お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_8月

2022.8.19

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅ではk
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌を楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

高確率で晴天に恵まれる田子西「うたカフェ」、本日も痛いくらいの日差しが降り注ぐ快晴となりました。その一方で吹く風には少しひんやりとした秋の気配が感じられ、季節が少しずつ移り変わっているのが分かります。
ちょうど猛暑とお盆休みの疲れが出る時期なので参加者も少なめかと想像していましたが、始まってみればここ最近で一番の参加人数になり、受付回りを手伝っていただいた「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんも驚いていました。常連さんに加え、町内会の方や地域包括支援センターのスタッフさんが声をかけてくれた方の新規参加も。満員御礼のお客さんを前に、音楽リーダーを務める仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さん、ピアノの富樫範子さんも気合十分で臨みました。また、今日のうたカフェには卒業論文のテーマに「災害時における音楽の力」を扱いたいという大学生も参加していました。被災地にこそいなかったものの、震災が起きたときは10歳だったという若者が「その頃の記憶があるのは自分たちの世代が最後くらいだと思うので、後世に伝えていきたい」と真摯に語る姿を、参加者は目を細めて見つめていました。

本日最初の曲は『月の沙漠』です。情景が浮かぶような美しい言葉でつづられた歌詞が印象的な曲ですが、実際に画家であり詩人であった加藤まさをの詩と挿絵からなる作品に、佐々木すぐるが曲をつけたのが『月の沙漠』という曲なんだそうです。「絵になる歌だなぁと思っていたら、本当に絵だったんですね」という松本さんの言葉にみなさん頷いていました。
続いては<シンドバッド>関連の曲を2曲続けて歌いました。最初はピンクレディーの『渚のシンドバッド』。平成生まれの学生さんと松本さんの「ピンクレディーは知ってますか?」「知ってます!」「よかった!!」のやり取りにどっと笑いが起きました。松本さんにとってのこの曲のイチオシポイントは【セクシー】の歌い方。平坦に歌うのではなく、「セクシィ~」と色っぽく歌うよう熱心に指導されました。松本さんのノリにもすっかり慣れた田子西のみなさん、大笑いしながらも教えに忠実な「セクシィ~♪」を披露してくれました。もう一曲のシンドバッドは『勝手にシンドバッド』。サザンオールスターズの曲を、とリクエストされて選んだそうです。歌うというより早口言葉に近い曲に「難しそう」と声が上がりましたが、みなさん果敢にチャレンジしてくれました。言葉数が多い上に曲自体も長いので、歌い終わる頃にはみなさん汗だくに。「どうなるかと思っていましたが、みなさんノってくれてありがとうございます」と松本さんも喜んでいました。

休憩もかねて、ここで富樫さんのソロ演奏を楽しみました。曲目は久石譲の『Summer』です。爽やかで、どこかノスタルジックなメロディを聴いていると、入道雲が浮かぶ真っ青な空やひまわり畑、風鈴が鳴る縁側といった、夏の風物詩のような風景が浮かんできます。とにかく暑かった今年の夏を振り返りながら、ほっとする一時を過ごしました。サザンでほてった体もちょうどよくクールダウンできたようです。
また、ちょうど帰省中だったからとうたカフェに参加してくれた松本さんの息子さん・吉明さんも一曲披露してくれました。「みなさんの人生の軌跡を重ねて聴いていただければと思います」と挨拶して歌ってくれたのはT.M.Revolutionの『vestige-ヴェスティージ-』という曲です。とても力強く響く歌声はきっとお母さん譲りですね。急遽歌うことになったそうですが、そうとは思えない堂々とした歌いっぷりに、参加者も大きな拍手を贈りました。

最後にみんなでもう一曲、『少年時代』を歌いました。よく耳にする曲ですが、改めて歌詞を読んでみると子どもの頃にあれこれと楽しんだ夏を思い出し、胸がきゅっとなる心地がします。みなさんの歌声も何かを懐かしむようなしみじみとした響きで、一つ一つの歌詞を大事に歌っているのが感じられました。いつもは女性の参加者が圧倒的に多いうたカフェですが、今日は男性の参加者が5人もいらっしゃいました。そこで松本さんから「せっかくなので、今少年の方、かつて少年だったみなさんだけで歌ってください」とお願いが。急なことにちょっと戸惑った様子もありましたが、合唱経験のある町内会長さんを始め、5人で素敵な歌声を響かせてくれました。

盛り沢山の内容だった本日のうたカフェ、締めは松本さんが歌う『涙そうそう』です。作詞した森山良子自身が早逝した兄を思って歌詞を作ったというこの曲に、参加者は一心に耳を傾けていました。お盆も過ぎ、秋の気配が混じった風が吹く今日という日に、大切な誰かを想って『涙そうそう』を聴くことができて良かったと、心から思いました。

 

 

次回のうたカフェは9月16日。今年は残暑が厳しいとの予報が出ていますが、その頃までにはもう少し過ごしやすくなっているでしょうか。季節の変わり目に体調など崩さないよう、元気にお過ごしくださいね。