お知らせ

釜石➀平田集会所「ハロウィンコンサート」へ

2019.10.30

東日本の広い範囲を襲った台風19号の爪痕があちこちに残る中、山形在住のトリオ・クルールのみなさんと、岩手県釜石市を訪問しました。メンバーは、ファゴット髙橋あけみさん、フルート半田水季さん、ピアノ大野木はるかさんです。

トリオ・クルールのみなさんとは、昨年も釜石を訪れました。その際に伺った、市街地から10分ほど沿岸を南下したところにある平田(へいた)地区の集会所(公民館)。昨年は、春に開館したばかり、また嵩上げが終わり、再建された家が少しずつ増えてきたといった時期で、まだ街灯がないにも関わらず、公民館が再開して初めての夜公演。どれくらい人が来るかは分からないとの心配を他所に、25名以上の方が、手に手に懐中電灯を持って出かけてくださったのでした。リハーサルのはじめに「あ~、ここに音楽が鳴ったのは、今日が初めてです!」と言われた、当時のC館長の笑顔が忘れられません。そんな平田集会所に、また機会があったらぜひ、とお声掛けいただきました。今回の訪問先のうち4カ所の公民館は、昨年も大変お世話になった平田公民館のOさんが、呼び掛けや取りまとめをしてくださいました。心より感謝申し上げます。

朝、開館時間に合わせて到着すると、地域のみなさんがちょうどラジオ体操をされていました。昨年はなかった電信柱や街灯もあります。そして入口には、すてきなイラスト入りの看板も。楽しみにしてくださっていたお気持ちが伝わってきました。

開演の頃には30名近い地域の方が集まってくださいました。コンサートの始めは「虹の彼方に」。ファゴットの髙橋さんが「昨年に引き続き、また、ここに来ることができて、こうしてみなさんにお会いすることができて、今日は本当に嬉しいです!」と話すと、聞いていらしたみなさんの表情も少し緩みました。それぞれの楽器を紹介しながらフルートで「異邦人」、ピアノで「ムーンリバー」を。

そしてファゴットで演奏した「川の流れのように」では、スペシャルゲストをお迎えしました。写真のこの方は、普段のお姿は男性であるKさん。女形の華やかなお着物とお化粧で、創作舞踊を踊られます。その踊り姿、立ち姿の艶やかなことと言ったら!女性以上に女性らしいのでは、と思われるほどで、姿勢の良いこと、また、目線の持っていき方や、緩急の付け方、歌詞を身振り手振りで表す表現力と、とてもアマチュアとは思えませんでした!Kさんとは、昨年かまいしこども園に伺った際、お仕事の関係で付添いとしていらっしゃっていたのでした。終演後、実はこういうことをしているんです、と髙橋さんに話しかけてくださったのがきっかけでした。それにしても、まさかこれほどまでとは!地元の有名人ということで、住民のみなさんよりむしろ私達の方が驚かされてばかりでした。

みんなで歌おうのコーナーでは「ペチカ」をリクエストいただいて、「もみじ」「たき火」と一緒に歌いました。たき火も、今となっては消防車が飛んできてしまうため、迂闊にはできません…。ペチカもですが、もう今はない、暮らしのなかの風景をこうして歌で思い出す、というのも歌が伝える一つの役目なのかもしれません。ベートーヴェンの「トリオ」から第1楽章が、最後の曲となりました。ここまで次第に心身共に解れてきたところで、演奏者3名がこれまで以上に真剣な表情で取り組みます。本格的なクラシックの、5分近くあるベートーヴェンが。その演奏家同士の緊張感溢れる、言葉を介さないやりとりにこちらも吸い寄せられるようでした。

アンコールには「瀬戸の花嫁」を。みなさん大きな声で参加してくれました。再びKさんにもご参加いただき、沿岸部の海のお母さんたち、お父さんたちには身近に感じられる懐かしい一曲なのだな、と思いました。平田のみなさん、今年も盛り上げてくださり、ありがとうございました!ハロウィンの飴っこと共に、みなさんの笑顔をお見送りして次の会場に向かいました。Kさんとも、しばしお別れ。最後は、平田公民館のみなさんも一緒に、記念撮影です。またの機会がありますように!尚、この公演を含む釜石5公演は、令和元年度岩手県「被災者の参画による心の復興事業」の補助を受けて実施しました。