お知らせ

メモリアルコンサートvol.32

2021.8.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

連日うだるような暑さでしたが、打って変わって今日はひんやりと肌寒いぐらいの風が吹いています。コロナ禍で開催延期となっていたメモリアルコンサート、本日が今年度最初の回となります。
出演は仙台在住のピアニスト掛田瑶子さんです。これまでの復興コンサート活動でも歌や器楽とのアンサンブル演奏でしばしばご出演いただいておりますが、「今日はソロなのでちょっと寂しいですね…」とやや緊張した様子でした。
と言いながらも、ドビュッシー『月の光』やマンシーニ『ムーンリバー』は月にまつわる思い出とともに、モリコーネ『愛のテーマ』やリスト『愛の夢』は失ってしまった大切なものへの追憶とともに、ある時は繊細かつ華麗に、またある時は力強く…と縦横無尽な演奏ぶりで頼もしく、お客さんはうっとりと聴き入っていました。

普段、合唱やオペラなどの伴奏を務める掛田さんは「やっぱり人の声には素晴らしい力があると思います。今日は一人で寂しいので、一緒に演奏してください」と、『ロンドンデリーの歌』でお客さんにハミングで歌っていただきました。マスク越しの小さな声ではありますが、会場じゅうに歌声が漂ってとても和やかな空気になりました。掛田さんもほっとした笑顔で「ありがとうございます」と嬉しそうでした。
シューマン『飛翔』では「飛びたい!という切実な願いがあらわれているように思うんです」と語る掛田さん。「早くマスクを取り去って、コロナから解放されて一緒に歌ったり演奏したい!という気持ちを込めて弾きます」と、ダイナミックな演奏で聴衆を圧倒しました。

東日本大震災から10年、人それぞれの時間の経過がありました。現在はコロナ禍でまた新たな不安や悲しみが世界を包んでいます。
掛田さんは、辛いときや苦しいときに「前を向いて」とか「前向きに生きよう」という言葉にむしろ迷子になったと語りました。
「そんなとき、私は上を見るんです。大切な思い出はきっと忘れない、と思いながら」と、アンコールで『上を向いて歩こう』を演奏しました。しっとりした大人っぽいアレンジです。見上げれば今日は曇り空。その向こうには、懐かしい人の笑顔が思い起こされます。
終演後、お客さんからは「音楽で伝わる想いがあり、とても感動しました」
「心がほっこりしました」という声がありました。
掛田さん、そしてご来場の皆さん、どうもありがとうございました。