仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
（仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」）

今日は2019年最初のうたカフェです。道行く人が吹き飛ばされそうな強風が吹き荒れていましたが、いつもよりだいぶ早いうちから参加者が集まり始めました。「今年もよろしくお願いします」とたくさんの方にお声掛けいただきました。インフルエンザ警報が出ている昨今ですが、みなさんお元気そうでよかったです。
喫茶ひこのマスター西垣さんがコーヒーの仕度をしている端からみなさんは「いい香りねえ」「ちょっといただいていいかしら？」とカップ片手に集まってきました。おいしいコーヒーがあるとおしゃべりもいっそう進むようです。町内会長さんがその様子を見ながら「おしゃべりは認知症予防にとても効果があるそうですよ。だから女性は長生きなんですねぇ」と微笑んでいました。この復興公営住宅のみならず、となりの復興公営住宅や周辺の防災集団移転地域にお住まいの方も気兼ねなく集まれるこの場は、まさに地域交流の拠点となっています。うたカフェはみなさんに育てていただいて、この地区にすっかり溶け込んだ様子ですね。

さて、今日も音楽リーダーのソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノ富樫範子さんは充実のプログラムを用意してきてくださいました。ゆったりと上体を伸ばす準備体操をしたあとに、3つの組に分けて童謡の『かたつむり』『あめふり』『鳩』を同時に歌うという不思議な合唱をやりました。各チームとも他の歌に釣られてはならじと一所懸命に歌います。妙なる、というよりは“妙な”ハーモニーが生まれて会場が歌声でぎゅうぎゅうになったような気がしました。全員がぴたり、と歌い終わって「お～」と歓声と拍手が沸きました。シンプルですが楽しい歌あそびですね。

今日の本編は「ふるさと」がテーマの選曲でした。なつかしの昭和歌謡『夜明けのうた』、唱歌『故郷』、そして『花は咲く』を歌いました。松本さんは姿勢のことを、岩瀬さんは言葉との向き合い方をアドバイスし、「よく知っている歌はおざなりに歌ってしまいがちですが、改めてきちんと歌ってみることもよいですよ」と言いました。
『故郷』や『花は咲く』はやはり泣けて仕方がないという方が数名いましたが、目頭を押さえつつも、顔を上げて、胸を張って歌おうとしていました。

コーヒータイムのミニコンサートではやはりふるさとにちなんだ日本歌曲やオペラアリアが披露され、みなさんうっとりと聴き惚れていました。最後に松本さんが「今年は亥年です。猪（いのしし）という漢字は中国では豚の意味だそうです。なので、この歌をうたいます！」と言いました。軽快なテンポで始まった曲はディズニー映画「三匹の子ぶた」の『おおかみなんかこわくない』です。松本さんと岩瀬さんは踊りながら素晴らしいハーモニーを歌いあげ、みなさんは体を右に左に揺らしながら手拍子して楽しんでいました。

帰り際、みなさんには松本さんが丹精込めて作った折り紙のイノシシがプレゼントされました。「わ、かわいいこと！」とみなさん感心しきりでした。猪突猛進よりはむしろマイペースで、今年も健康に朗らかにたのしく歌っていきましょうね。