お知らせ

福島・富岡町「行ってみっペ!にこにこさくらコンサート

2019.4.24

風の強い春の日、練習に立ち寄った富岡町文化交流センター学びの森では、窓越しに山桜の花びらが散るのが見えました。仙台チェンバーアンサンブルから、クラリネット叶光徳さん、パーカッション小林直央さん、ピアノ門脇麻美さんとの、福島沿岸部ツアー。1日目は、福島県富岡町に初めてお伺いしました。

 富岡町は、福島第一原発事故後、全域が帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域に区分けされ、全町民が県内外各地に避難。その後6年を経て、平成29年春に居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示が解除されました。今回お伺いした(社福)伸生双葉会 舘山荘デイサービスセンターもとまち・富岡町サポートセンターもとまちも、避難解除後に開所された施設です。コンサートのタイトルは「行ってみっペ!にこにこさくらコンサート」。
「富岡町は夜ノ森の桜のトンネルが有名で、震災前は多くの観光客で賑わっていました。今年は、まだ避難解除になっていない、夜ノ森の桜のトンネルの観光ツアーも開催されました。夜ノ森の桜は富岡町の住民の皆様の復興のシンボルのようになっています。それで、コンサートのタイトルにも桜の名前を入れました」と、スタッフさんに考えていただきました。

 富岡町は、帰還したのは860名あまり、県内外に避難を続ける方は12,000人にのぼります。打合せに伺った際、駅からサポートセンターまでの道のりを歩くと、人通りはほとんどありません。幹線道路以外は、走る車も、時折り見かける程度で、少々心細く…。とはいえサポートセンターに着くと「実年齢より、みなさん、見た目はとってもお若いんです!」とスタッフさんが口を揃えていらっしゃるほど、活気がありました。やはり、現在のこの町で暮らすということは、そのくらいの気丈夫さがあってこそなのかもしれません。

今回は、帰還した高齢者世帯の見守り活動も担うサポートセンターを会場に、デイサービス利用者さんや、町内の復興公営住宅にお住まいの方にもお声がけいただき、たくさんの方にお集まりいただきました。

 コンサートは懐かしのジャズナンバー「鈴懸の径」から始まりました。門脇さんは、ショパンの名曲が少しずつ登場する「ショパンメドレー」をソロで聴かせてくれました。このピアノは、福島県大玉村の応急プレハブ仮設住宅の集会所に寄贈されたものが、仮設住宅の閉鎖に伴って、富岡町社会福祉協議会にと引き取られたのだそうです。そのまま社協に置いておくのは、ということで、こちらのサポートセンターに移管されました。ですが、その後は、利用者さんが時々触られる程度だったとのこと。プロの演奏者に弾かれるのは、今回が初めてとのことでした。門脇さんの素敵な演奏に、お客様もスタッフのみなさんも、じっと聴き入っていらっしゃいます。まだまだ現役なピアノ。どうかこれからもまた、皆さんに弾いていただく機会がありますように!

福島のご当地ソングとして演奏された古関裕而「高原列車は行く」は、いつもこの曲に合わせて体操をしているのだそうです。スタッフのみなさんが、周りを囲むように立ち、ハンカチを持って体操を披露してくださいました。生演奏での体操は、なんだか運動会のような朗らかな楽しさでした。そして、今回小林さんが用意してくれたのはボディーパーカッションで挑戦する「コーヒールンバ」。これまた懐かしいノリノリなナンバーに併せて、ふたつのリズムで膝を叩きます。簡単そうに見えて、ちょっと難しい…そのちょっと難しいところが、楽しいですね。みなさん、笑顔で挑戦のひとときとなりました。

開所した後は、こうしたボランティア訪問もほとんどなかったというサポートセンターもとまち。今回は、三春町にある、同法人が運営するサポートセンター平沢に伺ったことがきっかけで、こちらの存在を教えていただきました。また、仙台チェンバーアンサンブルのみなさんは、震災直前まで相双地区の全ての小学校を、演奏で訪れていたそうです。富岡町にも何度も来ており、その頃は「コンサートが終わると、富岡町の国道6号沿いにあった倫敦館、というレストランでハンバーグを食べるのが、楽しみだったんですよね」「そうそう、美味しかったんだよね~」と、叶さんと門脇さん。コンサートを聴きにいらしていた方にお聞きしても、やはりみなさん「あ~倫敦館、あったねぇ」「久しぶりに名前を聞いたね」「懐かしいね」と話されていました。震災前の、その町の風景を共有できることは、お互いにとても嬉しいことなのだな、と感じました。ご縁が繋がり、初めての訪問となった富岡町。また、お伺いできたらと思います。サポートセンターもとまちのみなさん、ありがとうございました!