お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_9月

2019.9.20

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

今日は彼岸の入り。暑さ寒さも彼岸までという言葉通り、最近は過ごしやすい日が続いています。今日は晴れ間がのぞくと多少の蒸し暑さが感じられましたが、一カ月前の気温を思えばあまり気になりません。吹き抜ける風はすっかり秋の風です。
8月はお休みだったので、「うたカフェ」の開催はひと月ぶり。みなさん今日を待ちかねていた様子で、ずいぶん早くから集まってくれました。ときおり「◯◯さん、久しぶり!」「一か月ぶりだね」という会話も聴こえ、うたカフェの場がみなさんのコミュニケーションの機会になっていることがうかがえます。

音楽リーダーを務める仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノの富樫範子さんもひと月ぶりの再会に嬉しそうな様子です。松本さんが「先月はお休みだったので寂しくて寂しくて」と挨拶すると、あちこちから「私も~」と返事がありました。軽い体操で体をほぐしたら、さっそく歌っていきましょう!

今日の課題曲は『美しき天然』『ここに幸あり』『ちいさい秋みつけた』『知床旅情』の4曲です。歌詞に「鳥」が出てくる曲を選んだそうで、歌う前に各曲の鳥が出てくる部分をピックアップしてみました。なるほど、と頷く参加者に岩瀬さんがぽつり「”鳥”を”とり”出してみました」 おあとがよろしいようで。
最初に歌ったのは『美しき天然』です。曲名だけではほとんどの人が分からなかったようですが、冒頭の部分を岩瀬さんが歌うと「あ、この曲!」と気付いた方がたくさんいました。サーカスやチンドン屋の定番曲として演奏されていた曲だったそうなので、メロディは耳に残っている方が多いようですね。
ただ、歌詞をつけて歌うのは初めてだったのか、とにかく「歌っている」だけの状態に。久しぶりのうたカフェということもあってか顔も体も何となく強張っているみなさんに、岩瀬さんは「歌詞に描かれた美しい情景を思い浮かべながら歌いましょう」とアドバイスしました。『美しき天然』というタイトルの通り、この曲は雄大な自然の美しさを讃えています。その光景を脳裏に浮かべながら歌うと、自然と声が伸びやかに響くようでした。この曲では鳥の声や滝の音、波の音を「天然の音楽」と讃えていますが、それらをイメージさせるピアノの音も素敵なんです。歌わずに富樫さんのピアノに耳を傾けてみると、曲のイメージがよりいっそう膨らむようですね。
次に歌った『ここに幸あり』では、ご存知ですか?という岩瀬さんの問いかけに力強く頷いたみなさん、実に大きな声で歌ってくれました。「顔が変わりましたね」という岩瀬さんの言葉に、思わず笑い声が上がります。

3曲目は『ちいさい秋みつけた』です。もちろんみなさん歌い慣れた曲なので、松本さんは歌い方にひと工夫。参加者を3つのグループに分けて、冒頭の ♪誰かさんが(×3回)の部分と最後の ♪ちいさい秋(×3回)の部分で歌う順番を決めて歌ってみました。よく知っている曲でも、こうしたチャレンジ要素が入るとちょっと混乱しますね。それでも松本さんの身振り手振りを交えた指示のおかげもあって、しっかり歌い切ることができました。
最後に歌ったのは『知床旅情』でした。この曲は歌い手や楽譜によって歌詞や歌のリズムが違っていることがあります。歌詞を朗読してみて、「ここってこういう歌詞だっけ?」とご自分の記憶と照らし合わせて首を傾げる人もいました。そうした違いを「どれかが正解で、どれかが間違っているわけではないんです」という岩瀬さん。続く「自分が歌いやすい歌詞とリズムで歌っていいです!」という一言で自信をつけ、みなさんお好きな歌い方でのびのびと歌っていました。きっちり楽譜どおりに歌うべきときもありますが、うたカフェでは楽しく歌えることが一番ですから、大らかにまいりましょう。

 

 

たっぷり歌って喉も渇いたことでしょう、お待ちかねのコーヒータイムです。「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんが淹れてくれたコーヒーは、ひと月ぶりとあっておいしさもひとしおです。コーヒー豆を購入した女性は「本当においしい、よそとは全然違うのよね」と熱く語り、幸せそうにカップを傾けていました。

さて、コーヒーをお供に楽しむミニコンサートの時間です。1曲目は岩瀬さんが『ちんから峠』を歌ってくれました。♪ちんからホイ の軽快なリズムで、峠を進む馬や遊びまわる子どもをあたたかく描写した曲です。膝を叩いてリズムをとりながら、ニコニコして聴いている方もいました。
続いて松本さん・岩瀬さんによる二重唱で『渡り鳥の別れの歌』。冬を迎えて景色がすっかり寂しくなり、再び遠くへ旅立たなければならないことを嘆く渡り鳥の気持ちを歌った曲で、お二人のハーモニーがどこか物悲しさを感じさせる旋律を奏でていました。
最後は、9日後に仙台オペラ協会の本公演『メリー・ウィドウ』で主役を務める松本さんが、劇中で歌う『ヴィリアの歌』を披露してくれました。本番より一足早い演奏に会場が沸きましたが、松本さんが真剣な表情で歌い出すとその歌声に惹きつけられ、一転して水を打ったように静かになりました。ある人は本番の舞台さながらに動きをつけながら歌う松本さんを目で追い、またある人はじっと目を閉じて部屋いっぱいに響く歌声を堪能していました。
歌が終わると、一瞬の間のあとで大きな拍手が起こりました。みなさんは実に感じ入った様子で、口々に「素晴らしい!」「ぜいたくだねぇ」と語っていました。素敵な時間を本当にありがとうございました。

 

 

お久しぶりのうたカフェでしたが、今回も大盛況のうちに終わりました。帰りがけに「また楽しみができたわ」と声をかけていただき感無量です。10月のうたカフェは1週遅れて第4金曜日、25日に開催しますので、どうぞお出かけくださいね。もちろん、初めましての方も大歓迎です!みなさんのご参加をお待ちしております!