お知らせ

メモリアルコンサートvol.22

2019.6.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度も
偶数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市/共催=せんだい3.11メモリアル交流館)

新年度最初のメモリアルコンサート開催日となった今日は、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした空模様です。
ご無沙汰していた「せんだい3.11メモリアル交流館」を訪ねると、校外学習と思しき子どもたちが施設見学をしている最中でした。少し時間をおいて覗いてみると、今度は別の団体さんが1階交流ホールでスライド写真を見ながら職員さんの説明を受けています。今日は施設見学の申し込みが多く、午前中だけで5件もあったとか。奥のテーブルでは外国人の男性2人が熱心に関連書籍を読みふけっていました。
様々な世代、さらに国外の方も訪れて震災について学んでいる様子に、「震災や地域の記憶を語り継ぐための場」というメモリアル交流館の役割の重要性を改めて感じます。そしてその場所でメモリアルコンサートを開催できることを、とても嬉しく思いました。

交流館への事前問い合わせがいつもより多かったという本日のコンサート。なんとか天気がもったことも幸いしてか、開場前から長い列ができていました。用意した席はもちろん、追加で出した椅子もあっという間に埋まり、90人もの方にお越しいただきました。本当にありがたいことです。
満員となった会場で演奏していただくのは、ヴァイオリン駒込綾さん、クラシックギター小関佳宏さんのお二人。駒込さんが「構えず、気軽に聴いてください」と朗らかに挨拶すると、お客様もほっと肩の力を抜いたようでした。

 

 

まずは誰でも知っている曲を、と演奏されたのは『チャルダッシュ』。みなさん何度も耳にした曲だけあって、あっという間に演奏に引き込まれていました。その後もオペラ「タイス」から『タイスの瞑想曲』、さらにお二人がチームを組むきっかけになったというタンゴの楽曲『ジェラシー』など、様々なジャンルの曲が演奏され、ヴァイオリンの力強く凛とした響きと、クラシックギターの優しく繊細な旋律にうっとりと酔いしれていました。

ギターの小関さんは作・編曲家としても活動し、国内外から高い評価を受けています。小関さんの手にかかると、『太陽がいっぱい』で始まった演奏がいつのまにか『テイク・ファイヴ』『ミッション・インポッシブル』のテーマソングへと移り変わり、最後にまた『太陽がいっぱい』で終わる、なんて楽しくてぜいたくな音楽が生まれます。さらには『きよしのズンドコ節』までヴァイオリンとクラシックギター用に編曲されていて、お客様は驚きつつも手拍子を叩きながら一味違うズンドコ節を楽しんでいました。
ギター奏者が出演する復興コンサートは男性の来場が多いように思われますが、今日もいつもより多くの男性にいらしていただきました。ギターなら若い頃かじったよ、と仰る男性は多いので、特に身近な楽器なのかもしれませんね。ソロで『禁じられた遊び』を演奏する小関さんの指使いに注意を向ける男性もいたようで、小関さんは終演後に「熱い視線を感じました」と笑っていました。

コンサート後半、秋田出身の駒込さんが「私のふるさとの曲です」と紹介したのは『浜辺の歌』でした。今日ご出演いただいたお二人には気仙沼地方を始め、多くの復興コンサートにご出演いただいていますが、そうした活動のなかでは「この曲は演奏してもいいだろうか」と悩むこともたくさんあったそうです。この『浜辺の歌』もそんな1曲でしたが、この頃になってお客様の海に対する気持ちに変化が感じられるようになったので、今日のプログラムに加えたそうです。
駒込さんが「よろしければ一緒に歌ってください」と呼びかけてから演奏を始めると、驚くほど大きな、そして優しい響きの歌声が会場を満たしました。ゆったりとした調べに合わせて歌うみなさんの脳裏には、思い出の海のどんな風景が浮かんでいたでしょうか。曲が終わり、温かい拍手が起こるなか、目元にハンカチを押し当てる男性の姿がありました。

ほかにも『ロンドンデリーの歌』や『明日に架ける橋』、さらに小関さんが編曲した『花は咲く』など、たっぷり10曲が演奏されました。曲の合間に繰り広げられる駒込さんと小関さんの掛け合いに何度も笑いが起こり、みなさん大満足の様子です。
アンコールに応えて演奏された『情熱大陸』にもノリノリの手拍子で参加し、曲が終わると盛大な拍手と「ブラボー!」の声が贈られました。

 

 

昨年度と違い、今年度のメモリアルコンサートは偶数月11日に開催します。次回の開催予定日は8月11日(日)です。すっかり真夏の気温になっているかと思いますが、よろしければ足をお運びくださいね。