お知らせ

メモリアルコンサート vol.36

2022.8.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

メモリアルコンサート、今年度は今日が最初の開催となりました。会場がある荒井駅の近くでは「あらい七夕夏まつり」が開催されていて、荒井駅前に屋台が出ていたり、メモリアル交流館にもたくさんの吹き流しが飾ってあったりしてとても賑やかです。夏休み中ということもあって、大勢の親子連れが訪れていました。
本日の出演者は仙台フィルのヴィオラ・長谷川基さんと、クラシックギターの佐藤正隆さんのお二人です。お二人とも復興コンサートには多数ご出演いただいていますが、二人で組んで演奏するのは初めてとのこと。ヴィオラとギターというあまりない組み合わせに、どんな演奏になるのかお客様も興味津々の様子です。

まず最初にピアソラの『アヴェ・マリア』を演奏しました。叙情的なメロディがすぅっと会場に流れ出すと、多くのお客様が目を閉じてその音色に身を任せるように聴いています。「震災から11年と5ヵ月、祈りを込めて演奏しました」という佐藤さんの挨拶に、みなさん深く頷いていました。
プログラムの中盤は映画音楽から、N.ロータの『ロミオとジュリエット』とモリコーネの『La cariffa』の2曲をお届け。どちらも映画音楽として定番ですが、ヴィオラとギターでの演奏用に佐藤さんが編曲していて、よく知る曲なのに何だか新鮮な印象です。佐藤さんはヴィオラについて「隣で弾いているのはヴァイオリンか、もしくはチェロかと錯覚するくらい音域が広いんです」と音を合わせた印象を語りました。長谷川さんも「音域がちょうど合っていて、響きが混じりあって・・・自分たちで言うのも何ですけど、思ったより良いねって話してたんです」と笑顔を見せました。
クラシックギター奏者の佐藤さん、実は演歌もお好きとのことで、いわき市の復興コンサートに出演した際にご当地ソングの『みだれ髪』をリクエストされた思い出を語りました。今日は同じく美空ひばりさんの曲から『愛燦燦』を選び、これもまたヴィオラとギターの演奏用にアレンジしてくれました。
休み中の開催とあってか、今日の公演にはお子さんの参加がいつもより多かったです。間近で見る楽器の演奏と生の音楽に圧倒されていたような子どもたちは、「天空の城ラピュタ」の主題歌『君を乗せて』の演奏が始まるとパッと顔を輝かせ、「この曲知ってる!」というような顔を親御さんに見せていました。元の曲はしっとりとしたメロディですが、佐藤さんのアレンジで大きく雰囲気が変わり、ノリのいい一曲に仕上がっていました。
最後はピアソラ「タンゴの歴史」より『Bordel-1900』。タイトルの<酒場>が表わすとお;り、タンゴは元々アウトローなイメージがある音楽だったそう。この曲も場面としては酒場に警察のガサ入れが入ったところで、冒頭にギターのボディを叩くのは警察がドアをノックする音を表しているとのこと。世界観を知ってから聴くと、陽気なメロディで始まった曲の中盤にちょっと不穏な曲調になるのも「あ、今警察が来たのかな?」と想像しながら音楽を楽しめますね。

アンコールで演奏した曲もピアソラの作品で、『Oblivion(忘却)』という曲です。
長谷川さんが初めて被災地で演奏したのは震災後間もない2011年4月14日、避難所になっていた名取市文化会館での復興コンサートでした。いつも使っているホールのロビーに支援物資が山のように積まれていたのを覚えているそうです。最後の曲を演奏する前に、今日が息子さんの誕生日だと話し出した長谷川さん。子どもの成長を思うとともに「忘れられないこと、忘れてはいけないこともあるけど、時は流れるんだな」と感じたそうです。「名取で演奏したときもそうですが、音楽家として皆さんに何か伝えようと思ったら、音に込めるしかありません。今日も、二人でこの曲に想いを込めてお届けします」という挨拶のあとに始まった演奏は物悲しく沈んでいくような旋律ながら、得も言われぬ美しさがありました。今日という日に集まったみなさんと、こうした美しい音楽に耳を傾けながらあの日に思いを馳せる時間が持てたのは、とてもありがたく、大切なことだと感じました。長谷川さん、佐藤さん、ありがとうございました。