お知らせ
本吉「スタインウェイピアノコンサート」
- 2022.2.23
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宮城県気仙沼市の南部、本吉町のあるはまなすホールには佐賀県から贈られたスタインウェイピアノがあります。「佐賀きずなプロジェクト」の一環として、2012年から気仙沼市内の公共施設や学校、幼稚園あわせて16か所に贈られたうちの一つです。
今回、地元市民有志による〈スタインウェイと気仙沼市民の音楽祭実行委員会〉から「佐賀県への御礼としてピアノコンサートを開催したい」とのご依頼がありました。気仙沼市と協働する東日本大震災10年復興記念事業だそうです。今回の出演は仙台在住のピアニスト、山形佑輔さんです。このコロナ禍に加え、前日はかなりの強風と雪でお客さんが来られるのか心配でしたが、当日はさいわいにもおだやかな日和に恵まれました。感染症対策のため人数制限がありましたが、赤ちゃんからお年寄りまでおよそ60名の来場者がありました。
このピアノの出番は久しぶりとのことでしたので、演奏家と調律師はリハーサルを入念におこないました。最初、おとなしかった音がだんだんと色彩を帯びてふくらんでいくのがわかって、やっぱり楽器は生き物なんだなあと改めて感じました。さて、演奏プログラムはモーツァルトから初音ミクまで、古今東西、老若男女問わず楽しめる曲目が並んでいます。まずはご挨拶がわりに『トルコ行進曲』が演奏され、お客さんは「あっ」と一気にピアノの音色に引き込まれたようでした。続くショパンやドビュッシーに、うっとりと聴き惚れている姿がありました。
コンサート中盤はポップス曲が並びました。気仙沼では本州と大島を結ぶ大きな橋が2019年に完成したことから、山形さんは人と人とを結ぶ架け橋をイメージし、サイモンとガーファンクル『明日に架ける橋』を選んだのでした。そして、おなじみのジャズナンバー『On the Sunny Side of the Street』では楽しげにスウィングしながら聴く大人がいました。
また、「この曲を演奏するかどうか直前まで迷ったのですが…」と、NHK連続ドラマ『おかえりモネ』の主題歌『なないろ』を弾きました。客席からはひときわ大きな拍手が湧いて、あのドラマが地元の人びとにとても愛されていることが伝わってきました。「人それぞれのこの10年があり、町の復興は進んだけれども、お気持ちや状況はさまざまあると思います。それでも、一人ひとりが幸せになれますようにと願って、演奏します」と山形さんは語って『花は咲く』を弾きました。その様子をじっと見つめて、耳を澄まして聴いている人がたくさんいました。東北にまた春が来ます。思い出されることの多い季節を迎えますね。
そして最後は、来る春にちなんで『千本桜』が演奏されました。ダイナミックで華麗なる速弾きに子供たちも大人も目を瞠り、ピアノから湧き上がる音の奔流に圧倒されていたようでした。お客さんの笑顔と大きな拍手に包まれて演奏家も嬉しそうでした。
終演まで客席で見守っていた調律師の小野寺さんから「素晴らしいコンサートでしたね」とのお言葉をいただき、スタッフ一同も嬉しく、ほっと胸をなでおろしました。これを機に、このピアノが町の人たちにどんどん弾いてもらえるようになったらいいなと思います。実行委員会のみなさん、これからも頑張ってくださいね!