お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_9月

2022.9.16

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅ではk
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌を楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

日差しが強く気温は高いものの吹く風は涼しい、夏と秋が混じりあったようなお天気です。参加者のお洋服も半袖と長袖が半々といったところ。9月に入ると急にあちこちでコンサートの開催が増える気がしますね。今日はうたカフェで一緒の音楽を楽しみましょう。音楽リーダーは仙台オペラ協会ソプラノ松本康子さん、ピアノ伴奏は富樫範子さん。喫茶提供は「喫茶ひこ」の西垣信彦さんです。

今日の一曲目は『遠くへ行きたい』です。鼻の辺りで声を響かせるハミングを意識すると良い声で歌えるということで、前奏にのせてハミングで声を出してみました。その甲斐あってか歌い出しからとても良く声が出ていて、松本さんも「なんにも注意することがないほどお上手です!」と絶賛するほど。歌っているみなさんもとても気持ちよさそうに声を出していました。
遠くへ行きたい、と何度も繰り返した曲のあとは『勝手にしやがれ』。松本さんの「あんまり遠くへ行きたいって言うから、ジュリーが勝手にしろって怒っちゃいました」というコメントが笑いを誘います。この曲のリリース当時はまだ子供だった松本さんの記憶にうっすらと残っているのが、<出て行ってくれ>と歌いながらビシッと指を指しているジュリーの姿だそうで、その振りをぜひみんなでやりたいとお願いがありました。「それじゃあ皆でジュリーになったつもりで歌いましょう」と言った松本さんがおもむろにハットを取り出して被ったので、みなさん大盛り上がり。松本ジュリーと一緒に踊りながら楽しく歌いました。さらに「せっかくだから帽子投げないと!」と言ってくれた参加者に松本さんが実演をお願いする場面も。「やってやって!」と周りからも拍手が起き、カッコよく帽子を飛ばしてくれました。他にも『帰れソレントへ』や『帰ってこいよ』といった曲を歌いましたが、今日はみなさん本当によく声が出ていて、松本さんたちも驚いていました。

 

 

どの曲も全力で歌ったので、みなさんすっかり体温が上がった様子。ここでクールダウンもかねて、ミニコンサートの時間にしました。ちょっと姿を消していた松本さんがジュリーを意識したお洋服からシックなワンピースにお召し替えして登場し、わっと拍手が起こります。
その姿で歌い出したのは『朝日のあたる家』。暗い情念に満ちた、鬼気迫るような松本さんの歌声が響き、ぐっと曲の世界観に引き込まれます。今日のプログラムは『遠くへ行きたい』で旅に出て、『勝手にしやがれ』と見送った恋人に『帰れソレントへ』『帰ってこいよ』と呼びかけても帰ってきてくれず・・・といったストーリーになっていたので、半生を振り返る歌を暗い表情で歌う松本さんを見ていると、一連の曲の終着点として『朝日のあたる家』のような状況になってしまったように感じ、ぎゅっと胸がしめつけられるような思いで聴きました。
重々しい曲を歌い終えた松本さんが表情をやわらげ、「何だかやさぐれてしまったので、最後はみんなで帰りましょうね」とうながすと、とても優しい『夕焼小焼』の前奏が始まりました。その音色にみなさんもほっと体の力を抜いて、とても柔らかい声で歌い出していました。気持ちが凪ぐような『夕焼小焼』を歌い終えると、富樫さんは後奏の流れのままドヴォルザークの『新世界より』第2楽章を弾き始めました。思わぬ展開にみなさん一瞬驚いた様子でしたが、その演奏が本当に優しく温かい響きで、とてもリラックスした表情でじっと耳を傾けていました。
今日のうたカフェも色んな歌を楽しみました。来る芸術の秋、来月も素敵な時間を共有できればと思います。