お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_11月

2020.11.20

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

今日のうたカフェのテーマは「酒」。ウェルカムドリンクならぬウェルカムミュージックとしてピアノの富樫範子さんが『茶色の小瓶』を弾いてくれました。日本では童謡として知られる曲ですが、アメリカで発表された当初は酒席で歌われた曲だったそうです。弾むようなメロディを足でリズムをとりながら楽しんでいる人もいました。

楽しいウェルカムミュージックのあとは、仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さんのお二人と一緒にたくさんのお酒の歌を歌います。
まずは日本のお酒ということで、福岡県民謡の『黒田節』。♪酒は呑め呑め 呑むならば~ の歌い出しで知られる曲ですね。おなじみの民謡を気持ちよく歌った参加者に、松本さんが「『黒田節』のメロディで、色んな歌を歌うことができるんですよ」と教えてくれました。『どんぐりころころ』『月』『ああ人生に涙あり』など、本当に色々な曲の歌詞に変えて歌うことができるそうですが、今日は『月の沙漠』の歌詞で歌ってみました。歌う前は「え~?」と戸惑う声が上がっていたのに、いざ歌い出すとみなさんスラスラと歌えるではないですか。意外な組み合わせの2曲でしたが、こういう遊びも楽しいですね。
続いて歌ったのは『ワインレッドの心』。歌うのはちょっと難しい曲かな、と思ったのですが、みなさんしっかりと声が出ていました。さらに曲のイメージを表現するため、松本さんから「大人の憂いや色気を表現するような歌い方をしてみましょう」とアドバイスがありました。その一環として、歌い終わりに”遠い目”をして憂いを表現するようにとのこと。”遠い目”をしようとしてなぜか首を前方に伸ばしてしまうのを松本さんに突っ込まれつつ、アドバイス通りに情感豊かに歌うことができたのではないでしょうか。

ワインに酔いしれたあとは、古き良き昭和が薫る居酒屋で恋に落ちる『北酒場』を歌いました。シンコペーションというリズムが多用されるこの曲は、そのリズムに乗って調子よく歌うことができます。普通に歌っても素敵でしたが、岩瀬さんは歌詞の言葉にそった歌い方をするようにとアドバイスしてくれました。「自分の心がとろけて、それが人の心にとろとろとろ、と入っていくように」という言葉を受けてもう一度歌ってみると、1回目よりさらに曲の世界観を表現できていました。岩瀬さんからも「これならカラオケで点数が上がりますよ」とお褒めいただき、みなさん嬉しそうでした。
最後は何とオペレッタの曲に挑戦。オペレッタの王様とも呼ばれる「こうもり」より『葡萄酒の燃える流れに』、『シャンパンの歌』として知られるあの曲です。さすがに全て歌うのは難しいので、松本さんと岩瀬さんの歌唱にあわせて部分的に参加してもらうことに。テンポが速く音域も高いので大変だったと思いますが、振り付きの「乾杯!」含めみなさん一生懸命歌ってくれました。ウィーンを始めドイツ語圏の国立歌劇場において「こうもり」は大みそか恒例の演目となっているそうで、新しい年の訪れを祝うのにふさわしい陽気でにぎやかな曲に、田子西歌劇場もぱっと華やいだ雰囲気に包まれました。

もちろんミニコンサートにもお酒にちなんだ曲が登場しました。
岩瀬さんが歌ってくれたのは『野風増』。お前が20歳になったら、と息子の将来に思いを馳せる男親の心情をしみじみと歌った曲です。曲名の<のふうぞ>とは、中国地方などの方言でやんちゃ・生意気という意味だそうです。男は生意気くらいが丁度いい、と息子の成長を願う曲を、一緒に口ずさんでいる人もいました。
最後に松本さんが歌ってくれたのは『ウイスキーが、お好きでしょ』でしたが、それを歌う前にお願いが・・・とのこと。この曲を歌うにあたって松本さんが石川さゆりさんの歌唱動画を視聴していた際に、間奏の部分で「さゆりちゃーーーん!」と掛け声が上がったのを見て「いいなぁ」と思ったそうで、今日はぜひその掛け声をかけていただければ・・・とのことでした。みなさんが快諾すると、松本さんも「それを楽しみに歌います」と嬉しそうな様子でした。しっとりとした声で恋人への未練を歌う松本さんの歌唱はさすがの一言。その情感たっぷりの歌声に、みなさんうっとりと聴き入っていました。その歌声への称賛も込め、間奏では「康子ちゃーーーん!!」の大合唱。演奏中のコールは初めての方も多かったと思いますが、みなさんはりきって声を出していました。こういった形で演奏に参加するのも面白いですね。

たくさんのお酒の曲に”酔いしれた”本日のうたカフェ、お楽しみいただけたでしょうか。アルコールの提供はできませんが、喫茶ひこのマスター西垣信彦さんがご用意くださったコーヒーのお土産をお持ち帰りいただき、おうちで味わっていただければと思います。
明日からはこの時期らしい寒さが戻るようです。みなさん体調には十分に気を付けて、また来月お会いしましょう!