お知らせ

荒井東「うたごえサロン」_3月

2019.3.19

仙台市若林区にある復興公営住宅である荒井東市営住宅町内会からの依頼で
2018年4月から「うたごえサロン」をお届けしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

春のお彼岸はポカポカ陽気となりました。会場の設えはひと足早く満開の桜を取り入れて、音楽リーダーのメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんははつらつと登場しました。
今日の課題曲は季節にちなんで『うれしいひなまつり』から始まりました。しかし、ここでちょっとした工夫があるのです。このメロディに乗せて『荒城の月』を歌うという替え歌あそびを行いました。「春高楼の花の宴…」という漢文調の硬い文章が、ほんわかした愉しそうな宴に聞こえてきます。「これは脳トレになるねえ」とみなさん笑っていました。
続いては『荒城の月』の曲で『うれしいひなまつり』の詞を歌います。すると、見たことはないですが、やけに重厚なひな祭りの様子が脳裏に浮かびました。メロディが感覚に及ぼす力は大きいですね。参加者は「へえ、面白いねえ」と興味深そうにしていました。
続いては、以前リクエストのあった『南国土佐を後にして』です。同名の日活映画があることから、「小林旭ってカッコよかったよね~」としばし青春の映画スターの話で盛り上がりました。すると町内会長さんがとなりの席のSさんに「Sさんは小林旭に似てるね!」と持ちかけると、会場じゅうが「え~!」と爆笑。会長さんはいつも楽しいジョークで場を盛り上げてくださいます。ありがたいことです。

終盤で、小学生の女の子たちが興味津々の様子で窓辺に寄ってきました。今日は卒業式で午後はお休みだったそうです。「さあどうぞ」と窓を開け、演奏家によるミニコンサートを一緒に楽しんでいただきました。昭和や平成の懐メロを中心とした演目でしたが「なんかきいたことあるー」「ママがきいてた」としっかり聴いていました。小さなお客さんの登場に参加者の皆さんも一層ほのぼのとした雰囲気で歌を楽しみました。午後の日差しの中、佳い光景でした。
うたごえサロンが終わった後に、町内会長さんが改まって「ちょっと相談があります」と言いました。いったい何事かと思ったところ、「私たちに合唱をおしえてほしい」とのことでした。聞けば、今年の秋に行なう敬老会で発表したいのだそうです。それは素敵ですね!
「このサロンのことももっとみんなに知ってもらいたいし、敬老会で歌を披露できたらいいなあと思うんだ」
復興住宅にお住まいの方が自発的に音楽で何かしようとする、その意志にはぜひ私たちも協力したいと思います。新年度へ向けて意欲を見せる会長さんの姿に、演奏家もじんわり感動していました。

今日でちょうど12回目のうたごえサロン、1年が経とうとしています。毎月続けてきた小さな試みが芽を出したことを実感した春の午後でした。がんばりましょう!