お知らせ
田子西「うたカフェ♪」_9月
- 2020.9.18
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仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)いよいよ秋の訪れが目前となった今日のうたカフェは、月にちなんだプログラムをお届け。音楽リーダーは仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノは富樫範子さんです。
まず歌のおめざとして松本さんと岩瀬さんが『証成寺の狸囃子』を二重唱で披露してくれたあと、みんなで歌いました。来い来い、と歌う部分では手招きをしたり、ぽんぽこぽんのぽん!のリズムに合わせて手を叩いたりと、体も一緒に動かしたので忙しなかったですが、みなさん上手に歌い切っていました。続いて開いた歌詞カードには、9曲分の歌詞がびっしりと書かれていました。童謡からCMソングまで、様々な時代とジャンルの曲が並んでいますが、それらは全てアメリカの『リパブリック讃歌』のメロディで歌える曲とのこと。松本さんは曲を選ぶにあたり、中秋の名月からお彼岸、そこから『おはぎの嫁入り』という曲に辿り着き、さらに同じメロディで歌える『ともだち讃歌』や『ごんべさんの赤ちゃん』『ヨドバシカメラのうた』などの替え歌があることを知ったそうです。
メロディは全部同じなので、曲ごとに振り付けをつけて変化を楽しみながら歌いました。『一丁目のウルトラマン』では松本さんの渾身の「シュワッチ!」、『アンパンマンのおでかけ』では富樫さんの全力の「ア~ンパ~ンチ!」が炸裂し、参加者から大きな笑い声と拍手がわきました。また、みんなが知っていると答えた『ごんべさんの赤ちゃん』ですが、時代とともに”ごんべさん(権兵衛さん)”という名前の人が少なくなると『太郎さんの赤ちゃん』という曲が登場します。風邪を引いた赤ちゃんの治療法もしっぷから注射になっていて、替え歌も時代の流れに合わせて変化していることを知りました。
子供向けの替え歌が多かったですが、中には『薔薇の唄』という大正時代に女学生の間で流行したという曲もありました。とてもロマンチックな歌詞で、同じ旋律でも他の曲とは全くイメージが異なる曲になっていました。
最後は童謡の『案山子』とさだまさしさん作詞作曲の『案山子』を歌いました。さださんの『案山子』の内容と息子さんがリンクして、リハーサルで思わず泣いてしまったという松本さん。また泣いてしまうかも、と本番では岩瀬さんに歌ってもらおうとしましたが、岩瀬さんは「泣いたら泣いたでいいから」と背中を押してくれたそうです。同じようにお子さんを都会に送り出した経験がある人や、コロナ禍で会えない家族を案じる人も多かったのでしょうか。歌っている人の中にも、涙をぬぐっている人が何人かいました。少々しんみりとしたあとは、お待ちかねのミニコンサートの時間です。
まずは富樫さんによる『ムーンライト・セレナーデ』。ほろほろとこぼれる月明りのように音が連なる旋律が心地よく耳に届きます。秋の夜長にくつろいで聴きたくなるような演奏に、みなさんリラックスした様子で聴き入っていました。
続いて岩瀬さんがNHK全国学校音楽コンクールの課題曲にもなった『Gifts』を歌ってくれました。コンプレックスに悩んでいても、自分には今まで積み重ねてきたものやこれからやりたいことがある、生まれた瞬間から色んなものを持っているんだ、と前向きな気持ちになれる素敵な曲です。とにかくたくさんの言葉を入れ込んで歌う必要があり、歌うのがとても難しそうな曲でしたが、次々と語り掛けられる言葉のひとつひとつがとても優しく、聴いている人には自然と笑顔が浮かんでいました。
松本さんはオペラ「ルサルカ」から『月に寄せる歌』。人間の王子に恋をした水の精ルサルカが、湖の上に浮かぶ月に向かい、想いを王子に伝えてほしいと祈っている曲です。松本さんの歌声からは、暗く静かな夜の湖で、一人月に祈るルサルカの切ない気持ち、そして王子に恋い焦がれる想いの強さが伝わってきました。その美しい旋律に、みなさんうっとりと聴き入っていました。秋らしい曲がたっぷり詰まった本日のうたカフェはこれにて終了。今日も「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんがコーヒーのドリップパックのお土産を用意してくれていました。「やっぱり味が普通のとは味が全然違うのよね」とみなさん嬉しそうに受け取ってくれました。
今日は少し蒸し暑かったですが、これからどんどん秋らしい気候になっていくことでしょう。季節の変わり目、みなさん体調には十分気を付けてお過ごしくださいね。