お知らせ

大槌➀金澤地区生活改善センター「うたごえサロン」

2019.11.28

風がすっかり冷たく感じるようになりました。今回は、これまで何度か「復興コンサート」としてお伺いしていた岩手県大槌町へ、聴くだけではなく参加できる音楽会、また、住民さん同士の交流を深められるようなきっかけづくりを、と「うたごえサロン&ミニコンサート」をお届けすることになりました。

ご一緒いただくのは、盛岡在住の声楽家(アルト)谷地畝晶子(やちうね・しょうこ)さんと、二戸在住のピアノ奏者 阿部夕季恵さんです。谷地畝さんと阿部さんは、高校の同級生。同じく音楽を志し、東京でも学んだ後、ちょうど同じ時期に岩手に戻っていらしたのだそうです。谷地畝さんは、岩手大学や岩手県立大学でも教えながら、東京・仙台・岩手などで演奏活動をされています。

最初に訪問したのは、大槌町の中心部から車で20分ほど、一本道を山へ入ったところにある、金澤地区生活改善センターです。大槌町社会福祉協議会さんにご紹介いただき、民生委員さんが月に一度企画されている「金澤地区お茶っこの会」に併せて開催させていただきました。金澤地区は谷あいに長細く続く集落で、大槌川に沿ってわずかな平地に集落が点在しています。向かう道すがら人影はなく、うたごえサロンにも、本当に人が来てくださるのだろうか…と心配になりながらも、澄んだ空気に驚き、深呼吸をして会場に入りました。

開場時間を迎える頃には、既に30名近い方が、別室にお集まりでした。みなさんご家族に車で送られたり、お友達同士で乗せ合っていらしたり。開会のあいさつに続いて、今月お誕生日を迎える方に、お花のコサージュのプレゼントがありました。民生委員のSさんから「では、みなさんで『ハッピーバースデー』を歌いたいと思います」ということで、急遽、阿部さんにピアノで伴奏をつけていただきました。これにはみなさん、大喜び!お花を飾られた方は少し恥ずかしそうにされながらも、笑顔が素敵でした。

続いて、「歌声サロン」が始まりました。まずは、体をほぐすところから。ご年配の方が多かったので、ひとつひとつをゆっくりと。「天井を上に、押し上げるように、腕を伸ばしてみましょう。ゆっくり、ぐ~っと、そうそう!良い感じです!」谷地畝さんの声に励まされて、みなさん随分と身体が伸びていきます。発声練習では、腹式呼吸をすることで、お腹の周りがぐっと張る感覚を感じてみよう、と手をお腹に当てながら歌ってみました。もしかしたら、こんな合唱団のようなことをするのは、久しぶり、もしくは初めての方もいらっしゃったかもしれません。谷地畝さんが、実際にご自分の身体で、見本を見せながら説明してくれることもあって、見様見真似でみなさん挑戦です。こうして「たき火」や「証城寺の狸囃子」「冬景色」「見上げてごらん夜の星を」を歌いました。段々に、みなさんの表情も解れて、久しぶりに声を出すことにも、慣れていらした様子です。

そうしてすっかり身体がぽかぽかしてきたところで、一緒に歌うコーナーは終了。お茶で喉を潤して、ここからは谷地畝さん、阿部さんによるミニコンサートの時間です。

岩手縁の…ということで石川啄木作詞の「初恋」、そして元気の良い、また懐かしくもあるシューベルトの「鱒」はドイツ語で、最後はフランス語でオペラ「カルメン」から「ハバネラ」を聴かせてくださいました。にっこり笑顔でご指導くださっていた先ほどまでとは違い、それぞれ歌詞と音楽の世界観を深く掘り下げられた演奏と美しい声に、みなさん、すっかり聴き惚れていらしたようでした。また、その声量の豊かなことには驚かれていた様子が見て取れました。「第九」や「メサイア」など、オーケストラと声楽による楽曲の、ソリストを務められることも多い谷地畝さん。その、大らかで豊かな声色は、日本語も耳元までしっかりと届いてくる声でした。また「ハバネラ」の妖艶さには、先ほどまでとはまた違う雰囲気が。歌の世界を演じ分けるお二人の演奏に、時間を忘れたひとときでした。

大きな拍手をいただいて、アンコール代わりにみんなで「瀬戸の花嫁」を。なつかしい歌に、みなさん笑顔でご一緒してくださいました。

終演後は、朝から民生委員さん3人がご準備くださっていた昼食を、みんなでいただきました。カレーライスに、ニラ玉汁ももちろん手づくり、小鉢の和え物と、りんごも美味しくいただきました。今回の大槌町ツアーは、大槌町社協さん、それに槌音プロジェクトの臺さんにお世話になりました。ご協力、心より御礼申し上げます。また、この公演を含む大槌町4公演は、令和元年度岩手県「被災者の参画による心の復興事業」の補助を受けて実施しました。