お知らせ

野蒜デイサービスみのり「感謝・報恩」コンサート

2022.7.1

東松島市野蒜地区は、東日本大震災で内陸の山際まで津波が押し寄せ、多くの方が亡くなりました(写真の旧JR野蒜駅には3.7mの浸水高でした)。現在も、新しく家を建てることはできませんが、以前から住んでいた方が家を修繕して暮らすことが認められており、60世帯の方が戻っているそうです。他に野蒜地区の背面にある山を切り崩し、防災集団移転団地・野蒜ヶ丘が造成され、既に多くの世帯が生活されています。

デイサービスセンターみのりは、昔からの野蒜地区・亀岡に2019年に開設されました。運営する(株)美徳の内海社長も、元々野蒜生まれ、野蒜育ち。デイサービスみのりのすぐ斜め向かいにご自宅があります。今回のコンサートは、民生委員を務めていらっしゃるお母様からご紹介いただき、開催することが決まりました。その後、よくよくお聞きしたところ、東松島市内の赤井・大曲にあるデイサービス花いちもんめさんに、以前はお勤めだったとのこと。そちらへ「復興コンサート」でお伺いした際のことも、覚えてくださっていました。

コンサートの始まる前に、内海社長から一言ご挨拶が。オープン3周年を迎えた感謝と、また来年のこの日も、みなさんで一緒に迎えられますように、元気でいましょうね、との願いを込めた挨拶でした。

そしてコンサートが始まりました。出演は、ヴァイオリン駒込綾さん、ギター小関佳宏さんのお二人。クライスラーの愛の三部作の1曲「美しきロスマリン」で、まずは軽やかなヴァイオリンとギターの音色に触れていただくと、続いてはビゼーの歌劇「カルメン」から主題を取り、小関さんが作曲した「カルメン・ファンタジア」へ。二人だけで弾いているとは思えない、変化に富んだ情熱的なカルメンが現れ、客席のみなさんも、演奏の熱気に誘われて、次第に身を乗り出すようにして聴かれていました。華々しく曲が終わった直後には、お二人の見事な演奏に、どこからともなく「ほ~!」という感嘆のため息が!世代を超えて愛される、カルメンの名旋律の数々。みなさんの心にも、情熱的で“わくわく”とした気分がちゃんと届いていたようでした。

今回のチラシは、七夕飾りの短冊をモチーフに。まもなくやってくる「七夕さま」の懐かしい歌には、マスクの中で口ずさむ声もあり、頷きながら懐かしそうに聴く姿あり。小畑実やちあきなおみが歌った「星影の小径」も、七夕の夜を思うような優しい音色でした。カラオケ大好きなみなさんからリクエストいただいたのは、川中美幸「二輪草」。g.小関さんのおばあさんは、野蒜のお隣り、東名(とうな)がご出身だったそうで、小関さんも小さい頃、潮干狩りに来た思い出があるのだそうです。その、おばあさんが好きで、カセットテープをかけてよく一緒に歌っていたのが、この「二輪草」だったとか。「今日、この曲をリクエストいただいて、東名に近いこの場所で、この歌を弾かせていただくのを、とっても楽しみにしていたんです」。そう話された後の演奏は、縁側に座って口ずさむおばあさんの姿が思い浮かぶような、なんとも優しい演奏でした。お聴きいただいていた皆さんも、それぞれご自身の孫を見守るような雰囲気で、聴きながら「いいねぇ…」と隣りのスタッフに微笑む方もいらっしゃいました。

そんなほっこりとした心の交流の後は、映画音楽コーナーへ。「今の季節、そして世界情勢を考えたときに、この曲を弾きたいなと思いました」と駒込さんが紹介したのは、映画「ひまわり」の主題歌でした。青空の下、一面に広がる黄色いひまわり、その情景がすぐに浮かぶものの、彼のウクライナでは今日も戦争が続いています。理不尽な悲しみを掬うような切ないメロディーに、涙をぬぐう方もいらっしゃいました。「古い映画は、リアルタイムで観たものでなくとも、いい曲がいっぱいあって、その音楽から情景が浮かんできますね。次の曲は、小関さんの優しい人柄が音に出る一曲です」と駒込さん。映画「禁じられた遊び」のあの有名なギターの主題歌を、小関さんがギター独奏で弾き出しました。すると男性のみなさん、小関さんの指先の器用さに目を奪われて、ついつい前のめりなる方が、あちらにもこちらにも。お若い頃、一度はギターを手にした世代、皆さんこの曲は今でも変わらずに憧れの曲なのかもしれません。

短い休憩を挟んで、映画コーナー最後の曲は「太陽がいっぱい」メドレー。誰もが聴いたことのあるニノ・ロータの名旋律から、5拍子のジャズの名曲「Take5」、そして映画「ミッション・インポッシブル」のテーマと、なんともわくわくするような熱い曲が続きます。そして最後はこちらもリクエストをいただいた千昌夫「北国の春」。自然とみなさんが手拍子で参加、はなうたもあちこちから聴こえてきて、なんとも和やかな終演となりました。…と「アンコールお願いします!」の声に続いて、盛大な拍手が。最後は「きよしのズンドコ節」が演奏されました。ちょっと恥ずかしそうな「キ・ヨ・シ!」の声が聞こえてきたり、手拍子をしながら体を揺らしてみたり、なんとも微笑ましい締めくくりに。そして素敵なプレゼントもいただきました。ありがとうございました!

感染症まん延の影響で、おでかけやボランティアの受け入れが難しくなった間に、認知症が進んだ方がいらっしゃったり、この頃の暑さに付いて行くのが難しくなってしまったり…開設時から通い続けていらっしゃる方は、もうお一人もいらっしゃらない、というのが現実なのだそうです。ですが、野蒜に住み続けることはできない、今は、野蒜からは離れたところに住んでいるけれど、ここに来れば、昔からのお友達に会える、それが楽しみ、という方が多く、送迎の範囲は東松島市内だけでなく、石巻市・松島町・大郷町・大崎市鹿島台と、広い範囲に亘ります。また野蒜に戻っていらしたご近所さんには、囲碁のお相手になってもらったり、畑仕事を手伝っていただいたり、と、ボランティアとしても関わっていただいているそうです。戻ってきた家が点在する、少し寂しさもある野蒜で、ここは、介護が必要な方の通うデイサービス、というだけではない、いくつもの大切な役割を担う場所なのだ、ということが、一日お伺いしただけでもとても伝わってきました。

帰りには、利用者さんたちのおやつと同じ、社長のお母様特製の二色寒天をご馳走になりました。「今日は3周年の御祝いだから、紅白にしたの!」懐かしい牛乳寒天、そしてお庭のラズベリーの載った赤い寒天も一緒でした。また「これも、せっかくの御祝いだからね」と、お赤飯をお土産に…こちらもお母様のお手製でした。心尽くしのおもてなしを受け、社長にお見送りいただいてみのりさんを後にしました。きっとまた、お会いしましょう、ありがとうございました!