お知らせ

メモリアルコンサートvol.25

2019.12.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度も
偶数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市/共催=せんだい3.11メモリアル交流館)

今年最後メモリアルコンサートが開かれた今日の空はすっきりと晴れ渡り、12月とは思えないほど暖かい一日となりました。そんな陽気に誘われてか、たくさんのお客様にお集まりいただきました。回数を重ねたことで常連さんが増えてきたメモリアルコンサートですが、今日は初めての方が多かったように感じます。
本日ご出演いただくのは、ソプラノ佐藤瑛利子さん、フルート櫻田朗歩さん、ピアノ我妻郁さんです。華やかなドレス姿で登場した3人は、さっそくサティの『あなたが欲しい』を演奏。暖かな冬の午後、楽しいコンサートが始まりました。2曲目の『アヴェ・マリア』が始まると、通りすがりの外国人男性が足を止めて聴き入っていました。

 

3曲目はオペラ「ホフマン物語」からの1曲、『森の小鳥は憧れを歌う』が披露されました。これは歌う人形”オランピア”によるアリアです。「私は今からぜんまい仕掛けの人形です」と言って歌い出した佐藤さんは、手を上げ下げしたり、カクカクと体を傾けたりと、人形になりきって歌いました。コミカルな動きと歌声でぜんまいが切れた人形の動きを表現するシーンでは、客席からもクスクスと笑い声が聞こえます。がっくりとうなだれてしまった人形のぜんまいを櫻田さんがフルートの音で巻いてあげると、無事に人形は復活し、再び歌い始めました。

震災当時大学生だった櫻田さんは、東京から帰省しているときに地震に遭いました。3月末に東京でご自分の師匠にあたる方のコンサートがあった櫻田さんは、仙台を離れていいのか迷ったものの、家族に背中を押されて東京に戻りました。そのコンサートを聴いて「生きているからこそ今日の素晴らしい演奏が聴けたんだ」ということに感動し、頂いた命を大切に、これからも音楽を続けていこう、と決心したそうです。
そんな櫻田さんが演奏してくれたのは、ドビュッシーの『夢』でした。ゆったりとした気持ちで聴いてくださいね、という櫻田さんの言葉にならうように、みなさんリラックスした様子で繊細な調べを味わっていたようでした。

続いては日本語の歌を、ということで、西条八十作詞『お菓子と娘』・北原白秋作詞『ペチカ』の2曲が歌われました。お菓子が好きな巴里娘(ぱりむすめ)の可愛らしい日常や、雪の夜に”ペチカ”という暖炉を囲む情景を歌う佐藤さんの歌声が会場に優しく響きました。
また、みなさんにも歌ってもらおうということで『雪の降るまちを』を全員で歌いました。音程の幅が広くなかなか難しい曲ですが、みなさん驚くほど堂々とした歌いっぷり!とあるご婦人は、かけていたマスクを外して気持ちよさそうに歌声を響かせていました。会場にいたメモリアル交流館のスタッフも「すごく大きな声でしたねぇ」とびっくりしていました。素晴らしい歌声に、演奏家の3人からも惜しみない拍手が贈られました。

 

曲の合間にマイクをとった我妻さんは、まず会場のみなさんに向かって「お楽しみいただけていますか?」と質問。客席からは返事の代わりに拍手が起こり、我妻さんは嬉しそうに頷いていました。震災後、復興支援のコンサートで演奏する機会があったという我妻さんは、音楽に耳を傾けるお客様の楽しそうな様子を見て「音楽があるところには笑顔が集まるんだなぁ」と感じ、これからも何かを伝えられる演奏をしていきたいと思ったそうです。

明るく爽やかな曲調で、未来への希望を感じさせてくれるような『風笛』を櫻田さんが演奏したあとは、佐藤さんがデラックア作曲の『ヴィラネル』を歌いました。これは佐藤さんが音大受験の際に歌った曲で、それはまさしく震災があった2011年3月のことだったそうです。受験の直前に手術を経験していた佐藤さんは、震災のこともあって「自分はこれから歌えるんだろうか、歌っていいんだろうか」と悩んだそうですが、地震から2~3日後にラジオから流れてきたチェロの演奏を聴いたことで、これからも歌っていきたいと思いを新たにしたといいます。そういった思いのこもった佐藤さんの演奏を受け止めた客席からは、暖かい拍手が沸き起こりました。
12月も上旬を過ぎ、クリスマスも間近ということでクリスマスメドレーも登場しました。クリスマスを一番楽しみにしているのは子どもたちでしょうが、クリスマスソングを耳にすると、大人でもうきうきしてきます。『あわてんぼうのサンタクロース』や『ジングル・ベル』、『赤鼻のトナカイ』といった定番のクリスマスソングをたっぷり楽しめるメドレーを、みなさん体を揺らしながら楽しんでいました。

曲が終わると、すっかりコンサートに慣れた常連さんから「アンコール!」の声が飛び出します。それを受けて「実はご用意しています」と笑った佐藤さんが『アメイジング・グレース』の曲名を発表すると、終演間際に会場を訪れたお客様がぱっと顔を輝かせていました。
ピアノとフルートの旋律、そして豊かに響く歌声が静まりかえった会場に響き、多くの人がじっと目を閉じて聴き
入っていました。
今年も様々な災害が各地を襲い、不自由な生活を余儀なくされたまま年を越そうとしている方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々が一日でも早く安心して暮らせるように、そしてもうすぐやってくる新しい年が穏やかなものとなるように。そんな願いと祈りが、メモリアルコンサートという場に満ちていたように感じられました。