お知らせ

大槌③消防会館集会所・源水地区「うたごえサロン」

2019.11.29

盛岡の声楽家(アルト)谷地畝晶子さんと、二戸のピアニスト阿部夕季恵さんとの、岩手県大槌町「うたごえサロン」ツアー。2日目は、昨日伺った県営屋敷前アパートのすぐ隣りにある、大槌町消防会館集会所が会場です。

すぐ隣り、ではあるのですが、屋敷前アパートはアパートだけで150世帯と大所帯であり、大槌町内様々な地区からの転入者で構成されているため、町内会が独立して作られました。一方、その北側に位置する源水地区は、家の残った山の手の方もあれば、津波を受けた家を修繕して住み続ける方、家を失って新しく建てられた災害公営住宅に移った方、と、元々、この辺りの地区に暮らしていた方が多く、以前からのコミュニティーが維持されている地区でもあります。今回は「源水地区お茶っこサロン」に合わせての開催となりました。年齢幅が広く、お若い方からご年配の方までいつの間にか満席となっていました。

こちらでも、始めは体をほぐすことから。発声練習へと進むと、きれいな歌い慣れた声が聴こえてきます。自治会長でもあり、民生委員も務めるKさんは、実は地元の合唱団で長年活動していらしたおひとり。大変だった震災の年にも、定期演奏会の灯火を消さずに、こんなときだからこそと開催されたのだそうです。そのKさんの歌声に誘われるように、素敵な歌声があちらこちらから聴こえてきて驚きました。「証城寺の狸囃子」だけでなく、手遊びをしながら、体も頭も動かしながらもう一曲。隣りの方と組みになって挑戦する、あちこちから賑やかな声が聞こえてきました。子どもの頃以来、久しぶりだったのではないでしょうか?

みなさんで歌ったのは「たき火」や「冬景色」。いい声を出すために、と谷地畝さんからアドバイスをいただいたのは「お花や、夕ご飯など、いい匂いを嗅ぐときって、みなさんどんな風にされますか?」すると、みなさん口を閉じて、鼻から空気を一気に吸い込みました。「そうそう!そのときに、口の中が広く開いているのがわかりますか?そのまま声を出すと、響きのあるいい声で歌えますよ」そんなアドバイスを聞いて、以前のお茶っこサロンで作成したというラベンダースティックを、Kさんがみんなに配ってくれました。鼻の先に持っていくと、ラベンダーのいい香りが。自然と「鼻から息をたくさん吸う」「のどの奥が拡がる」のが体感できました。これは、いい案でした!そうして再度歌ってみると、さっきまでよりも大人っぽい声での歌が聴こえてきました。

こじんまりとした会場で、谷地畝さん、阿部さんも、みなさんとお話しをしながらアットホームに会は進みました。お茶タイムの後には、ミニコンサートを…。美しい湧き水があったり、川に東西を挟まれたこの場所には、シューベルトの「鱒」がなんともぴったりでした。そして、天井の高い一部屋でもあり、谷地畝さんの伸びやかな声の豊かさに、みなさん「はぁ~」「すごいねぇ~」とため息吐息。「カルメン」の「ハバネラ」の声とピアノのアンサンブルの迫力にも、とても驚かれていた様子でした。

公演後は、みなさんと一緒にお弁当をいただきました。今の暮らしや、お好きな歌を伺ったりと、短い時間ではありましたがみなさんと交流を持つことができました。「また、開催されるのだったら、ぜひ参加したいです」「とっても楽しかったよ~」と声をかけていただき、再会を約束して会場を後にしました。この公演を含む大槌町4公演は、令和元年度岩手県「被災者の参画による心の復興事業」の補助を受けて実施しました。