お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_1月

2020.1.17

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

年が明けて最初のうたカフェは、どこか待ちわびた様子で集会所にやってきたみなさんと「今年もよろしく」のご挨拶を交わすことからスタートしました。今年も楽しく元気に歌っていきましょう。
今年も音楽リーダーを務めてくださるのは、仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さん、岩瀬りゅう子さん、ピアノ富樫範子さんのお三方。まずは軽い準備運動をして、お正月の間にかたくなった体をほぐしていきました。

今回は新春特大号ということで、プログラムは盛りに盛った全9曲。選曲した岩瀬さん曰く、今回のテーマは「食」だそうで、曲中には何かしら食べ物が出てきます。
さて本日の1曲目は『早口ことばのうた』。食べ物がメインテーマではありませんが、岩瀬さんがぜひみんなで歌いたい、と選んだそうです。「最初に”なま麦 なま米 なま卵”が出てくるので、これも食べ物の歌ということで」という岩瀬さんに続いてさっそく歌ってみました。この曲に登場する早口言葉は「なま麦~」のほかに、「交響曲・歌曲・協奏曲」と「消防車・清掃車・散水車」の全部で3つ。その部分に差し掛かると、みなさん必死の形相で口を動かしていました。お正月が過ぎてぼんやりしがちなこの時期に、ちょうどいい頭の体操になりそうです。
今年は子年ということで、『ずいずいずっころばし』も歌いました。この歌を歌いながら指遊びをした経験がある人は多いと思いますが、今日は鬼役の松本さんが部屋中を移動して参加者の”茶壺”に指を入れていきました。曲が終わると、松本さんから「意外と大変でした・・・」との呟きが聞こえたので、みなさん思わず吹き出してしまいました。
『赤い鳥小鳥』は、北原白秋の”赤い鳥が赤いのは赤い実を食べたから、白い鳥が白いのは白い実を食べたから”、という可愛らしい発想の詩に、成田為三が曲をつけたものです。とても短い曲なのであっというまに歌い終わったところで、岩瀬さんは「鳥が食べる実には、他に何色の実がありますか?」と質問しました。黄色や黒、オレンジといった色名が出てくると、「じゃあ次はその色で歌いましょう!」と田子西バージョンの『赤い鳥小鳥』に挑戦しました。字数の多いオレンジはちょっと大変そうでしたが、みなさん上手に歌えていましたよ。

プログラムにはヤギが届いた手紙を食べてしまう『やぎさんゆうびん』も入っていました。岩瀬さんは「紙を食べているから」という理由で選んだそうですが、松本さんが「1月におすすめの歌」をネットで調べたところ、1月は年賀状のやり取りがあるからという理由で『やぎさんゆうびん』が出てきたそうです。このことは岩瀬さんには伝えていなかったそうで、偶然の一致に参加者からは驚きの声が上がりました。
実際に歌ってみると、ユーモラスな歌詞と明るいメロディのためか、みなさんとっても可愛らしく歌ってくれました。するとそれを聴いていた松本さんは「私だったらこんなに可愛く歌わないです」と一言。どういうことかしら、と首をかしげる参加者に、「私だったら”すっごくめんどくさいけど、しかたないから手紙書くか~”って感じで歌います」と答えたので、どっと笑いが起きました。同じ曲でも色んなとらえかた、歌い方があるものですね。
最後に歌った『トマト』は、今日歌った曲の中では「知らない曲」と答えた方が一番多かった曲です。とはいえ1分足らずで歌い終わってしまうほど短い曲なので、すぐに歌えるようになりました。岩瀬さんは、歌詞の中でトマトの実が成長とともに色を変えていく様子を”あおいふく・あかいふく”と表現していることに触れ、「ここぞというときに真っ赤な服で気持ちを盛り上げるのもいいですね」と話しました。そういう服を何というんでしたっけ、と参加者に尋ねる岩瀬さん。言いたかったのは「勝負服」だったようですが、最前列の女性から「勝負下着」という答えが飛び出したので、室内には今日一番の笑い声があふれました。

他にも『アイスクリームの歌』や『かわいい魚屋さん』など、食べ物にまつわる曲をたくさん歌いました。「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんが淹れてくれるコーヒーは、今年も歌い疲れたみなさんの喉をおいしく癒してくれます。
お待ちかねのミニコンサート、まず最初に松本さんと岩瀬さんのお二人で『ソレアード~子供たちが生まれる時~』を歌ってくれました。未来からきた天使である子どもたちが、争いや憎しみの終わりを告げ、やすらぎに満ちた世界を連れてきてくれると歌う曲です。せっかく新たな1年が始まったにもかかわらず、世界各地で不穏なニュースが続く日々の中で、その歌はすぅっと胸にしみこんでくるようでした。曲が終わると、ある方は握りしめていたマグカップを脇に置き、そっと目元を拭っていました。
2曲目は松本さんがフランツ・レハールのオペレッタ「ジュディエッタ」から『私の唇は熱い口づけをする』を披露しました。このオペレッタの台本には<ジュディエッタはカスタネットを叩きながら歌う>というト書きがあるそうで、松本さんはそのト書きのとおりカスタネットを両手に携えて登場。部屋いっぱいに響き渡るような歌声はもちろんのこと、フラメンコのダンサーのように踊りながら見事にカスタネットを鳴らす松本さんにみなさん釘づけになっていました。曲が終わると大きな拍手が沸き起こり、新年最初のうたカフェは大盛況のうちに幕を下ろしました。

 

参加者は興奮冷めやらぬ様子で、口々に感想を語り合いながら集会所を後にしました。その中のお一人が「今年もうたカフェで楽しく頑張れそう!」と笑顔で言ってくれたのが印象的でした。今年もみなさんと楽しく歌っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!