お知らせ
大槌②県営屋敷前アパート集会所「うたごえサロン」
- 2019.11.28
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声楽家(アルト)の谷地畝晶子さん、ピアノの阿部夕季恵さんとの、岩手県大槌町「うたごえサロン」ツアー。2会場目は、大槌町内で最大の災害公営住宅、県営屋敷前アパートの集会所に伺いました。こちらは大槌川のほとりでもあり、津波浸水被害も大きかった旧大槌中学校跡地に隣接しています。3棟ある建物の1階部分は、全て駐車場で、2階より上が住居。1号棟の2階部分は、広く集会所として整備されています。
150戸に対し、現在は135世帯が暮らす公営住宅ですが、高齢化率も高く、またサロンやイベントに参加する方が、固定化してきていることが悩み、と自治会長Sさんや、役員Uさんに伺いました。チラシを作る際には、「お菓子も出ます!って大きく書いてみたらどうかしら?」「きっかけがないだけだと思うから、思いきって!参加してみませんか!と、大きく書いてみて!」とアドバイスをいただき、なるほど、と書き足してみました。演奏家が、アマチュアではなく、プロであることや、どんな歌を歌うのか具体的な曲名を、など、住民のみなさんの気持ちを動かす一言、というのを、分かっているようで、実は私たちは分かっていなかったのだな、と気付かされたやりとりでした。
果たして当日は?蓋を開けてみると、20名を超える方の参加がありました。始まってみると、アパートの一室でもあるアットホームな距離感で、またみなさん公営住宅の住民同士という、気心の知れたこともあってか、とてもあたたかな時間となりました。
「証城寺の狸囃子」を歌いながらのリズム体操は、難しくはないのですが…歌いながらだと、あれ?難しい…!でも、すぐにできなくたってよいのです。頭と身体の体操は、頭の中でも普段使わない部分をフル回転させているような感覚でした。
みなさんと一緒に歌ったのは「たき火」「冬景色」など。歌詞カードを手に、どうしてもうつむいて、猫背になってしまうことを、谷地畝さんにアドバイスされ、歌詞を持つ手を少し上にするだけで、なんとみなさん良い姿勢でしょう!不思議と声も、大きく、明るい声になりました。ちょっとした違いが、大きな変化に繋がることに驚きました。また、腹式呼吸の練習も。「普段寝ている時の呼吸が、実は、腹式呼吸なんです。みなさん無意識のうちに、実は腹式呼吸をしていらしたんです」。へぇ~!という顔のみなさん。そう聞くと、難しそうに感じていたものも、なんとなく出来そうな気分に。お腹に空気を充たして、外側に押し出す感じ、というのを練習してみました。「そうそう!そんな感じです!」誉めてもらえるのも、なんだか嬉しく次第に笑顔が増えていきます。
たのしい時間はあっという間に過ぎて、お茶タイムを挟んでミニコンサートへ。歌劇「カルメン」の中からの「ハバネラ」では、その舞台女優のような歌の迫力に、圧倒されました。これだけの近さでプロの方の演奏を聴くことは、みなさん、恐らく初めてだったのではないでしょうか。マイクも使わずにいるのに、こんなに豊かな声が出るの?と後から不思議がっていらした方も。
最後には「瀬戸の花嫁」をご一緒して、たのしい時間はお開きとなりました。帰りにお見送りをしていると「久しぶりになつかしい歌、歌ったわ~」「とっても楽しかったよ」「すばらしい歌声だねぇ~」と声をかけていただきました。特に一人暮らしの方には「歌ったり、大きな声を出したり、家に一人でいるときには、しないものねぇ」と。笑顔で帰られるみなさんに「また来てね」「楽しみにしてるからね」と言われ、ほっとしながらお別れをしました。
屋敷前アパートから道路を挟んで、源水川が流れ、バイカモが咲くほどにきれいな湧き水が湧き、天然記念物でもあるイトヨが泳いでいます。また、東側を流れる大槌川も、サケが遡上してくる川でもあります。ボランティアカメラマンの佐々木隆二さんが、いつの間にか、その美しい水面の様子を撮影してくださっていました。ここにも、東日本大震災では津波と共に泥が入りこみ、湧き水も埋まってしまったのではと多くの皆さんが心配されたそうです。再びこの美しい湧き水が戻ってきたこと、自然が本来持っている大きな大きな力を感じずにはいられません。
また、終演後、今回キーボードとアンプをお借りしている、槌音プロジェクトの臺さんに案内いただいて、大槌町に来るのは初めて、という谷地畝さん、阿部さんに、現在の大槌町を知っていただこうと出かけました。「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった蓬莱島は、冬の始まりを強烈に知らせる寒く強い風にあおられました。またその後も、中心街から半島部に抜けた地区へ。今となっては枯れ草の生える原っぱや窪地も、元は人々の暮らしがあった場所でした。想像しようにも想像のつかないまま、大槌町文化交流センターの震災伝承室へ。K館長のご案内のもと、写真と、町民の方々の実際の言葉とで紡いだスライドを見せていただきました。同じ岩手県に暮らしながらも、沿岸部にはこれまであまり縁がなかったというお二人。感じられたことは計り知れず「今回、来られて良かったです」と言われ、こちらとしても、今回のご縁に感謝をと思いました。