お知らせ

雄勝オーリンクオーケストラ、雄心苑へ

2019.3.26

特別養護老人ホーム「雄心苑」は、石巻市雄勝地区の海を見下ろす高台にあります。震災では、高台にあるために津波は受けなかったものの孤立してしまい、町全体が壊滅的な被害を受けたこともあって、一年以上の間、入所者のみなさんは山形県庄内地方のいくつかの特養ホームに分かれ、再開の時を待ったそうです。今回は、ギター奏者・作編曲家の小関佳宏さんに、訪問指導をお願いしている社会人サークル、雄勝オーリンクオーケストラと、小関さんが仙台で指導されているギター・アンサンブル・オレンジのみなさんとの合同で、コンサートに伺うことになりました。せっかくの機会とあって、入所者のご家族にもお声掛けしての公演です。

 この日は、コンサートの前に、いつもオーリンクオーケストラが練習している雄勝小・中学校3階多目的ホールをお借りして、オーリンクオーケストラとオレンジのみなさんの、顔合わせと合同練習を行いました。仙台では、年に何度か舞台を踏む機会のあるオレンジのみなさん。ステージでの並び方も、一人ひとりの練習の始め方も、なんだか手慣れていらっしゃいます。また、オーリンクオーケストラは、20代から70代までと幅広い年代のメンバーが参加していますが、オレンジも、大学生から、社会人のお子さんのいらっしゃる方まで在籍しており、それぞれ同世代が素敵に演奏されている姿に刺激を受けていたようでした。

 雄心苑に到着すると、次々と入所者のみなさんが集まっていらっしゃいました。車椅子の方がほとんどで、会場はあっという間に満員御礼です。まずはギター・アンサンブル・オレンジの演奏に耳を傾けます。オーリンクオーケストラのメンバーも、入所している家族と一緒に。曲は坂本冬美さんの「夜桜お七」と、千昌夫さんの「北国の春」。指揮者を置かずに呼吸だけで合わせるオレンジのみなさんを、オーリンクオーケストラのメンバーも羨望の眼差しで見つめます。ギターのみでのアンサンブルで聴く「夜桜お七」、そして会場のみなさんに歌で参加していただいた「北国の春」。とくに「北国の春」ではあちこちに手拍子される方の姿も見えました。

 いよいよ、雄勝オーリンクオーケストラとオレンジのみなさんとの合奏です。今日のオーリンクオーケストラは「黄色を身に着けること」という指令が。フルートのRさんは、素敵な黄色の春らしいスカート、アコーディオンのDくんは真っ黄色のパーカー。Mさんの指揮で嵐の「ふるさと」、手拍子が楽しい「ラデツキー行進曲」、そして最後は岡野貞一の「故郷」をみなさんに歌っていただきました。客席から、演奏に合わせて手拍子してくださる方の姿や、一緒に歌ってくださる歌声が聴こえてくると、とても嬉しいものですね。そんなことも、演奏者として参加したからこそ味わえる、醍醐味でした。

コンサートは、始まってしまうと、あっという間でした。上手くいったところ、行かなかったところ、あれこれ口にしながら、最後はそれぞれチームごとに記念写真を。見てください、この充実感溢れる笑顔!雄勝オーリンクオーケストラだけでは、まだまだ3,40分のステージを務めるのは難しいところですが、今回は「雄勝にぜひ、行きたい!オーリンクオーケストラのみなさんとも、ご一緒したい!」と言ってくださった、ギター・アンサンブル・オレンジのみなさんの、心強いお力添えをいただいて、目標のひとつであった雄心苑への訪問コンサートが叶いました。どちらもこの日のために編曲や指導いただいた小関さん、ありがとうございました!

そしてこの日コンサートに向かう前、仙台から何台かの車に分かれて向かったギターアンサンブルオレンジと共に、おがつ店っこ商店街の、オーケストラメンバーが働く食堂にて、海の幸満載のお昼ごはんをいただきました。新鮮なお刺身とめかぶご飯の、美味しかったこと!その後、会場に向かう途中にある、石巻市雄勝病院跡地の慰霊碑に立ち寄り、手を合わせました。3階建ての建物を飲みこむほどの高さの津波、想像してもしてもしきれません。けれど、現実にそれだけの波がここを襲ったのだと…コンサートでお会いしたみなさんの笑顔と共に、そのことも忘れずにいたいと思います。