お知らせ
郡山②富田団地4号棟「さくら咲くコンサート」
- 2020.2.25
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午前中の田村公民館に続いて、午後は郡山の北西部にある、富田団地4号棟に伺いました。富田団地は1~3号棟と4号棟が離れた場所に建てられ、自治会も4号棟だけで独立しています。ほとんどの方が富岡町の方。元気はつらつとした高齢者、また一人暮らしの方が多くお住まいです。お互いに声を掛け合って、認知症など、少し心配なことのある方もみんなで見守り合って生活されていらっしゃるそうです。4号棟の集会室は、アパートの1階中央部、それもエレベーターの真ん前にあり、人の集まりやすい配置です。こちらも、特定非営利活動法人みんぷくさんにご協力いただいての開催となりました、
こちら伺うのは「復興コンサート」では2回目。弦楽器の方とご一緒するのは初めてです。出演は午前中に続き、山形交響楽団からクラリネット本田有里恵さん、ヴィオラ首席奏者の山中保人さん、チェロ久良木夏海さんの3人。こちらでは参加が大人のみ、とのことで、田村公民館とは少しプログラムを替えてくださいました。「オー・シャンゼリゼ」から楽しく始まり、チャップリン「スマイル」、楽器紹介と続きます。音色の紹介をするのに、山中さんは、みなさんよくご存知の「知床旅情」を一節、弾いてくださいました。手を伸ばせば届きそうな距離で聴くそれぞれの楽器の音は「なんだか身体に、直接に伝わってくるみたいだるねぇ~」と皆さん驚かれた様子。特にチェロは楽器が大きい分、周りの空気が震えるのが、よく伝わってくる気がしました。その後で演奏された、ヴィオラとチェロによる、バルトークの「二つのヴァイオリンのための二重奏曲」では、東ヨーロッパ独特のリズムに、お二人の迫力あるアンサンブルがかっこよくて、どこか異国のお祭りに迷い込んだような気がしました。短い曲でしたが、演奏が終わると「ほ~」「すごいねぇ」と大きな拍手が起こりました。
その後は「日本の歌メドレー」や「川の流れのように」を一緒に歌っていただくコーナー。間もなく9年となる東日本大震災、3月11日を前に、福島のみなさんのこれまでの御苦労を想って、チェロの久良木さんがお話しされる場面もありました。当時、まだ東京にいた久良木さんは、震災があったことで山響のオーディションが延期となり、その後再び開催されたオーディションで、山響入団が決まったのだそうです。悪いこと良いことどちらも、こうして今日ここで皆さんにお会いできたことも、その後のすべては震災があったから、でもあることを、この場に来てとても感じていらしたようでした。
ここでも、最後は本田さんのご主人である作曲家・フルート奏者 荒川洋さんが、この編成のために作曲してくださった「クラリネット、ヴィオラとチェロのための狂詩曲」が演奏されました。やはりみなさん、つい数日前に作曲されたばかりの曲、ということに「すごいねぇ!」ととても驚いていらっしゃいました。演奏が始まると、3人の掛け合いにみるみる惹きこまれていきます。たった数日で、こんな風に曲を弾きこなしてしまう演奏家のみなさんにも、たくさんの拍手が送られました。また、離れた場所から、こちらを想って作曲してくださった荒川さんのお気持ちも、みなさんそれぞれに受け止めてくださっていたようでした。
終演後には、住民のみなさんとの交流会がありました。こうした「復興コンサート」のような機会に参加することも、山中さん、本田さんはこれまでなかったと言います。演奏をお聴きいただくだけでなく、こうした時間も本当に貴重な時間です。交流会の始めには、自治会・さくら会の会長であるNさんが、震災・原発事故からこの場所に至るまでをどこで、どう過ごしてきたか、この9年間を掻い摘んでお話ししてくださいました。その後、隣り合ったみなさんとそれぞれ、今日のコンサートのことや、避難に方々を転々とした時のこと、現在の故郷のお話しなどを聞かせてくださいました。短い時間でしたが、とてもアットホームな時間をありがとうございました!