お知らせ
田子西第二「歌う♪こだまの会」7月
- 2022.7.19
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復興センターは仙台市宮城野区にある田子西第二市営住宅〈田子西こだま町内会〉と協働し、
2018年10月から「歌う♪こだまの会」を開催しています。5月から再開していた「歌うこだまの会」、今月も無事に開催できる運びとなりました。会場設営をしてくださった町内会長さんは、換気を気遣ったり事前申し込みの対応をしていただくなど、安全に開催できるよう配慮してくださっていました。このところ県内でも感染者数が増加していただけに、音楽リーダーのソプラノ大河原真歩さんとピアノの大岩千華さんも、まずは予定通り開催できたことにほっとした様子。大河原さんは元気が出るようなひまわり柄の、大岩さんは鮮やかなマゼンタピンクのワンピースで登場すると、ぱっと会場が明るくなったようです。
本日もウォーミングアップで歌う準備を整えることから始めます。体を動かすことはもちろん、言葉をはっきりと歌えるように舌やくちびるを意識して動かすトレーニングも行いました。濁音を舌の圧力を意識しながら発音したり、舌で上あごを押す⇔力を抜くを繰り返してトレーニングしたり・・・。舌の筋力が落ちると滑舌が悪くなるだけでなく、表情筋にも影響が出てお顔がたるんでしまうそう。日常会話ではそこまで舌を意識して使うことがないので、今日行ったトレーニングを日々の暮らしの中に取り入れてみましょう。
それでは今日も楽しく歌っていきましょう。最初の曲は『夏は来ぬ』です。なじみ深い唱歌とあって、1曲目からみなさんよく声が出ていました。ポイントは<夏は来ぬ>の「な」の歌い方。最初に小さい「ん」を入れるようにすると、「な」と発音したときに音程がバシッとハマるんだそうです。何気なく口ずさむことが多い曲も、ちょっとしたことを丁寧に歌うとすごく上手に歌えている気がします。2曲目は古関裕而作曲のご当地ソング『高原列車は行く』を歌いました。大河原さんは「とにかくサビの<ララララ~♪>の部分を楽しく歌ってください!」と熱弁。爽やかで清々しいメロディに、自然と気持ちも弾んでくるようでした。
みんなで歌うコーナー、最後の曲は『真赤な太陽』です。歌う前にひとりずつマラカスが配られ、「歌って良し、マラカス振って良し、自由に楽しみましょう」とのこと。マラカスでリズムをとろうとすると歌うのを忘れ、歌に集中すると拍子が分からなくなり・・・とあたふたしつつ、みなさん思い思いに曲を楽しんでいました。会の後半は音楽リーダーによるミニコンサートです。まずは『高原列車は行く』に関連して『フニクリフニクラ』を歌ってくれました。日本人には鬼のパンツはいいパンツ~♪の印象が強い曲ですが、原曲はイタリアの登山鉄道会社のCMソングなんです。どこか勇ましい印象もあるメロディを、みなさん体でリズムをとりながら聴いていました。
ちょうど1年前の「歌うこだまの会」で、名作映画特集として映画「愛情物語」で使われたショパンのノクターンを演奏した大岩さん。「今回も映画の曲をということで、これなんですけど・・・」と壁に飾られていた折り紙のひまわりを振り返った大岩さんに「え、ひまわり!?」と喜びの声を上げた方が。そうです、1970年公開のドラマ映画「ひまわり」のテーマソングです。戦争によって引き裂かれた夫婦の行く末を描いたこの映画は決して幸福な物語ではありません。しかし悲哀に満ちていながらどこまでも美しい旋律が、聴く人の心を強く揺さぶります。大岩さんの繊細な演奏が、静かに降る雨とともに心のうちにしみこんでくるようでした。
今日は仙台オペラ協会のソプラノ歌手とピアニストのコンビということで、ここでオペラの楽曲も歌ってくれるという大河原さん。しかし歌舞伎などと同様にオペラはどうしても敷居が高いと考えた大河原さんは、手描きのイラストで曲の内容を分かりやすく図解してくれました。今回歌うのはオペラ「セビリアの理髪師」より『今の歌声は』。バルコニーの下から聴こえた求愛の歌を聴いたヒロインのロジーナが、その求愛を受け入れる恋のアリアです。この曲が歌われる背景を説明した大河原さんが、最後に「要は<私はこの恋を絶対ものにする!>ということを歌っているんです」とざっくりまとめてきたので、みなさんクスクス笑っていました。オペラは決して難しいことを歌っているのではなく、ドラマみたいな内容を歌っているんですよ、という大河原さん。同じフレーズが繰り返し歌われることも多く、強調したり盛り上げるために装飾音がついているので大仰な感じがするのだとか。そうした説明を受けてから聴くオペラアリアは、聞き取れないイタリア語の歌唱にもかかわらず、ぐっと身近なものとして聴くことができました。
アンコールは『今日もひとつ』という曲でした。<きょうもひとつ悲しいことがあった きょうもまたひとつ嬉しいことがあった>という歌詞で始まる、とても素敵な曲でした。「歌詞だけ読むとしんみりしちゃうから、そうならないように気を付けて歌います」と言っていた大河原さんの歌声は、確かに悲しみというより、様々なことを受け止めながら前へ進んでいこうとする思いがあふれていたように感じました。本日の「歌うこだまの会」も無事に終了。ある方は帰りがけに「今日はとっても幸せな気分になりました」と言ってくださいました。気持ちが沈むことも多いこのご時世、歌を楽しんでほっとくつろいでいただけたら嬉しく思います。