お知らせ

「ほのぼの新春コンサート」いわきツアー④久之浜へ

2020.1.15

伊達LOW Strings(vc.吉岡知広さん、cb.名和俊さん/仙台フィル)との、新春いわきツアー最後の会場は、午前中の四倉から北へ10分ほど行った海沿いの町・久之浜にある、久之浜東団地集会所です。

かつては、漁業・農業ともに盛んで、映画館もある賑やかな町だったそう。東日本大震災の津波により元の中心部が壊滅的な被害を受け、工場跡地に公営住宅が、山を切り崩した高台に戸建ての防災集団移転団地が作られました。一昨年9月に、別ユニットで伺って以来の訪問。伊達LOWのお二人とは初めての訪問です。また、台風19号の被害も大きくボランティアセンターも開設され、未だにお忙しいなかを、お繋ぎいただいたいわき社会福祉協議会の根本さん、本間さんが掛けつけてくださいました。コンサートの始まる前にあたたかいお茶を用意してくださり、みなさんに飲みながらお待ちいただきました。

南北に隣り合う町で雪が降っていても、ここだけは降らない、というほど温暖な気候の久之浜。夏も、海からの風が心地よく吹き、暑すぎるというこがあまりない、暮らしやすい土地だそうで、震災の後もできれば離れずにここに残りたいという方が多かったのだそうです。とはいえ、公営住宅の高齢化率は非常に高く、引き籠もりがちにならないようお互いに見守り合いを大事にされているとのこと。とはいえ、湯本高校のフラダンス部が来てくれて以来、こうしたコンサートは随分久しぶりとのことでした。

「春の海」に続いて演奏されたのは、コントラバスの名和さん独奏によるバッハ作曲「無伴奏チェロ組曲第1番」より「アルマンド」。大きな大きなコントラバス1台だけで演奏される、というだけでも、みなさん少し驚いた様子。優雅に、でも前を向いてゆったりと歩くように演奏される舞曲が、名和さんの美しい音色で、軽やかに演奏されました。楽器紹介では、「弓にも、作った職人さんの名前が、持ち手の部分に彫ってあるんですよ」といったことや、弦の素材が羊の腸を撚ったガットから現代ではチタニウムという希少金属に変わっていることも教えていただきました。シネマメドレーでは、「第三の男」のテーマや「ゴッドファーザー~愛のテーマ」などが演奏され、自治会長さんも「懐かしいなぁ」と呟きながら聴いてくださっていました。

弾むような伴奏が楽しい「北風小僧の寒太郎」は、1975年以降、堺正章さんや、北島三郎さんが唄い、繰り返しNHK「みんなのうた」で放映されている懐かしい歌。アンコール「男はつらいよ」では、最後の会場となるこちらで初めて、名和さんが寅さんになりきってセリフに挑戦!楽し気な調子に誘われて、みなさん手拍子で参加。小正月を迎えたこの日、「新春ほのぼのコンサート」に相応しい終演となりました。終わった後も、名残惜しそうに楽器について質問されたり、奏法についてお聞きになる方がいたり。また直接「とっても楽しかったよ!」と笑顔で声をかけていただき、演奏者のお二人もスタッフも、ほっとしました。

伊達LOW Stringsといわきを訪ねるのは、今回で4度目。その間、プライベートでも様々な変化があった吉岡さん、1年間のベルリン留学を挟んだ名和さん。最初に訪ねた頃には想像もできなかった日常が、今目の前にあります。また、いわきの皆さんにとっても、特に原発事故の影響で故郷を離れざるを得なかったみなさんには、今も、先が見えないままであることには変わりません。「今日は来て良かった~」「とっても楽しかった!」今日、そして明日を元気に過ごせるように、せめてそんな楽しいひとときをお届けできたことが、本当に嬉しく、また、またお会いできましたことが本当にありがたく思いました。お忙しいスケジュールの中、ご参加いただいた伊達LOW Stringsのお二人とも、ここで一旦お別れです。

本公演を含むいわき市内4公演は、(株)菓匠三全様の助成をいただいて開催することができました。心より御礼申し上げます。