅くまで机に向かっていて、震災前のどこに誰の家があったかがわかる、ジオラマまであり、周りには災害公営住宅や自立再建の家々が建ち、喫茶店もお店も少しずつ戻ってきています。それでも、空き地のままとなっている場所も多いのが現実。外に開けた吹き抜けの、大きなガラス張りの、その、おしゃっちに、町内外から車で、またご近所から歩いて、コンサートを聴きにと足を運んでくださった方たちが、こんなにいらしてくださったことに、音が鳴り出してからというもの、何度となく込み上げてくるものがありました。

レッスン室から、4人がかりで運んでいただいたピアノは、昭和37年製。巡り巡ってこんな素敵な場所で、また、いろんな方に弾かれることになるとは、この長生きなピアノも、想像しなかったことでしょう。モンニンガーさんは、夜のコンサート、ということでショパンの「ノクターン」、今回、いずれの会場でもその素敵な和声の色彩感をキラキラと聴かせていただいているドビュッシー「金色の魚」を、ヴァイオリンの駒込さんは「チャルダッシュ」「精霊流し」「情熱大陸」と、それぞれ国と時代を越えて多くの方にヴァイオリンの音色を届けてくれた名曲の数々を、いつもと同じように心を込めて演奏してくださいました。

お客様の中には、リハーサル中に通りがかって、何時から?と声をかけられ、わざわざ開演時間に出直して来てくれた方や、午後に伺った三陸園の施設長やたスタッフさん、そして元・大槌高校教諭の金丸先生ご夫妻や、翌日お世話になる、釜石・宝樹寺の野嶋住職、また、いつも宮城県塩釜市でお世話になっている、支援団体えぜるプロジェクトのYさんも、駆けつけてくださり…本当にこの数日間の滞在でお世話になった方や、これまでの長いお付合いの中で、偶然にもこの大槌にご縁の繋がっていた方など、このコンサートを目がけて集ってくださったみなさんに、演奏家のお二人もあたたかく励まされるような気持ちを感じていらしたようでした。

6月にできたばかりの、おしゃっち。コンサートを楽しむみなさんを後ろから目にしていると、みんながが集まれる場所というものが、やはり『町』には必要なのだ、と感じました。そして、そこに時々でも音楽があったなら、芝居がかかったなら、映画が上映されたなら、盆踊りの櫓が組まれたなら、やはり人は年齢を問わずに、集まってくることだろうと思います。これまでは、坂を上った城山公園にある、大槌町中央公民館で開催させていただいていた復興コンサート。今回初めて、元の町の中心部にできたばかりのおしゃっちにお世話になり、“音”のあるところに、“人”の集まるうれしい空気を、久々に肌で感じました。おしゃっちのスタッフのみなさま、大変お世話になりました。またぜひ、演奏家と共にお伺いさせてください!