お知らせ
メモリアルコンサートvol.31
- 2021.1.11
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音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)例年にない寒波で氷点下の気温が続く仙台です。冷え込みは厳しいですが太陽が顔を出して、少しほっとする今朝でした。
本日の出演はピアニスト高塚美奈子さんです。高塚さんは、仙台市内はもとより、気仙沼市や南三陸町など遠方での復興コンサート活動にも多く参加しています。ここしばらくは感染症の影響で活動数が減っていたので、今日の演奏は「生きる張り合いになります」と、気合い充分に登場しました。
柔らかなレモンイエローのドレスが待たれる春を先取りしているようで、見ていて心が明るくなります。まずはショパン『幻想即興曲』『タランテラ』が披露されました。滾々と湧く泉のように、力強くかつ流麗な調べがあふれてきます。すばやい鍵盤さばきに小さな子たちも目が釘付けになっていました。
続いてはリスト『ペトラルカのソネット第123番』です。14世紀のイタリアの詩人ペトラルカが、ペストで亡くなった恋人ラウラを想って書いた詩に19世紀の作曲家リストが曲をつけたそうです。高塚さんは「この曲には空に舞い上がってゆくような美しいメロディがあって、天にいる人にもきっと届くんじゃないかな…届きますように、と思って選びました」と語りました。降りそそぐ光のような、温かな春の雨のようなやさしい調べが会場を包みました。観客アンケートの中には「震災で助かったのに、その後病気で亡くなってしまった友人を思い出しました。彼女も一緒に聴きたかったと思います」と書かれていました。
高塚さんは復興コンサート活動で宮城県の沿岸部を訪れたときのことを話しました。漁師町の人びとは、家も船も大切な人も失って本当に大変な思いをしただろうに、それでも明るく元気に接してくださって、ご自分の方がむしろ励まされたそうです。「そんな漁師のおじさんおばさんたちにエールを送りたいと思います」と宮城県民謡『斉太郎節』を演奏しました。なにか肚の底から力が湧いてくるような気持ちになるたくましさがありました。ピアノという楽器はつくづくとすごいものですね。
アンコールではフィギュアスケートの羽生結弦選手の演技で使用されたアレンジの『花は咲く』が演奏されました。客席では涙が止まらない様子の方が何人かいました。東日本大震災からまもなく10年、すっかり過去の出来事になっている人は多いと思いますが、時間の流れ方は人それぞれです。こうして、思いを馳せる場をつくることは大切なことだと感じます。観客アンケートに「あの日を思い出します。何もできないけれど、せめてずっとおぼえていようと思います」との言葉がありました。
首都圏では緊急事態宣言が出て、一時は今日のコンサート開催が危ぶまれましたが、無事に終演を迎えることができました。皆様ありがとうございました。