お知らせ

気仙沼②鹿折すがとよ酒店「若葉の風薫るコンサート」

2019.5.11

 

 

 

 

 2019年4月7日、気仙沼と大島を結ぶ鶴亀大橋が開通しました。その、鶴亀大橋への入口となる交差点に建つのが、すがとよ酒店です。気仙沼ツアー2箇所は、そのすがとよ酒店2階のミニホールへ。東日本大震災の津波により店舗、そしてご主人と先代夫婦を失われましたが、その後すぐに女将の文子さんは再起を誓い、仮設店舗での営業を経て2016年12月に現在の場所に再建。次男の英樹さんや、姪御さんたちと店を切り盛りされています。

 最初の春を迎えた2017年3月30日に、今回の3人でお伺いしたのが、すがとよ酒店と「復興コンサート」との繋がりの始まりとなりました。今回は、創業100周年を迎えるに当たり、やっと家が建ち並んできた鹿折のみなさんにも、西沢さんたちの音色をもう一度聴かせていただけたら、とご相談をいただいて伺うことになりました。

 ピアニスト小原孝さんの、復興支援プロジェクトによって贈られた世界にひとつしかない「すがとよピアノ」。小さなピアノと思いきや、驚くほど豊かな音量があり、繊細なニュアンスにも応えてくれる楽器です。今回のツアーでもこの会場だけは、グランドピアノの良さを活かしたスペシャルプログラムを考えてくださいました。出演は、オーボエ西沢澄博さん、チェロ山本純さん(以上、仙台フィル)、ピアノ藤井朋美さんです。

 ヘンデル「ラルゴ」の優しいオーボエの音色で始まったコンサート。西沢さんは、モーツァルトの「オーボエ協奏曲」から第1楽章を。西沢さんの美しい音色と、息がぴったりと合った藤井さんのピアノをこんなに間近で聴かせていただけるとは、なんて贅沢なことでしょう。宮廷貴族がサロンで楽しんだ音楽会も、きっとこんな感じだったのでしょうか。

ピアノ・ソロでは、藤井さんがショパンの「英雄ポロネーズ」を。その圧倒的な迫力と格好よさには、聴いていても痺れてしまうようでした。最後は、ベートーヴェンのピアノ三重奏「街の歌」より第3楽章を。「街の歌」という名前は、当時流行っていたオペラの中の1曲から、主題をいただいたことに由来しています。この第3楽章こそが、正にその「街の歌」。本来はクラリネット、チェロ、ピアノという楽器編成に書かれたものですが、今日はクラリネットの代わりにオーボエで演奏されました。難しいことはわからずとも、様々に主題が変化していく様子は、掛け合いがなんとも楽しい一曲です。

 最後には、小原孝さんの作詞作曲である「逢えてよかったね」をみなさんと一緒に歌いました。2017年に初めて伺った際、客席のあちらこちらで「あれ?!」「久しぶり!」「今、どこに住んでいるの?」そんなやりとりがされていました。震災の後、離れ離れになってしまった、元ご近所さん、同級生、買い物に行っていたお店の方。あの震災を経て“再会”できたということが、どんなに嬉しいことか、どんなに心強いことか、そのことを目の当たりにさせていただいた機会でした。

今日も、この先も、音楽の生まれる場所が、人と人とが出会う場所、再会する場でありますように、と、帰り際みなさんの笑顔を見送りながら、また思いを新たにしました。すがとよの文子さん、英樹さん、今回も大変お世話になりました!