お知らせ

荒井東_「うたごえサロン」5月

2019.5.21

仙台市若林区にある復興公営住宅である荒井東市営住宅町内会からの依頼で
2018年4月から「うたごえサロン」をお届けしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

朝から、大雨・強風警報が出される中、5月の「うたごえサロン」を開催しました。市営住宅の中庭にある集会所が会場なので、遠くからいらっしゃる方はいないとはいえ、この、雨風のなか、来てくださる方はいるかしら??…との心配をよそに、時間が近づくと、少しずつ住民のみなさんが集まってきてくださいました。ちょうど、開始時間と同じ頃、集会所の隣りには野菜の移動販売車が。一度、お買い物をして野菜を部屋に置きに行ってから、再び集会室に来てくれた方や、「これから、なにあんのっしゃ?(これから、何が始まるの?)」と覗いていかれる方もいて、今回は、わざと外から中の様子が見えるように、扉を閉めずに始めてみました。音楽リーダーのメゾソプラノ後藤優子さん、ピアノの田村聡子さんも「入って来てくれる人がいるといいですね!」と、チラリと外を気にしつつ、今日も体ほぐしから始まります。

後藤さん、田村さんは、いつも季節の花や、年中行事にちなんだ飾りをたくさん用意してきてくれるのですが、今回は5月ということで、端午の節句の「こいのぼり」を。そして、みなさんで一緒に歌う1曲目も「こいのぼりメドレー」でした。「もう何十年ぶりに歌ったかしら~」そんな声が聞こえつつ、男性も女性も、懐かしそうに歌われていました。子どもの頃に歌った歌は、記憶の奥に沁み込んで、メロディが聴こえてくると自然と歌詞も思い出すものですね。高い音を出す時のアドバイスとして、後藤さんが面白い実験(?)をしてくれました(写真参照)。始めの写真は、眉を下げたまま、暗い表情の真顔で高い声を出そうとしているところ。「これだと、ちょっと高い声は出にくいので、さっきやった”びっくりした顔”を思い出しましょう!」そして、右の写真のような表情に。眉を上げて、目を見開くようにびっくりした顔で、高い声を出してみるところ…。違いは一目瞭然。とても明るい声で、高い音がよく響きます!とはいえ、表情豊かな後藤さんのお顔の変化に、つい、笑いが止まらなくなる方も…さあ、みんなで一緒に挑戦。笑いをこらえつつ、ぐっと、明るく高い声が出るようになりました!

つづく「みかんの花の咲くころ」は、母の日にちなんだ選曲です。こちらも一層懐かしく感じられる方が多かったのか「こいのぼりメドレー」よりも、大きな歌声が聴こえてきました。3拍子(6/8拍子)の歌は、右に左に体を揺らしながら歌うことができるので、いつのまにか楽しい気分になってくるのも不思議です。そして「この、間奏がいいんだよ~!」という一言が。前回に続いて、口笛の得意な男性が、とても器用に間奏を吹いてくださいました。その音色のなんとも素晴らしいこと!聞くと、お若い時、某放送局の方にこの口笛が素晴らしい、とスカウトされて、テレビ番組のBGMのレコーディングに参加されたこともあったそうです。思いがけないところに、プロ級ミュージシャンがいらっしゃいました。

最後は「川の流れのように」を。この曲は後藤さんも「私よりも、皆さんの方が、たくさんこの曲を歌っていらしたかもしれませんね」と。それだけ、長く多くの方に愛されてきた名曲ですね。改めて歌う前にみんなで一緒に歌詞を読んでみましたが、しみじみと、良い歌詞だなぁと感じました。詩だけを朗読すること、普段の生活の中ではなかなかないことかもしれませんね。知っている歌でも言葉だけを読むと、また新たな印象が生まれる気がしました。この曲では「子音を意識して発音しましょう」と教わりました。「はるか~とおく~♪」の一節も、きちんと「H」の音を発音しないと、「あるか~とおく~♪」と聞こえてしまいます。話すときと歌うときでは、発音ひとつとっても、気を付けることが異なるのだな、と発見でした。

さて、たくさん歌った後は、のどを潤す休憩タイム。コーヒーや緑茶と、「みかんの花咲く丘」にちなんだ「伊予柑マドレーヌ」が今日のお伴です。東北では見かけることのないみかんの花ですが、歌とおやつから、海を見下ろすみかん畑を想像していただけたら…と選んでみました。

そして後半は、お待ちかねのミニコンサート・コーナー。今回は、母の日シリーズとして、遠い日のお母さんの面影を思い出す、北原白秋作詞、山田耕筰作曲の「この道」からスタート。たっぷりとした歌い方で、優しく歌ってくださる後藤さん、田村さんの演奏に、みなさんすっかり聴き入っていらっしゃるのが分かりました。先ほどまでと同じ場所に居るのに、なんだか急にこの場がサロンコンサートの会場に変わっていたようでした。2曲目はなつかしいダイヤル式の電話が登場!田村さんの私物です。演奏されたのは坂本九さんの「明日があるさ」。好きになった女の子に、電話をかけてみようと勇気を振り絞ってダイヤルを回すのですが、ジリリリリッ!と勢いよく鳴り出した呼び鈴に怖気づいて、待ちきれずに切ってしまうのでした。後藤さんの、主人公になりきった小芝居もハマって、ちょっとした喜歌劇、オペラを見ているようでした。本編最後のこの曲が終わると、アンコールを求める拍手、そして、タイミング良く鳴った電話でも、アンコールの注文が入ったようです…!

「川の流れのように」に続いて…と歌われたのはテレサ・テン「時の流れに身を任せ」。ところどころ、田村さんが伴奏しながらハモり、美しいハーモニーも聴こえてきました。また何人か、後藤さんに合わせて口ずさむ方も。この曲も、長く人の心に残ってきた曲ですね。大きな拍手が贈られ、今日の「うたごえサロン」もあっという間の1時間となりました。また、その後、自治会長さんからの提案で、9月に開かれる敬老会で、この「うたごえサロン」で合唱を披露しよう、というご提案をいただきました。満場一致で「いいね!」となり、歌いたい曲を話し合い…来週からは目標に向かって、少しずつステップアップしていきたいと思います。

片付けをしていると「ほんっとに(お二人の演奏は)上手だなや、こんな風に(無料で)きがせでもらっで、もうしわげねぇなや」と声をかけてくださる方も。また、廊下でお見送りをしてくださったお二人に、わざわざリクエストをすてきな便箋に書いて持って来てくださった方もいらっしゃいました。季節の歌や、懐かしい歌、そういえばこんな歌もあったね、とまた思い出させていただきました。来月以降、きっと取り上げていただけると思いますので、お待ちくださいね。

合唱団結成も決まり、またリクエストもいただいたりして、丸1年が経ったこちらでの「うたごえサロン」も少しずつ定着してきたようです。今日の帰りには「せっかくのこの機会、もっと、みんなに参加してほしいね」そんな声が聞こえてきました。「みなさんも、慣れていらしたのか、とてもいい雰囲気になってきましたね」と後藤さん。たしかに皆で歌っている間にも、後藤さんの楽しいお話しに、客席から合いの手が入ることもしばしば。決して歌をみんなで歌う、というだけではない、また、歌を教わる・教えるだけではない、楽しいコミュニケーションが生まれている時間です。荒井東市営住宅のみなさん、新しい方のご参加、いつでもお待ちしております。一度だけのお試しも、どうぞ足をお運びください!