お知らせ
〈文化庁芸術家派遣事業〉亘理町立荒浜小学校へ
- 2019.9.24
-
音楽の力による復興センター・東北は、
文化庁令和元年度文化芸術による子供育成総合事業〈東日本大震災復興支援対応〉を
受託する実行委員会の一員として、音楽プログラムをコーディネートしています。今年度も、文化庁「文化芸芸術による子供育成総合事業(芸術家の派遣事業)」が実施されることとなり、音楽の力による復興センター・東北のコーディネートする5つのプログラムの実施が始まりました。1校目は、亘理町立荒浜小学校。津波の被害の甚大だった地域ですが、小学校の周りには改修して住み続けていらっしゃる家や、新しい家が建ち並んでいます。全校児童は99名。100名を切ったのは、担当の先生がいらしてから今年度が初めてとのこと。子どもたちの減少には、残念ながら歯止めがかからないようです。とはいえ小規模校の良さを最大限に活かし、地域のみなさんとの交流が盛んです。今回のコンサートにも近隣住民のみなさんをお誘いして、一緒に楽しんでいただきました。出演は杜の弦楽四重奏団。メンバーはヴァイオリン叶千春さん、駒込綾さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さんです。
クラシックが続いた前半、児童のみなさんは、演奏者の指先や表情から目を離さずにじっと聴いてくれました。その集中力の高さにこちらが驚かされるほどです。ヴィヴァルディの「春」では、ヴァイオリンの叶千春さんが、子どもたちの間を歩きながら演奏。ドレス姿の千春さんが、楽器を弾きながらすぐ近くに来てくれて、少し困惑しつつも嬉しそうな子どもたち。ヴァイオリンの思った以上に大きな音量にも、驚いた様子でした。
質問コーナーではどの子も積極的。「民謡『斎太郎節』でチェロの楽器を叩いていたのはなぜですか?」(太鼓のように使っていた)、「1曲につきどのくらい練習するんですか?」「一つ一つの楽器の音を聴かせてください」など、演奏者もそのするどい質問に驚きながら、丁寧に答えてくれました。
「パプリカ」ではみんなが踊りたさそうにしている様子を察したチェロの塚野さんが「踊りたい子、歌いたい子は、立ってもいいですよ」と一言。途端に「やった~!」と、全員が立ちあがりました。どの子どもたちも全身をいっぱいに使って、のびのびと踊り出します。最初から最後まで、すっかり覚えてしまっている子がほとんど!ひとり一人が主役となって、小さい子も大きい子も音楽を全身で感じながら歌ったり踊ったりする様子は、とてもとても素敵な光景でした。
リクエストいただいた「Believe」では、いつもはピアノで聴く前奏が、弦楽器の音色で聴こえてくると、「あ!」と顔を輝かせる姿がありました。1年生から6年生まで、これまでにもきっと何度も歌ってきた歌なのでしょう、体育館いっぱいにきれいな歌声が響きます。
その後「ここまで、楽しい時間を一緒に過ごしてきましたが、次が最後の曲です。最後は、1曲、クラシックの曲も聴いてほしいなと思います」と叶さんのお話しに続き、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」から第1楽章が演奏されました。歌って踊って、楽しい時間を一緒に過ごした後の集中力は、こちらが驚くほど。演奏する4人の、息の合った演奏、そしてその迫力や美しいハーモニーを、しっかりと五感で受け止めていた様子でした。こんなにみんなが集中して聴いてくれているな、と見ていても感じられる学校は、そうそうありません。終演後も、地域の方たちが座っていた椅子を、6年生が率先して片付けてくれました。一人ひとりが、自分で考えて行動し、今は何をするべきか、何にアンテナを向けるのかが自然に身についている子どもたち。そんなみなさんに演奏をお届けすることができて、演奏家もスタッフもとても幸せでした。ありがとうございました!