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「ほのぼの新春コンサート」いわきツアー③四倉へ

2020.1.15

伊達LOW Strings(vc.吉岡知広さん、cb.名和俊さん/仙台フィル)とのいわき新春ツアー2日目。午前中は、雨と風が吹き付けるお天気となりました。いわき市の中心地・平から車で30分ほど北上したいわき市四倉町にある、富岡町生活復興支援センターいわき四倉サロンに伺います。

四倉サロンへ伺うのはこれが3回目。いつも賑やかだったスタッフ陣が、今年度からは3人と少なくなりましたが、引き続いていらっしゃるみなさんの笑顔にで迎えられて、伊達LOWのお二人もどこかほっとした様子です。荒れた天気のせいもあってか、例年より少ない10名ほどのお客様となりました。その分、アットホームな雰囲気で昨日までよりも、演奏者とお客様の距離が近く感じられます。

四倉サロンリーダーの鴫原さんのお話しにつづいて、コンサートが始まりました。「春の海」につづいて、「プチ・スケルッツォ」が演奏された後は、楽器紹介コーナー。弓が馬の尻尾で出来ている、というお話しをしながら、弓の根本をくるくると回してネジをはずすと…、正に、ふわりと白い、馬の尻尾が表れました。「せっかく人数も少ないので…近くで楽器、見ていただきましょうか」と、吉岡さんが前に出てきてくださる場面も。また、その楽器がいつ、どこで、誰の手によって作られたかが印されたラベルが、楽器の内側に貼られているのだそうです。f字孔(エフじこう)と呼ばれる穴から覗くと、そのラベルが見えるはず…?というわけで覗かせていただいた方も。一方、名和さんの楽器にはこのラベルは貼られていませんが、それでも、250年前に作られたことが分かっているそう。目の前にある楽器が、そんなにも遠く時を超え、引き継がれてきた楽器なのだと聞いて、皆さん驚いた様子でした。客席からは「この楽器や弓は、おいくらくらいするの?」といった質問も。そして、名和さんのコントラバスの先っぽについているのは、なんと獅子=ライオンのお顔。「これは…ただの飾りです!」に、どっと笑いが起きました。

この日のソロコーナーは、バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」から「プレリュード」を、チェロの吉岡さんではなく、コントラバスの名和さんが独奏!「本来は、もちろんチェロで演奏される曲ですが、コントラバス奏者にとっても、バッハの作品には勉強すべきことがたくさん詰まっているんです。なので、今日はコントラバスで、バッハを演奏してみたいと思います」。大きな楽器の太い弦の上を、名和さんの細くて長い指が素早く行き来するのに、ついつい見とれてしまう観客のみなさん。普段は、オーケストラや室内楽で、音楽を下から支える役割がほとんどのコントラバスが、名和さんの手にかかって旋律を奏でると、こんなにもゆったりと、優しく包み込んでくれるような音色で歌う楽器だとは、みなさんも初めての体験だったのではないでしょうか。

後半には、「ベッリーニの思い出」という7分ほど掛かる大曲を。「夢遊病の女」や「清教徒」などが知られるイタリアのオペラ作曲家、ベッリーニのオペラから、数々の美しいアリアを抜粋し、チェロ奏者であったゴルターマンが作曲(編曲)した作品で、初めから、チェロとコントラバス、という組合せのために書かれた珍しい曲です。元のオペラは残念ながら知らなくとも、技巧的にも難しい、二人で息を合わせてとても速く弾かれる部分があったり、歌声が聴こえてくるような優しい旋律があったりと、充分に楽しめました。またお二人の真剣さに、聴いているこちらもオペラの舞台上に引きこまれたような錯覚を起こしました。

小さな会場だからこそ、密度の濃いコンサートとなりました。終わると、お母さんたちが名残惜しそうにお二人に話しかけたり、中には、昨年聴きにいらした時に一緒に撮った写真を、携帯電話から見せてくれたり…実はみなさん、今年も写真を撮ってほしいのに、恥ずかしがってなかなかそれが言い出せないのでした。一人が、えいっ!と勇気を出して写真をお願いすると、続いて私も!という方が続々と…。なんとも賑やか、かつ和やかな時間となりました。「また、いらしてくださいね!」そんな声をいただき、あんなに強く吹き付けていた風も、出発の頃には漸く止んで、最後の会場に向かいました。

本公演を含むいわき市内4公演は、(株)菓匠三全様の助成をいただいて開催することができました。心より御礼申し上げます。