お知らせ

田子西第二「静かなクリスマスコンサート」

2020.12.25

コロナ禍ながら世間はクリスマス一色です。今日は仙台市宮城野区にある田子西第二市営住宅へ伺いました。毎年、町内会のクリスマス会にお招きを受け、大勢の子供と大人でぎゅうぎゅう詰めの集会所にコンサートをお届けしているのですが、今年は「静かなクリスマスコンサート」と銘打ち、参加は大人だけ18名に限定して行ないました。出演はクラシックギターの佐藤正隆さんと小関佳宏さんです。
プログラムは演歌、ポップス、クリスマスソングのほかギターのために書かれた曲などで構成されていました。「静かな」というタイトルにクラシックギターはふさわしいと正隆さんは言いました。繊細な音色が会場にちょうど良く響いて、お客さんは耳を澄まし、集中して聴いている様子でした。息の合ったお二人の演奏は、互いに主旋律を取ったり伴奏になったり、綾なす流れとなって会場に満ちて行きました。

演奏家は「みなさんを旅にお連れしようと思います」と、佐藤弘和『遠い谷への旅』を弾きました。乾いた風の吹く荒野を進みゆくうち、険しい渓谷や激しい川の奔流が現れたりするような、頭の中にさまざまな風景が浮かんできます。感染症の影響で外出を控えている人の多い昨今ですが、こうして音楽とともに心の中では旅をすることができるのだと感じました。大げさな言い方になりますが、芸術は魂の自由を味わう場として人間には必要なものだとその時思いました。
小関さんは「最初のひと呼吸でお互いに最初の音をどう演奏するかがわかるんです」という話をしました。たしかにある曲では鋭く短い呼吸音が聞こえてきますし、ある曲ではゆったり大らかな呼吸音が聞こえてきます。曲の最初だけでなく、要所要所で二人の呼吸がぴったり合う場面が見られました。何か武術や踊りに通ずるような様子ですね。

コンサートの最後に演奏されたのは『うみ』でした。小さな小さな音から始まり、寄せては返すさざ波に転がる砂粒や頬をなでるやさしい海風が感じられるようでした。ある穏やかな日、波打ち際に静かにたたずみ水平線を眺めているような心持ちです。潮の匂いもするかのようです。肩の力が抜けて、身体全体がほぐれたような気分になりました。お客さんの呼吸も演奏に同調して静かにゆったりとしたものになっています。最後の一音が消え、余韻を聴き取ってから、みなさん同時に大きく息を吸い込んでいたのが印象的でした。

終演後、お客さんからは「免疫力が上がった気がするね」「ほぐされました~」という声がありました。その調子でどうかお健やかに年末年始をお過ごしください。
今年の復興コンサートは今日で最後となります。相次ぐ中止や延期でどうなることかと思いましたが、感染症対策をしながらいくつかの活動を行なうことができました。改めて「生の音楽」を通じたやりとりが身に染みる経験となりました。来年はどんな年になるのでしょう。絶望せず、油断せず、臨機応変に、できることをやっていければ…と願います。それでは皆様、どうぞよいお歳をお迎えくださいますように。