お知らせ
釜石・橋野ふれあいセンター「心・ふれあいコンサート」
- 2022.9.3
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出演は引き続き、声楽家/アルトの谷地畝晶子さん、ピアノの阿部夕季恵さんです。釜石市にはこれまで何度も訪問していますが、今回が初めての訪問となったのが、鵜住居からひたすら西に山を登っていく橋野地区です。ひとつ前の公演会場、釜石公民館からは約20km。遠い、ですが、本当によいところでした!会場となった橋野ふれあいセンターは、橋野鹿踊保存会の練習会場でもあり、カンナガラが壁に掛けてありました。天井の高い、小さな体育館のような会場で、歌声も遠くによく響きます。栗橋公民館のN所長曰く「クラシックのプロの演奏家さんが来てくれるなんて、たぶん、初めてのことだと思います!」。みなさんに受け入れていただけるかどうか、少しの不安と一緒に会場に着くと、そのN所長が活けてくださったという大きな大きな夏の花に迎えられて、感激しました。また、リハーサルをしていると、開け放した扉の向こうに、花壇や草むらに咲く花々が見えて、近くを流れる川のせせらぎ、秋の虫たちの鳴く声、その向こうの山並みと、深呼吸したくなるような、なんとも懐かしく居心地のよい風景がすぐそこに拡がっていることに気が付きます。そんな風景の中で聴く、「故郷の空」「虫の声」「村祭」。こんなに周りの風景にぴったりなことも、なかなかないような気がします。〈主催:栗橋地区生活応援センター/栗橋公民館。協力:釜石市社会福祉協議会、(一社)槌音〉
始まる1時間近く前には、既に5名のお客さま。この地域での、100歳体操のサークルなどに毎回顔を出していらっしゃる、釜石市社会福祉協議会のTさんも駆けつけてくださって「待ってるのは苦にならないんだもんね」とおばあちゃん達にご機嫌伺いしながら、一緒にお喋りをしながら、待っててくださいました。公民館のMさんは、車では来られない、けれど手段のない栗林の方達を6名ほど、迎えに行ってくださいます。そうしたサポートをいただいて、初めて開催出来る地域である現実を、ここに来て初めて知ると同時に、公民館のみなさんの手厚いサポートが本当に心強く思いました。
20名の申込みを事前にいただいいましたが、「申し込んでないんだけど、大丈夫?」と飛び込みでいらっしゃる方が続々と。「え、いいけど、当日料金、高いよ!」なんて冗談のやりとりがありつつ、コンサートが始まる頃には30名を超えていました。感染症対策として、椅子を離して並べていることもあり、広い体育館がいっぱいに。谷地畝さんの「初めまして」とのご挨拶からスタートして、懐かしい童謡やじっくりと素敵な「椰子の実」、隠れファンの多い「渚のアデリーヌ」、エリーゼさんは本当にいたのか?の話をしつつ「エリーゼのために」、そして「愛の讃歌」でやはりじっくり聴き入っていただき、「ラジオ体操第一」も。30人以上での体操は、なかなか壮観でした!子どもさんもいらっしゃるかな?と、ドラえもんの映画の主題歌となった「ひまわりの約束」。「憧れのハワイ航路」は、とっても場を明るくしてくれました。
そしてアンコールの「夕焼け小焼け」、4会場目にして初めて、会場のみなさんが一緒に歌ってくださる声が聴こえてきて、じんわりと、こちらも涙が出そうになりました。谷地畝さんの美しい歌声の素晴らしさとは、また違った、会場の皆さんの、素朴でじんわり、あたたかな歌声に、こちらが励まされるような気持ちでした。どちらも、それぞれ、歌っていいものだなとおもいました。
そうして終演後、みなさんが客席で書いてくださったアンケートを受け取りながら、「とってもよかったよ」「また来てね!」と何人もの方に声を掛けられました。初めましての会場は、やはり再訪問の会場とはまた別の、緊張感があります。今日は、老若男女、みなさんの笑顔を見送りながら、心底ほっとしました。山間部であり、元々暮らしていた方々に住まいの被害は少なかった地域です。とは言え、坂を降りれば甚大な津波の被害のあった鵜住居地域があり、そちらから転入された方もいれば、家族や親戚、仕事を失った方など、多かれ少なかれ影響のなかった人はいらっしゃいません。また急激な少子高齢化の波を受け、こうしてみんなで集まって、ひととき一緒に楽しむ時間を持つことは、互いの安否を気遣いながら、次に来る自然災害に向けての防災にも繋がります。小さな音楽会ではありますが、この会を開くことが、この地域にとってどんな意味を持つのか、そうしたことを、また改めて考えたひとときとなりました。〈この公演は、岩手県「令和4年度被災者の参画による心の復興事業」補助金を受けて実施しました〉