お知らせ

若林西「うたっこ会」ひな祭り

2019.2.27

仙台市若林区の復興公営住宅で2015年9月から「うたっこ会」を始めました。
季節に一度、みんなで歌うことを楽しむ会です。
復興センターでは音楽リーダーをコーディネートし、
この住宅の町内会〈せせらぎ会〉と協働しています。

2月とは思えない暖かさの朝です。この時季恒例となった「おひなさま会コンサート」をお届けに、広瀬川のほとりにある若林西市営住宅集会所へうかがいました。会場には七段飾りの立派な雛人形があります。お雛様を愛でながら一緒に音楽を楽しみ、春の訪れをみんなで喜びましょう。

音楽リーダーはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんです。昨日の泉中央南に続き連日のご登場ありがとうございます!今朝はコンサート仕様でドレス姿での登場です。入場した瞬間に「わぁ…」と客席からため息と歓声が上がりました。衣装の華やかさや彩りも人に元気を与える要素になりますね。

クラシックの歌曲や昭和歌謡など、バラエティに富んだプログラムで、参加者のみなさんはしんと静まり返って聴き入ったり、手拍子足拍子でノリノリになったりしていました。
『コーヒールンバ』が演奏されると「お、西田佐知子なつかしいねえ」と嬉しそうな様子の男性がいました。アン・ルイス『グッバイマイラブ』では「この歌、私大好きなの…」と、演奏家をじっと見つめるご婦人がいました。歌を聞くとその時代に一気に引き戻される感覚があります。「忘れないわ」という歌詞にみなさんそれぞれの忘れられない人の面影を投影して聴いていらっしゃるのでしょう。春先はいろいろなことを思い出す季節です。

プログラムの締めは古賀政男『東京ラプソディー』で元気はつらつ、朗らかに。会場じゅうが手拍子で弾んでいます。掛け声も飛んできて、うきうきとした明るい雰囲気に包まれました。
すかさずアンコールの大合唱です。今日初めて参加した男性がさっと手を挙げて「リクエスト、お願いしたいです!」と声を上げました。その方は「アンジェラ・アキの『手紙』を聞きたいです!」と熱のこもった様子で言いました。すると、後藤さんは「なるほど…少々お待ちください」と控室に一度下がりました。楽譜がないことには演奏できないので、その場でのリクエストにはなかなかお応えできないものです。何か方策はあるのでしょうか。暫しの静寂のあと、なんと「楽譜がありましたー!」と満面の笑顔で再び登場しました。たまたまバッグに入っていたそうです。こんな偶然ってあるんですね。今日は歌の神様が来ていたのでしょうか。ありがとうございます。

後藤さんと田村さんは手早く打ち合わせをし、1冊の楽譜を2人で見ながら演奏しはじめました。リクエストをした方は時折メガネをはずして零れ落ちる涙を拭っていました。何か深い思い入れのある歌なんですね。他の人たちもしんみりと聴いていました。この7年11か月のことが思い起こされた方もいるでしょう。未来の自分に語りかけるとしたら、今どんなことを伝えたいと思うのでしょうか。

さて、終演後は演奏家も昼食会にお呼ばれし、みなさんとおひな祭りのごちそうをいただきました。若林区は仙台市の中でも農作物の生産が盛んな地域です。和え物や漬物、焼き物など、採れたばかりの地元産野菜を使った料理に話が弾みました。

男性陣は「西田佐知子の歌をもっと聞いてみたいね」「アカシアの雨ね」
「オレ学生の頃、レコード屋にあった森山加代子の等身大の看板を友だちと持って来ちゃってさ」
「歌が上手いのはやっぱり美空ひばりだよ」「オレはGSはあんまり好きじゃなかったな」
等々、青春の音楽談義に花が咲いていました。
ふと、或る紳士がやって来て「今日は大変結構な演奏を聴かせていただきました」と丁寧にお礼を述べ、後藤さんと田村さんはとても恐縮していました。

せせらぎ会のみなさん、毎年おもてなしいただきありがとうございます!今年度もお世話になりました。