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釜石②唐丹公民館「来てけらっせん!とうにコンサート」

2019.10.30

平田公民館から車で10分ほど、長いトンネルを抜け南下したところにあるのが、釜石市唐丹(とうに)地区。現在は、この唐丹が大船渡市吉浜との境。昔は、平田までが南部藩、唐丹から南が仙台藩領でした。時代によって、境界が変わる、ということがあるのですね。そして旧仙台藩とお聞きして心なしか親近感を覚えてしまいました。

山形在住のトリオ・クルールと共に、釜石市内を巡るツアー2公演目は、唐丹公民館が会場です。3階建ての建物の、1階は公民館やお店、2,3階が災害公営住宅。リアス式海岸のこの辺りは海辺に平地はほとんどなく、唐丹も海岸線から国道45号を挟んで、狭い斜面に所狭しと家が建ち並びます。現在公民館がある場所も、津波により1mほど浸水。海面は、今は遥か下に見えるのですが…。集落は広い範囲に点在しており、徒歩で来られる方ばかりではないため、公民館行事の際には職員のみなさんが、車を出して迎えに行くこともあるそうです。コンビニも商店もほとんどない小さな地区は、不便な分、隣近所とのお付き合いがしっかりあって、助け合いながら、またこうした行事がある時にはみんなで誘い合って参加してくれます。この日は、偶然にも釜石市内の小学校研究授業。午前中で授業が終わって、午後を学童保育で過ごす小学生も、また児童館(保育所)の子どもたちも聴きに来てくれることになりました。集会室は、あっという間に満席です。

子どもたちの参加が決まってから、トリオ・クルールの皆さんは、子どもたちにも喜んでくれるようにと曲目を工夫してくれました。フルートの楽器紹介に続いて半田水季さんが吹いたのは「パプリカ」。「踊りたい人、いるかな?」と問いかけると、次々と子どもたちが登場。プロ顔負けのダンスに大人たちもびっくり。あっという間に、みんなを笑顔にしてくれました。

 

ファゴットの楽器紹介は、高橋あけみさんが、一度楽器をバラバラにしてから、段々に組み立てていく様子を、「線路は続くよどこまでも」を演奏しながら見せてくれます。バラバラになるの?!と驚きの表情は、最後の最後に、楽器のてっぺんから手が出てきて、またびっくり!

他にも「愛の喜び」や「恋のバカンス」を聴いていただいた後は、「瀬戸の花嫁」「もみじ」、そしてアンコールにはジブリ映画「となりのトトロ」から「さんぽ」を演奏し、子どもたちの可愛い合唱隊が登場しました。

コンサートは始まってしまうと、あっという間でした。短い時間でしたが、終わって廊下でお見送りをしていると、「今日コンサートがあると知って、タクシーで聴きに来たんです」という女性や、津波で一命を取り留めて、公民館の上の公営住宅に住んでいる、という男性は「ここに、サイン書いてもらえないかな?」と。子どもたちも、児童館までの道を並んで帰っていきました。数多い復興コンサートの中でも、子どもたちもご年配の方も一緒に、というのはなかなかない機会です。子どもたちの歌声に、大人が笑顔になり、その姿を見て子どもたちも安心したような表情で過ごすひととき。また、目の前で演奏される素敵な音楽に、じっと大人しくしながらもきらきらと目を輝かせていた子どもたちでした。まだ、山の手の方では、田んぼの畔が崩れたり、道路が陥没しているとのこと。そんな時期にも関わらず、たくさんの方にお集まりいただけたこと、本当に嬉しいひとときでした。尚、この公演を含む釜石5公演は、令和元年度岩手県「被災者の参画による心の復興事業」の補助を受けて実施しました。