お知らせ

「ほのぼの新春コンサート」いわきツアー➀平へ

2020.1.14

2020年、最初の復興コンサートは、福島県いわき市からスタート。出演は、伊達LOW Strings。仙台フィル首席チェロ奏者の吉岡知広さんと、同副首席コントラバス奏者の名和俊さんによる、結成6年目のユニットです。チェロとコントラバスという、普段は縁の下の力持ちとしてオーケストラを支える2つの楽器だけで、クラシックからビートルズまで披露してくださるお二人。楽しいお話しと爽やかさも相まって「今年も楽しみにお待ちしています!」の声が届いていました。

全国的に暖冬と言われる今年。毎年この時期に訪れているいわきは、例年以上に暖かく、特に初日は無意識のうちに上着を脱いでしまうほど。おだやかな青空の下でのコンサートです。

一か所目は、富岡町生活復興支援センターいわき平交流サロン。富岡町から6,000人余りの方が避難・移住されたいわき市には、富岡町役場いわき支所や、富岡町社会福祉協議会いわき支所と、同じ敷地内にあります。今年度から、活動規模が縮小となり、スタッフは少なく、開館時間も短くなりました。とはいえ、体操や絵手紙教室など様々な学びあい、仲間づくりの催しが開催されています。

震災後5年を過ぎた頃から、ボランティアの訪問は減る一方ということもあってか、予想以上に多くの方がお出かけくださいました。これまで何回か来たよ、という方も、また今回初めていらしたという方も。イメージカラーを身に付けたお二人が登場し、まず聴こえてきたのは、チェロとコントラバスによる「春の海」。「新年、あけましておめでとうございます!」元気の良い挨拶に続いて、まずはクラシックを数曲。こんなに近い距離で、マイクを使わなくとも想像以上に豊かな音量、美しいお二人の音色に、みなさん驚かれた様子です。

その後、楽器の紹介や“オーケストラ楽器別性格診断”などの新コーナーも登場して、たくさんの笑い声が溢れました。またシネマメドレーが演奏された後には、なんという映画の主題歌だったか?答え合わせの時間に。「う~ん…曲は聞いた事あるんだけど!」「題名が出てこないのよねぇ~」という方が続出。元気よく手を挙げてくださった男性は、残念ながら全曲ハズレ。けれども周りの女性陣から「ゴッドファーザー!」と助け舟。正解!メドレーはビールのCMでも有名な「第三の男」、様々な映画の挿入歌になった「Time to say good-bye」、最後は「Stand by me」と、懐かしい数々の映画を音楽で辿るコーナーとなりました。

この平交流サロンではいつも、アンコールとして富岡町民歌「富岡わがまち」を歌います。コーラスをされている方も多く、さすがにまとまった歌声で、毎日正午に町に流れていたという町民歌を聴かせてくださいました。原発事故後は、2番を省略して1,3番だけが歌われるようになりました。2番の歌詞に「新しい技術(わざ)」と原発のことが書かれているからです。

コンサート終演後、交流サロンリーダーの清水さんからのお話しに、この2番の歌詞が披露されました。「この、新しい技術によって、事故が起き、私たちは帰れなくなってしまいました。あの時から今まで、私たちはずーっと頑張っている、と思います。いつまで頑張れば終わり、と分かっていればまた違うと思うのです。けれども、私たちはいつまで頑張れば終わり、ということがない。でも、今日こんなに素晴らしい演奏を聴くことができたのは、その頑張っているご褒美だと思います。」そんな風に言っていただきました。

平交流サロンも、私たちの復興センターも、いつまで活動が続けられるかはわかりませんし、この活動が必要なくなることが、本当の復興なのかもしれません。ですが、まだまだ様々な選択に迫られながら、心をすり減らさなければならない時も多いのが、避難されている皆さんです。ひととき、この時だけでも、楽しく、過ごしていただけていたらいいな、と心から思いました。

本公演を含むいわき市内4公演は、(株)菓匠三全様の助成をいただいて開催することができました。心より御礼申し上げます。